[P-RS-03-3] 超高齢消化器外科術後患者における退院時歩行能力低下の有無についての比較検討
Keywords:超高齢者, 消化器外科術後, 歩行能力
【はじめに】
超高齢者は,様々な併存疾患を有している場合が多く,心肺予備能の低下により術後呼吸器合併症の併発リスクの増加や術後せん妄の発生率は高くなる。また創部痛やバイタルサインの悪化に伴い理学療法が行えず,歩行能力や他のADL低下をきたすことも少なくない。これまで消化器外科術後患者の離床や歩行状況についての検討はなされているが,超高齢者を対象とした報告はなされていない。そこで今回,超高齢者を対象に消化器外科術後歩行能力低下の有無について比較検討した。
【方法】
平成24年4月から平成27年5月までに当院に入院し,消化器外科手術を実施した85歳以上の超高齢患者43例を対象とした。除外基準として,自宅以外からの入院患者,入院前から歩行不能な患者とした。基本属性として年齢,性別,術前血液検査値(Alb,TP,Hb,Ht),併存疾患(Charlson Comorbidity Index:CCI),在院日数,転帰(自宅退院もしくは転院)の他に,手術情報として手術時間,麻酔時間,出血量,術後合併症発生の有無を加え,また理学療法進行状況として術後理学療法介入までの日数,端座位開始までの日数,立位開始までの日数,歩行開始までの日数,歩行能力とし,retrospectiveに調査した。歩行能力に関しては,Functional Ambulation Category(FAC)を用いて入院時と退院時を比較し,歩行能力維持群(維持群)と歩行能力低下群(低下群)に分類し比較検討を行った。統計学的処理として,2群間の比較に対応のないt検定,Mann-Whitney U検定,χ2検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
維持群は25例(58%),低下群は18例(42%)であった。以下に(維持群 vs. 低下群)で表記する。基本属性では,在院日数(14.04±7.3 vs. 20.38±10.2)と転帰(自宅退院:維持群88% vs. 低下群56%)で有意差を認めた。手術情報においては,有意差を認めなかった。理学療法進行状況は座位開始までの日数(1.60±0.9 vs. 2.88±2.1),立位開始までの日数(2.12±1.4 vs. 4.50±4.1),歩行開始までの日数(3.60±3.5 vs. 7.72±7.5)で有意差を認めた。
【結論】
歩行能力低下群では,理学療法進行が遅延している事が明らかとなった。これは術前の身体活動量や認知機能,術後合併症の程度やバイタルサインの不安定さなどによっても左右される事が考えられる。離床遅延に伴い,歩行能力だけでなくその他のADLや全身耐久性にまで影響を及ぼすため,超高齢者であるなら尚更その影響は大きい。そのため,超高齢者であっても可及的早期から離床することが,術前歩行能力を維持し,更に自宅退院へ繋がると考えられる。今後は個々の身体機能や術前活動量などにも着目して検討していく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
退院時の歩行能力低下を防止するためには,徹底したリスク管理の下で,超高齢者においても術後早期に立位・歩行と抗重力活動を積極的に実施する事が重要である事が示唆された。
超高齢者は,様々な併存疾患を有している場合が多く,心肺予備能の低下により術後呼吸器合併症の併発リスクの増加や術後せん妄の発生率は高くなる。また創部痛やバイタルサインの悪化に伴い理学療法が行えず,歩行能力や他のADL低下をきたすことも少なくない。これまで消化器外科術後患者の離床や歩行状況についての検討はなされているが,超高齢者を対象とした報告はなされていない。そこで今回,超高齢者を対象に消化器外科術後歩行能力低下の有無について比較検討した。
【方法】
平成24年4月から平成27年5月までに当院に入院し,消化器外科手術を実施した85歳以上の超高齢患者43例を対象とした。除外基準として,自宅以外からの入院患者,入院前から歩行不能な患者とした。基本属性として年齢,性別,術前血液検査値(Alb,TP,Hb,Ht),併存疾患(Charlson Comorbidity Index:CCI),在院日数,転帰(自宅退院もしくは転院)の他に,手術情報として手術時間,麻酔時間,出血量,術後合併症発生の有無を加え,また理学療法進行状況として術後理学療法介入までの日数,端座位開始までの日数,立位開始までの日数,歩行開始までの日数,歩行能力とし,retrospectiveに調査した。歩行能力に関しては,Functional Ambulation Category(FAC)を用いて入院時と退院時を比較し,歩行能力維持群(維持群)と歩行能力低下群(低下群)に分類し比較検討を行った。統計学的処理として,2群間の比較に対応のないt検定,Mann-Whitney U検定,χ2検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
維持群は25例(58%),低下群は18例(42%)であった。以下に(維持群 vs. 低下群)で表記する。基本属性では,在院日数(14.04±7.3 vs. 20.38±10.2)と転帰(自宅退院:維持群88% vs. 低下群56%)で有意差を認めた。手術情報においては,有意差を認めなかった。理学療法進行状況は座位開始までの日数(1.60±0.9 vs. 2.88±2.1),立位開始までの日数(2.12±1.4 vs. 4.50±4.1),歩行開始までの日数(3.60±3.5 vs. 7.72±7.5)で有意差を認めた。
【結論】
歩行能力低下群では,理学療法進行が遅延している事が明らかとなった。これは術前の身体活動量や認知機能,術後合併症の程度やバイタルサインの不安定さなどによっても左右される事が考えられる。離床遅延に伴い,歩行能力だけでなくその他のADLや全身耐久性にまで影響を及ぼすため,超高齢者であるなら尚更その影響は大きい。そのため,超高齢者であっても可及的早期から離床することが,術前歩行能力を維持し,更に自宅退院へ繋がると考えられる。今後は個々の身体機能や術前活動量などにも着目して検討していく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
退院時の歩行能力低下を防止するためには,徹底したリスク管理の下で,超高齢者においても術後早期に立位・歩行と抗重力活動を積極的に実施する事が重要である事が示唆された。