[P-RS-03-4] 大腸癌術後の歩数低下に関わる予測因子の検討
Keywords:大腸癌, 歩数低下, 予測因子
【はじめに,目的】周術期リハビリテーション(以下,リハ)の主たる役割は呼吸器合併症と早期離床,廃用予防である。術後の理学療法を遂行するにあたり術後の創部痛,疲労,ドレン管理などの問題で離床困難な場合も少なくない。その結果,術後の廃用を招き,退院後のADLに及ぼす影響は大きい。その為,離床が困難な患者に選択的あるいは集中的に理学療法を行うための予測因子を知ることは極めて重要なことであるが,未だ予測因子を検討した報告はない。今回,当院の大腸癌患者の術後理学療法に歩数計を導入し,術後歩数の低下に関わる因子を検討した。【方法】対象は2015年5月から同年12月までに当院で大腸癌手術が行われた97例に歩数計を装着し,1日毎の歩数を計7日間測定した。術前日も参考値として測定し,術後は2日目から7日目まで装着した。患者には一律3000歩を目標にするよう指導し,術後1週間までに3000歩に達しない場合を歩数低下と定義し,歩数低下群と歩数良好群に分けて検討を行った。検討項目は,年齢,直腸切除術施行者,p-stage,貧血,併存症(貧血,腎不全,COPD,心不全,肝硬変,糖尿病,認知症,脳梗塞,腸閉塞),術前化学療法,術後合併症(Clavian-Dindo分類II度以上),術後ドレン,術前歩数,術後初回歩行開始日,performance status,SMI(CTでL3レベルの骨格筋断面積を身長の2乗で除した),サルコペニア,握力低下(男性26kg未満,女性18kg未満),歩行機能低下(0.8m/s未満),内臓脂肪および皮下脂肪(CTで臍レベルでの断面積),向精神薬(リントン,アタラックスP,リスペリドン)使用有無とした。検討はロジスティック回帰分析を用いて検討した。なお,P値5%未満を有意差判定の基準とした。【結果】全体の歩数中央値は術前日3345歩,術後2日393歩,術後3日1301歩,術後4日1847歩,術後5日3286歩,術後6日3551歩,術後7日4451歩であり,目標値である3000歩の達成者は,術後2日4人(4%),術後3日20人(20.4%),術後4日27人(27.6%),術後5日45人(45.9%),術後6日48人(49%),術後7日57人(58.2%)だった。全97例中,28例(28.9%)が歩行低下と判定された。両群の比較では,入院期間で歩行低下群20.5日(中央値),歩行良好群11.0日(中央値)と有意差を認めた(P<0.001)。歩数低下因子を検討したところ,単変量解析では直腸切除術施行者,年齢80歳以上,向精神薬使用者,術前歩数3000歩未満,術後初回歩行開始2日目以降,術後ドレン,術後合併症,貧血で有意差を認めた。さらに,多変量解析を行ったところ,術後合併症(OR:28.1,95%CI:1.88-419.6),術前歩数3000歩未満(OR:29.9,95%CI:2.28-394.5)で有意差を認めた。【考察】術前予測として歩数のカウント,術後予測として術後合併症の発生が,理学療法をより重点的,選択的に行う予測因子として示唆された。この結果を踏まえ,今後,予測因子の妥当性の検証と選択的なリハ介入後の効果を前向き研究で検討する必要がある。