The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本呼吸理学療法学会 » ポスター発表

[P-RS-04] ポスター(呼吸)P04

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本呼吸理学療法学会

[P-RS-04-4] 周術期消化器がん患者における術後合併症の発症率軽減を目的とした当院の取り組み
―プレハビリテーション実施の効果と課題―

原 毅1, 小暮 英輔1, 角田 亘2, 草野 修輔2, 久保 晃3 (1.国際医療福祉大学三田病院リハビリテーション室, 2.国際医療福祉大学三田病院リハビリテーション科, 3.国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科)

Keywords:周術期消化器がん患者, プレハビリテーション, サルコペニア

【はじめに,目的】

昨今,消化器がん患者の術後合併症発症には,サルコペニアの影響が指摘され,手術前の運動指導・介入や生活指導(以下,プレハビリテーション)が注目されている。本研究の目的は,周術期消化器がん患者にプレハビリテーションを実施し,効果と課題を検討することとした。


【方法】

対象は,周術期消化器がん患者37例(男性20例,女性17例,平均年齢64.0±11.8歳)である。手術部位は,食道5例,胃4例,肝臓3例,膵臓16例,結腸4例,直腸5例であり,平均在院日数が22.1±13.6日であった。全症例は,手術治療確定後にリハビリテーション専門医(以下,リハ医)の診察と生活指導,理学療法士(以下,PT)の運動機能評価と運動指導を実施した。リハ医が積極的な介入が必要と判断した症例は,外来でPTが介入した。

運動指導は,ストレッチ10分(開始時と終了時に各5分),筋力トレーニング20分,有酸素運動20分で構成した非監視型運動プログラム(以下,非監視型)をPTが冊子を用いて実施した。運動実施状況は,症例が冊子に記入した記録で確認した。PTが外来で介入した症例は,既往症や評価結果より運動プログラム(以下,監視型)を作成し60分間介入した。

運動機能評価は,等尺性膝伸展筋力(以下,IKF)と6分間歩行距離(以下,6MD)を使用し,IKFが最大努力下での膝伸展筋力(Nm/kg),6MDが6分間最大努力下での歩行距離(m)を計測した。IKFが初診時,6MDが初診時と手術日の1から2日前(以下,手術前)に実施し,介入効果を初診時と手術前の6MD変化量(Mayo NE,2011)で判定した。また,初診時の運動機能評価に加え,確定診断時のCT画像より計測したL3腹部骨格筋量を身長で補正した筋肉量(cm2/m2)を算出し,各項目のcut off値(原,2015)でサルコペニア保因者を検出した。

術後合併症は,外科合併症基準(Clavien-Dindo分類)に該当した有害事象と定義した。

統計処理は,サルコペニア保因者と非保因者別に運動機能維持・向上群と低下群に分類し,χ二乗検定で術後合併症発症率を比較(p<0.05)した。


【結果】

平均介入期間は17.1±6.1日で,非監視型と監視型の平均運動実施率(実施日数/介入期間)は72%であった。全症例中サルコペニア保因者は5例で全て維持・向上群(100%)に該当し,非保因者は20例が維持・向上群(63%)に該当した。両群の術後合併症発症率(サルコペニア保因者:非保因者)は,GradeI(40%:30%),GradeII(40%:15%),GradeIIIb(20%:5%)で有意差を認めなかった。


【結論】

消化器がん患者へのプレハビリテーション実施は,サルコペニア保因者でも術後合併症発症率を高率に軽減できた。一方非保因者では,今後運動内容を再考する必要がある。