[P-RS-05-4] 急性期病院における誤嚥性肺炎患者の転帰に関する要因について
キーワード:誤嚥性肺炎, 転帰, ADL
【はじめに,目的】
本邦における疾患別死亡数では,肺炎は増加傾向にあり,2011年以降,死因の第3位となっている。これは,高齢者の人口割合の増加,誤嚥性肺炎の増加が一因として考えられている。誤嚥性肺炎は誤嚥に関係した基礎疾患により,疾病が治癒しても二次的な身体機能の低下をきたし,入院前と同じ居住場所に退院できない場合も少なくない。そこで,当院に入院しリハビリテーション(以下,リハ)を実施した誤嚥性肺炎患者の特徴について調査し,転帰に影響する要因を検討した。
【方法】
2015年4月1日から1年間に,誤嚥性肺炎の診断で入院した219例のうち,リハ(理学・作業・言語聴覚療法のいずれか)が処方された112例から,死亡例,データ欠損例を除く86例(平均年齢82.8±11.0歳,男性54例,女性32例)を対象とした。
入院前と同じ居住場所に退院した55例(39.6%)を同一群,変更した31例(60.4%)を変更群とし,年齢,性別,食事摂取手段の変更の有無,入院からリハ処方までの日数,入院前・リハ開始時・リハ終了時のADL能力(Barthel Index:以下BI),BI利得(リハ終了時BI-リハ開始時BI),在院日数ついて診療録より後方視的に調査した。解析は,性別,食事摂取手段の変更の有無はχ2検定を用い,その他の項目は,Mann-WhitneyのU検定を用い,有意水準はいずれも5%未満とした。
【結果】
2群の比較では,リハ開始時BI(同一群17.2±24.9点,変更群5.8±15.6点),リハ終了時BI(同一群27.6±33.0点,変更群13.1±21.9点),在院日数(同一群26.7±17.9日,変更群60.6±34.6日)に有意差がみられた。年齢,性別,入院からリハ処方までの日数(同一群6.4±8.4日,変更群9.3±11.6日)入院前BI(同一群35.0±32.6点,変更群34.0±33.7点)BI利得(同一群10.7±24.4点,変更群7.3±16.6点),には有意差は無かった。食事摂取手段を変更したのは同一群12.7%(経口→胃瘻6件,経口→経静脈栄養1件),変更群22.6%(経口→胃瘻3件,経口→経静脈栄養3件,経口→経鼻管栄養1件)であり,有意差は見られなかったが変更群の方が多い傾向にあった。
【結語】
誤嚥性肺炎患者が転帰先を変更する要因としてADL能力が挙げられ,また食事摂取手段の変更も一因として考えられた。また変更群の方が,在院日数が有意に多いことから,肺炎治療の困難さよりも退院先の調整などの社会的な要因が関与している可能性があると考えられた。早い段階から医療スタッフ及び医療ソーシャルワーカーによる退院支援に向けた組み込みが必要である。誤嚥性肺炎群では,併存する誤嚥に関係した基礎疾患により元来のADL能力が低い状態にあった。肺炎の治療による安静が,更なるADL能力の低下を招き,転帰にも影響する傾向にあった。如何に廃用を防止していくか課題であり,肺炎の重症度や全身状態を考慮しながら,適切な時期に適切な負荷の包括的なリハを実施する必要がある。
本邦における疾患別死亡数では,肺炎は増加傾向にあり,2011年以降,死因の第3位となっている。これは,高齢者の人口割合の増加,誤嚥性肺炎の増加が一因として考えられている。誤嚥性肺炎は誤嚥に関係した基礎疾患により,疾病が治癒しても二次的な身体機能の低下をきたし,入院前と同じ居住場所に退院できない場合も少なくない。そこで,当院に入院しリハビリテーション(以下,リハ)を実施した誤嚥性肺炎患者の特徴について調査し,転帰に影響する要因を検討した。
【方法】
2015年4月1日から1年間に,誤嚥性肺炎の診断で入院した219例のうち,リハ(理学・作業・言語聴覚療法のいずれか)が処方された112例から,死亡例,データ欠損例を除く86例(平均年齢82.8±11.0歳,男性54例,女性32例)を対象とした。
入院前と同じ居住場所に退院した55例(39.6%)を同一群,変更した31例(60.4%)を変更群とし,年齢,性別,食事摂取手段の変更の有無,入院からリハ処方までの日数,入院前・リハ開始時・リハ終了時のADL能力(Barthel Index:以下BI),BI利得(リハ終了時BI-リハ開始時BI),在院日数ついて診療録より後方視的に調査した。解析は,性別,食事摂取手段の変更の有無はχ2検定を用い,その他の項目は,Mann-WhitneyのU検定を用い,有意水準はいずれも5%未満とした。
【結果】
2群の比較では,リハ開始時BI(同一群17.2±24.9点,変更群5.8±15.6点),リハ終了時BI(同一群27.6±33.0点,変更群13.1±21.9点),在院日数(同一群26.7±17.9日,変更群60.6±34.6日)に有意差がみられた。年齢,性別,入院からリハ処方までの日数(同一群6.4±8.4日,変更群9.3±11.6日)入院前BI(同一群35.0±32.6点,変更群34.0±33.7点)BI利得(同一群10.7±24.4点,変更群7.3±16.6点),には有意差は無かった。食事摂取手段を変更したのは同一群12.7%(経口→胃瘻6件,経口→経静脈栄養1件),変更群22.6%(経口→胃瘻3件,経口→経静脈栄養3件,経口→経鼻管栄養1件)であり,有意差は見られなかったが変更群の方が多い傾向にあった。
【結語】
誤嚥性肺炎患者が転帰先を変更する要因としてADL能力が挙げられ,また食事摂取手段の変更も一因として考えられた。また変更群の方が,在院日数が有意に多いことから,肺炎治療の困難さよりも退院先の調整などの社会的な要因が関与している可能性があると考えられた。早い段階から医療スタッフ及び医療ソーシャルワーカーによる退院支援に向けた組み込みが必要である。誤嚥性肺炎群では,併存する誤嚥に関係した基礎疾患により元来のADL能力が低い状態にあった。肺炎の治療による安静が,更なるADL能力の低下を招き,転帰にも影響する傾向にあった。如何に廃用を防止していくか課題であり,肺炎の重症度や全身状態を考慮しながら,適切な時期に適切な負荷の包括的なリハを実施する必要がある。