[P-RS-06-1] 固有背筋群の切除後に血管内脱水を呈したLemierre症候群に対する理学療法経験
Keywords:術後, 離床, 早期運動療法
【はじめに,目的】
Lemierre症候群は扁桃・咽頭炎や口腔内感染症に引き続いて内頸静脈血栓性静脈炎,更に全身性敗血症塞栓を来す症候群である。現在,抗菌薬が普及したもののLemierre症候群の理学療法経過を示した報告は非常に少なく今回,糖尿病の基礎疾患から口腔内感染に起因するLemierre症候群の高齢発症の患者に対する理学療法(以下PT)を経験したので報告する。
【方法】
80歳代の男性,糖尿病の基礎疾患があり,口腔衛生は不良で受診10日前より背部から頭部の痛みを主訴に当院受診され,Lemierre症候群による右後頸部から右仙骨部と右固有背筋群の全体の筋膜及び右前鋸筋下の壊死性筋膜炎が疑われ,緊急手術施行し術後集中治療室管理となった。術後は広範囲の右固有背筋群の切除による高度な血管内脱水を認め,菌血症とそれに続発する播種性血管内凝固症候群を来たした。術後疼痛により興奮状態でGlasgow Come Scale(以下GCS)は10点,デクスメデトミジンとフェンタニルにて鎮静されRichmond Agitation Sedation Scale(以下RASS)は2点,Functional independence measure(以下FIM)は25点,その後右後頸部から右仙骨部及び右中腋窩線部の広範囲の術創には陰圧閉鎖療法(以下NPWT)と週1回のデブリードマンとNPWTの被覆材交換が行われ,処置の際にはケタミンの追加投与が実施されていた。血液検査上,Alb2.0mg/dlでIVC径9~12mm(呼吸性変動あり)で広範囲の右固有背筋群の切除による血管内脱水が考えられた。術後5日目よりPT開始となった。離床を血圧の変動に備え段階的に進めていき,術後10日目にGCSは11点,RASSは1点となり端坐位可能,術後11日目にGCSは11点,RASSは0点となり起立可能,術後18日目にGCSは13点となり車椅子移乗可能,術後24日目にGCSは14点で室内歩行可能となった。術後34日目にGCSは15点となりAlb1.6mg/dl,IVC径10~14mm(呼吸性変動あり)で血管内脱水は残存していたが離床を実施。その結果,FIMは73点に向上し棟内歩行可能となった。術後36日目に全身麻酔下での右後頸部から右仙骨部の追加手術として分層植皮術が施行された。
【結果】
右固有背筋群の切除後の血管内脱水の改善はなかったものの術後34日目にGCSが15点,RASSが0点となり基本的動作レベルは向上し,FIMが73点に改善し離床を順調に行うことで全身麻酔に耐えられる体力の回復を認めた。
【結論】
今回,高齢で糖尿病を背景とし齲歯から菌血症を発症したLemierre症候群患者のPTを経験した。早期より医師の指示の下,血管脱水によりPT中の血圧の変動を十分に考慮しながら離床を進めることでADL介助量の軽減(FIMにて48点の改善)に繋がり分層植皮術施行前には棟内歩行可能となり術前のFIMが73点と向上した。重篤な感染症患者に対する継続的なPTは病態を理解し,早期に離床を進めることが重要であると考えられた。本症例の理学療法経験が今後のLemierre症候群患者のPTの一助になれば良いと考える。
Lemierre症候群は扁桃・咽頭炎や口腔内感染症に引き続いて内頸静脈血栓性静脈炎,更に全身性敗血症塞栓を来す症候群である。現在,抗菌薬が普及したもののLemierre症候群の理学療法経過を示した報告は非常に少なく今回,糖尿病の基礎疾患から口腔内感染に起因するLemierre症候群の高齢発症の患者に対する理学療法(以下PT)を経験したので報告する。
【方法】
80歳代の男性,糖尿病の基礎疾患があり,口腔衛生は不良で受診10日前より背部から頭部の痛みを主訴に当院受診され,Lemierre症候群による右後頸部から右仙骨部と右固有背筋群の全体の筋膜及び右前鋸筋下の壊死性筋膜炎が疑われ,緊急手術施行し術後集中治療室管理となった。術後は広範囲の右固有背筋群の切除による高度な血管内脱水を認め,菌血症とそれに続発する播種性血管内凝固症候群を来たした。術後疼痛により興奮状態でGlasgow Come Scale(以下GCS)は10点,デクスメデトミジンとフェンタニルにて鎮静されRichmond Agitation Sedation Scale(以下RASS)は2点,Functional independence measure(以下FIM)は25点,その後右後頸部から右仙骨部及び右中腋窩線部の広範囲の術創には陰圧閉鎖療法(以下NPWT)と週1回のデブリードマンとNPWTの被覆材交換が行われ,処置の際にはケタミンの追加投与が実施されていた。血液検査上,Alb2.0mg/dlでIVC径9~12mm(呼吸性変動あり)で広範囲の右固有背筋群の切除による血管内脱水が考えられた。術後5日目よりPT開始となった。離床を血圧の変動に備え段階的に進めていき,術後10日目にGCSは11点,RASSは1点となり端坐位可能,術後11日目にGCSは11点,RASSは0点となり起立可能,術後18日目にGCSは13点となり車椅子移乗可能,術後24日目にGCSは14点で室内歩行可能となった。術後34日目にGCSは15点となりAlb1.6mg/dl,IVC径10~14mm(呼吸性変動あり)で血管内脱水は残存していたが離床を実施。その結果,FIMは73点に向上し棟内歩行可能となった。術後36日目に全身麻酔下での右後頸部から右仙骨部の追加手術として分層植皮術が施行された。
【結果】
右固有背筋群の切除後の血管内脱水の改善はなかったものの術後34日目にGCSが15点,RASSが0点となり基本的動作レベルは向上し,FIMが73点に改善し離床を順調に行うことで全身麻酔に耐えられる体力の回復を認めた。
【結論】
今回,高齢で糖尿病を背景とし齲歯から菌血症を発症したLemierre症候群患者のPTを経験した。早期より医師の指示の下,血管脱水によりPT中の血圧の変動を十分に考慮しながら離床を進めることでADL介助量の軽減(FIMにて48点の改善)に繋がり分層植皮術施行前には棟内歩行可能となり術前のFIMが73点と向上した。重篤な感染症患者に対する継続的なPTは病態を理解し,早期に離床を進めることが重要であると考えられた。本症例の理学療法経験が今後のLemierre症候群患者のPTの一助になれば良いと考える。