The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本呼吸理学療法学会 » ポスター発表

[P-RS-06] ポスター(呼吸)P06

Sun. May 14, 2017 11:40 AM - 12:40 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本呼吸理学療法学会

[P-RS-06-2] 労作時のPCO2モニタリングでの検討

八木田 裕治, 加藤 悠介, 馬上 修一, 佐々木 貴義, 遠藤 正範, 安齋 明子, 須藤 美和, 坪井 永保, 加藤 光恵 (一般財団法人慈山会医学研究所付属坪井病院)

Keywords:経皮的二酸化炭素分圧, 二酸化炭素分圧, 運動負荷試験

【はじめに,目的】

慢性呼吸器疾患患者の安静時や労作時の低酸素血症の評価のためにパルスオキシメータによるSpO2の連続測定が行われるが,動脈血二酸化炭素分圧(以下PaCO2)の評価はまだ一般的には行われておらず,報告も少ない。しかし,近年経皮的PaCO2(以下PtcCO2)の測定機器が発達し歩行時などの労作時のPaCO2連続測定が可能になった。今回,呼吸器疾患を有する入院患者にPtcCO2モニターによる連続測定を行い病態の把握における有用性を確認したので報告する。

【方法】

呼吸器疾患を有する患者について労作時の低酸素血症の有無と二酸化炭素分圧の変化を連続的に測定する。測定には経皮動脈血酸素飽和度,経皮二酸化炭素分圧測定器であるTCM TOSCAモニタ(ラジオメータ:IMI)を用いてSpO2とPtcCO2を連続測定する。結果をグラフ化し経時変化を解析する。

【結果】

症例①では,歩行前のPtcCO248mmHgから歩行中は3mmHg低下し,終了後も1mmHgの低下が見られたが,最低値44mmHgで有意な変化は見られなかった。経皮的酸素飽和度(以下SpO2)は開始時97%,最低値95%であった。歩行距離は223mで修正Borgスケール3であった。症例②では,歩行前PtcCO2 40mmHgであったが歩行中には最大43mmHgまで上昇が見られた。その後休憩時に37mmHgまで低下が見られた。吸入O2 6L/minオキシマイザーの条件でも歩行試験を行ったが,5L/min分同様に歩行時には42mmHgまで上昇が見られるものの,休憩時に37mmHgまで低下が見られた。症例③ではBedsideでのリハビリ中にPtcCO2を測定した。数値の変化は見られなかった。また,酸素吸入流量を食事の際に2L/minオキシマイザーから3L/minオキシマイザーに変更したがPtcCO2値に変化は見られなかった。

【結論】

先行研究によるとPtcO2の最高値はSpO2の最低値から2分間遅れて出現するとされていたが,症例①での測定ではSpO2の低下時にもPtcO2の上昇は見られなかった。症例②ではSpO2の低下時にPtcO2の上昇が見られていた。今回症例①での6MWT程度の負荷では酸素消費量が増えるが,その分換気量も増えるため体内のCO2が排出されPtcCO2の上昇が抑えられたと考えられた。症例②では,歩行終了後息切れの訴えよりも下肢の疲労感の訴えが強かったため,筋力低下による運動制限が考えられる。COPDによる運動時の気流制限と残気量増加により一時的なPaCO2の上昇が見られたが,運動終了後は呼吸数増加によりPaCO2は前値よりも若干低い値をとった。症例③ではBedsideでの比較的負荷量の軽度なリハビリのため呼吸数や換気量に大きな差が生じないためPaCO2に大きな変動がなかったと考えられる。一般に筋肉量により酸素消費量は変動するが,一方運動量が増えることで換気量が増加する。低酸素血症と高二酸化炭素血症を来すいわゆるII型呼吸不全患者では,換気量が増加するため労作時にはPaCO2の上昇を気にせず十分な酸素吸入が必要と考えられる。