第52回日本理学療法学術大会

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日本呼吸理学療法学会 » ポスター発表

[P-RS-08] ポスター(呼吸)P08

2017年5月14日(日) 11:40 〜 12:40 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本呼吸理学療法学会

[P-RS-08-1] 非特異性間質性肺炎患者一症例における4週間の下肢骨格筋機能の変化

吉川 琢磨, 原田 雄太, 上村 洋充, 後藤 一平 (大阪鉄道病院リハビリテーション科)

キーワード:超音波診断装置, 筋輝度, 高用量ステロイド

【はじめに,目的】

今回,高用量ステロイド(PSL)投与中の非特異性間質性肺炎(NSIP)患者を担当した。4週間にわたり運動療法を実施し,運動機能に加え下肢骨格筋機能の質的・量的変化について若干の知見を得たので報告する。



【方法】

80代男性。診断名Fibrotic NSIP。入院前ADLは独歩にて全自立。理学療法開始時と4週後に移動能力,肺機能検査,安静時SpO2,等尺性膝伸展筋力体重比(筋力),6分間歩行試験(6MWT),PSL投与量を評価した。筋力はHand-held Dynamometer(アニマ社製μ-Tas)を用い,ベルト固定法にて計測し体重比を算出した。6MWTは歩行距離と終了時SpO2,呼吸数,呼吸困難感(修正ボルグスケール)を評価した。また,骨格筋の質的・量的変化は超音波診断装置(GE社製,LOGIQ Book XP)にて筋輝度,筋厚,羽状角を計測した。短軸像で上前腸骨棘~膝蓋骨上縁を結ぶ中点にて大腿直筋(RF)と中間広筋(VI)を抽出し,その筋輝度をImage Jの8bit gray-scaleにて数値化した。その際,同二筋内に関心領域を各10ヶ所ずつランダムに設定し,計20ヶ所の輝度の平均値を算出した。さらに,Wilcoxon検定で差を評価し,有意水準は5未満とした。筋厚はRFとVIの合算値とし,同短軸像にて大腿骨の頂点から皮下脂肪とRFの境界線へ引いた垂線の距離で算出した。さらに,同部位の長軸像でRFの羽状角を測定した。理学療法はリカンベントエルゴメータによるインターバル方式での運動療法を中心に実施し,PSLの漸減に合わせて適宜独歩・階段昇降練習等を追加した。



【結果】

移動能力は酸素架台を使用し,院内歩行自立で開始時より変化なし。以下全て開始時・4週後評価の順で記載する。肺機能検査は%VCが47.6%から50.1%,%DLcoは25.1%から39.8%。安静時SpO2はO23L/min鼻カニューラにて95%から室内気にて96%。筋力は29%から31%。6MWTはO24L/minリザーバ付きカニューラにて120mからO23L/min鼻カニューラにて160m。終了時SpO2は85%から96%,呼吸数は38回から28回,呼吸困難感は修正ボルグスケールにて5から2。PSLは50 mg/dayから25mg/day。筋輝度は62.2pixelから67.7 pixelへ変化あるも統計学的有意差はなし。筋厚は2.24cmから2.39cm。羽状角は9.8°から10.1°であった。



【結論】

筋輝度は若干上昇するも有意差がなかった結果より,本介入にて筋内の脂肪化・結合組織化を防ぐことができたと考える。さらに,羽状角変化が少なかった結果より,生理学的筋断面積は維持され,筋力低下もなく下肢骨格筋機能は充分保たれたと考える。また,一般に筋量の減少に先行するといわれる筋の質的な変化をより鋭敏かつ定量的に評価したことで,早期からの筋力トレーニングの有効性を示唆できた。