[P-RS-08-3] 寒冷過疎地域在住を念頭に在宅運動療法処方を工夫したII型慢性呼吸不全を伴うポストポリオ症候群の1例
Keywords:ポストポリオ症候群, II型慢性呼吸不全, 在宅運動療法
【はじめに】当院が属する長野県松本医療圏は広大な寒冷過疎地域を抱えているが,寒冷過疎地域在住者では降雪や近隣に専門病院がないなどの事情から頻繁な外来リハ通院は困難である。ポストポリオ症候群(PPS)患者においてII型慢性呼吸不全の進行性悪化を伴う症例が認められるが,その原因として廃用・過用との関連が示唆されていることから,在宅運動療法処方の際の運動負荷量を適切に調整する必要がある。
【目的】寒冷過疎地域在住を念頭に在宅運動療法処方を工夫したII型慢性呼吸不全を伴うポストポリオ症候群の1例を報告する。
【結果】症例はポリオ後遺症にて胸郭変形を有する67歳女性。当院までは車で1時間,降雪量の多い環境に夫と二人で暮らしている。4歳でポリオと診断。62歳時にHOTが導入され67歳時に労作時呼吸困難感増大にて受診し,CO2貯留に対して夜間NPPV療法が導入された際にPPSと診断された。今回,運動処方目的に3週間の入院加療を実施した。入院時のBMI 15.0 kg/m2,Alb 3.4 g/dL,LDH 340 U/L,CK 60 IU/L,ミオグロビン28.4 ng/mL,PaCO2 48.6 Torr(経鼻カヌラ0.75 L/分),VC 0.75 L(31.3%),The Modified British Medical Research Council(mMRC)dyspnea Grade 3,The Nagasaki University Respiratory ADL questionnaire(NRADL)total 54点,St. George's Respiratory Questionnaire(SGRQ)total 65.5点,経鼻カヌラ1.5 L/分投与下の6分間歩行距離(6MWD)334 m(最低SpO2 95%,最大修正ボルグスケール7)であった。運動処方として呼吸訓練等に加え,運動時呼吸困難を軽減しつつ自宅内で簡便かつ低リスクで行える運動としてNPPV装着下椅子立ち上がり運動を処方した。修正ボルグスケール4~5程度で,翌日の疼痛増悪や疲労蓄積,血清CKとミオグロビン値上昇を認めないことを条件に,運動強度と頻度を1セット7回,1日5セット(隔日実施)と決定した。退院後,毎月の外来通院の際に随時処方内容を微調整した。退院後3ヶ月のBMI 15.6 kg/m2,Alb 4.1 g/dL,LDH 409 U/L,CK 119 IU/L,ミオグロビン52.3 ng/mL,PaCO2 41.8 Torr(経鼻カヌラ0.75 L/分),VC 0.86 L(40.0%),mMRC dyspnea Grade 3,NRADL total 51点,SGRQ total 48.3点,経鼻カヌラ1.5 L/分投与下の6MWD 387 m(最低SpO2 90%,最大修正ボルグスケール7)と維持されていた。
【結論】過用に注意し運動負荷量を調整した過去の報告を参考に,本症例では低負荷から運動を開始し,CK値やミオグロビン値の悪化がないことを確認しながら運動負荷量を調整した。PPS患者ではテーラーメイドの治療が必要とされているが,本症例は頻繁な外来リハ通院が困難な寒冷過疎地域在住のHOTおよび夜間NPPV療法患者であったため,さらに詳細な検討と様々な工夫を要した。
【目的】寒冷過疎地域在住を念頭に在宅運動療法処方を工夫したII型慢性呼吸不全を伴うポストポリオ症候群の1例を報告する。
【結果】症例はポリオ後遺症にて胸郭変形を有する67歳女性。当院までは車で1時間,降雪量の多い環境に夫と二人で暮らしている。4歳でポリオと診断。62歳時にHOTが導入され67歳時に労作時呼吸困難感増大にて受診し,CO2貯留に対して夜間NPPV療法が導入された際にPPSと診断された。今回,運動処方目的に3週間の入院加療を実施した。入院時のBMI 15.0 kg/m2,Alb 3.4 g/dL,LDH 340 U/L,CK 60 IU/L,ミオグロビン28.4 ng/mL,PaCO2 48.6 Torr(経鼻カヌラ0.75 L/分),VC 0.75 L(31.3%),The Modified British Medical Research Council(mMRC)dyspnea Grade 3,The Nagasaki University Respiratory ADL questionnaire(NRADL)total 54点,St. George's Respiratory Questionnaire(SGRQ)total 65.5点,経鼻カヌラ1.5 L/分投与下の6分間歩行距離(6MWD)334 m(最低SpO2 95%,最大修正ボルグスケール7)であった。運動処方として呼吸訓練等に加え,運動時呼吸困難を軽減しつつ自宅内で簡便かつ低リスクで行える運動としてNPPV装着下椅子立ち上がり運動を処方した。修正ボルグスケール4~5程度で,翌日の疼痛増悪や疲労蓄積,血清CKとミオグロビン値上昇を認めないことを条件に,運動強度と頻度を1セット7回,1日5セット(隔日実施)と決定した。退院後,毎月の外来通院の際に随時処方内容を微調整した。退院後3ヶ月のBMI 15.6 kg/m2,Alb 4.1 g/dL,LDH 409 U/L,CK 119 IU/L,ミオグロビン52.3 ng/mL,PaCO2 41.8 Torr(経鼻カヌラ0.75 L/分),VC 0.86 L(40.0%),mMRC dyspnea Grade 3,NRADL total 51点,SGRQ total 48.3点,経鼻カヌラ1.5 L/分投与下の6MWD 387 m(最低SpO2 90%,最大修正ボルグスケール7)と維持されていた。
【結論】過用に注意し運動負荷量を調整した過去の報告を参考に,本症例では低負荷から運動を開始し,CK値やミオグロビン値の悪化がないことを確認しながら運動負荷量を調整した。PPS患者ではテーラーメイドの治療が必要とされているが,本症例は頻繁な外来リハ通院が困難な寒冷過疎地域在住のHOTおよび夜間NPPV療法患者であったため,さらに詳細な検討と様々な工夫を要した。