第52回日本理学療法学術大会

講演情報

日本呼吸理学療法学会 » ポスター発表

[P-RS-08] ポスター(呼吸)P08

2017年5月14日(日) 11:40 〜 12:40 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本呼吸理学療法学会

[P-RS-08-4] 間質性肺炎を呈した高齢患者に対する呼吸追従式同調器の有用性
~単一症例による連続酸素吸入・流量固定式同調器との比較~

服部 玄徳, 上田 哲也, 辻田 聡司, 西川 真世, 石原 英樹 (八尾徳洲会総合病院)

キーワード:在宅酸素療法, 呼吸同調器, 間質性肺炎

【はじめに,目的】

呼吸同調器は携帯型酸素ボンベ使用時の酸素供給時間を延長する目的で,在宅酸素療法患者に対して,広く一般的に使用されている。近年,本邦では在宅酸素療法患者の高齢化が指摘されており,高齢者は認知機能低下や視力障害などによる機器の誤操作が多いとの報告がある。

呼吸追従式同調器(以下,追従同調器)は患者の呼吸数に追従して吸気時の酸素流量を自動調整する新しい酸素供給装置であり,高齢患者に対する機器の誤操作を減少させ,身体的負担を軽減させる効果が期待できる。しかし,その臨床的有用性を検討した報告は非常に少ない。本研究の目的は,間質性肺炎を呈した高齢患者に対する追従同調器の有用性について単一症例で検討することとした。

【方法】

対象は間質性肺炎の診断で入院した70歳代の男性である。胸部画像では両肺底部優位の粒状・網状陰影,すりガラス陰影,牽引性気管支拡張像を認めた。既往歴の糖尿病と高血圧症は服薬で経過良好であった。12病日目から理学療法を開始したが,22病日目に間質性肺炎の増悪を認め,一時理学療法中止となった。ステロイドパルス療法で症状は改善,32病日目に理学療法を再開し,53病日目より呼吸同調器を使用した労作時試験を行った。

開始時(53病日目)の所見は,連続酸素吸入(以下,連続:2L/分)下で安静時SpO2:96%,HR:96bpmであった。労作時は連続(3L/分)へ増量し,MRC息切れスケールはGrade 4であった。聴診では両側下肺野にfine cracklesを聴取した。認知機能は低下なく,Barthel Indexは90点で病棟内ADLは概ね自立レベルであった。

次に,本症例に対して,連続(3L/分),流量固定式同調器(以下,固定同調器:3L/分)使用,追従同調器(2L-4L/分)使用の3条件下で6分間歩行試験(6 Minutes walking test:6MWT)を実施した。なお,6MWTは疲労の影響を考慮し1~2日毎に実施した。また,固定同調器にはダイキン工業社のライトテックDS22,追従同調器には日本ルフト社のSmart Doseを使用した。主要評価項目は6MWTにおける歩行距離,修正Borg Scale,平均SpO2値,最大HR,SpO2回復時間とした。副次的評価項目として,各条件下での酸素供給装置の利便性をNumerical Rating Scale(NRS)を用いて評価し,内省報告を聴取した。

【結果】

各条件下のデータを連続→固定同調器→追従同調器の順で記載する。

歩行距離(m):165→195→200,修正Borg Scale:4→4→4,平均SpO2(%):86.0±8.0→87.8±3.6→89.0±6.1,最大HR(bpm):142→146→146,SpO2回復時間(分):3→3.5→2.5であった。利便性NRSは5→4→8であった。内省報告では,「追従同調器は自動で流量が上がるため,操作が簡単で使い易い」と報告があった。

【結論】

追従同調器は固定同調器と比較して,6MWTの結果に大きな差がなく,操作性の観点から有用であると考えられる。また,操作が簡便になることで,患者のQOLを高めることができる可能性が示唆された。