第52回日本理学療法学術大会

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日本呼吸理学療法学会 » ポスター発表

[P-RS-10] ポスター(呼吸)P10

2017年5月14日(日) 11:40 〜 12:40 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本呼吸理学療法学会

[P-RS-10-2] 小児および学童におけるピークフロー値

田上 未来1, 松田 雅弘1, 冨田 和秀2 (1.植草学園大学保健医療学部理学療法学科, 2.茨城県立医療大学大学院保健医療科学研究科)

キーワード:小児, 学童, ピークフロー値

【はじめに】ピークフロー値(Peak Expiratory Flow Rate:以下,PEFR)のモニタリングは,喘息の診断と管理のためのガイドラインで推奨されている。しかし,機種による違いや,全ての機種における予測値も確立されていない。また,小児領域においては検査協力や理解力も問題となり,その標準値の報告は少ない。今回,千葉県浦安市に在住する健常な小児および学童のPEFRを得られたので報告する。【方法】千葉県浦安市のスポーツイベントに参加した3歳から12歳までの281名のうち,呼吸器疾患の既往がなく計測が正確に実施できた238名を対象に,アセス ピークフローメータ(PHILIPS社製Full range型)を用いPEFRを測定した。測定前に,対象者に方法について十分に説明を行い,ノーズクリップは用いずに座位で最大呼出を2回行い,その最良値を採用した。解析は,年齢を任意の3グループに分類(グループI:3-6歳,男児34名,女児34名,身長111.4±7.9cm,体重18.7±2.7kg,グループII:7-9歳,男児64名,女児48名,身長127.9±7.1cm,体重25.9±4.8kg,グループIII:10-12歳,男児24名,女児38名,身長141.0±6.5cm,体重32.0±5.9kg)し,統計ソフトSPSSVer.21を用い身長・体重・年齢はPearsonを,性別はSpearman'sを用い相関係数を求めた。さらに,回帰分析を行い男女別にPEFRの回帰式を作成した。有意水準は,1%とした。【結果】PEFRは,グループI:157.2±39.7L/min,グループII:202.9±44.0L/min,グループIII:250.5±55.4L/minで年齢とともに増加した。PEFRとの相関係数は,グループI:身長(r=0.56),体重(r=0.53),年齢(r=0.55),性別(r=0.19),グループII:身長(r=0.38),体重(r=0.29),年齢(r=0.36),性別(r=0.07),グループIII:身長(r=0.03),体重(r=0.27),年齢(r=0.21),性別(r=0.41)であった。回帰式は,男子:19.87×年齢+53.19(p<0.01,R2=0.53),女子:15.54×年齢+70.34(p<0.01,R2=0.38)であった。【結論】PEFRは,年齢と共に増大しグループI,IIでは身長と最も高い相関を認めた。先行研究では,PEFRは身長と相関が強く,予測式は身長と年齢を用いたものが多い。本調査では,男女共に年齢を用いた回帰式が作成でき先行研究と類似した結果が得られた。一方,グループIIIでは性別と体重に相関を示し,先行研究ともグループI,IIとも違った結果を示した。先行研究では,PEFRは,男子は16歳頃まで年齢と共に上昇するが,女子では13歳ごろまでとされている。よって,本調査のグループIIIの年齢では,男女の発達速度の違いにより性別に最も相関が高かったと考えられる。本調査の結果,これまでにほとんど報告のない6歳以下の就学前児童におけるPEFRが得られたことは,今後の喘息治療における呼吸機能のモニタリングに有意義である。しかし,10歳以上のPEFRにおいては,今後は,体格や年齢などの基礎データ以外にPEFRに影響すると思われる因子をさらに検討する必要性が示唆された。