The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本呼吸理学療法学会 » ポスター発表

[P-RS-10] ポスター(呼吸)P10

Sun. May 14, 2017 11:40 AM - 12:40 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本呼吸理学療法学会

[P-RS-10-3] 聴覚刺激が咳反射および咳衝動に及ぼす影響の検討

金崎 雅史1, 古川 菜々美1, 太田垣 沙和1, 沖中 郁美1, 海老原 覚2 (1.姫路獨協大学医療保健学部理学療法学科, 2.東邦大学大学院医学系研究科リハビリテーション医学講座)

Keywords:咳嗽, 咳衝動, 聴覚刺激

【背景】咳嗽は主要な呼吸器症状であり,継続的で過剰な咳嗽はQOLを著しく低下させる。また強いcough epochは運動療法の進行の阻害因子になる。しかし,咳嗽に対する十分な治療選択はなく,使用頻度の高いOTC医薬品はnon effctiveとされている。呼吸困難はそれ自体が不快な呼吸感覚であるが,咳は咳刺激に対するmotor actionを指している。この概念と一致して,古くから咳は延髄孤束核を中枢とする反射弓をもつと考えられてきたが,近年,咳が生じる前にUrge-to-cough(筆者らは咳衝動と呼んでいる)と呼ばれる不快な呼吸感覚が先行して,咳のmotor actionを修飾することが知られている。また,fMRIによる解析では,咳反射は脳幹より上位の脳機能による修飾を受けることが示されている。従って,過剰な咳・咳衝動の制御において,咳反射の神経経路上の上位脳機能への介入は効果的な咳嗽治療となるかもしれない。そこで,咳衝動における不快感の責任主座のひとつと考えられている島皮質にて処理が行われる聴覚刺激に着目し,そのクエン酸誘発性咳反射閾値及び咳衝動への有用性を検討することとした。

【方法】非喫煙若年者10名に対して咳反射閾値,咳衝動を測定した。咳反射閾値は咳が誘発された最小クエン酸濃度(C2およびC5)を,咳衝動は咳衝動log-log slope及びLog咳衝動閾値により評価を行った。聴覚刺激は,被験者が好む曲を自由に選択させ,イヤホンを介して行った。

【結果】クエン酸誘発性咳反射閾値(C2およびC5)は聴覚刺激条件にて統計学的有意に高値を示した。クエン酸誘発性の咳衝動log-log slpeは聴覚刺激条件にて統計学的有意に低値を示した。一方で,Log咳衝動閾値は両条件において統計学的有意差は見られなかった。

【結語】聴覚刺激は,咳反射感受性および咳衝動を低下させることが明らかになった。咳反射は脳幹と上位脳機能によって制御されている。本研究において,Log咳衝動閾値に変化が見られなかったことから,聴覚刺激が上位脳機能に影響を及ぼすことで,その効果を示したことが考えられた。