[P-RS-11-3] 機能的残気量が指床間距離に及ぼす影響
キーワード:慢性閉塞性肺疾患, 指床間距離, 胸郭可動性
【はじめに,目的】
厚生労働省の統計によると,2014年の慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)患者の死亡者数は16,184人となり年々増加傾向である。COPD患者はビア樽状の胸郭を呈し,全身の可動性低下が認められる。胸郭と胸椎は解剖学的に連結しており,FRCの増加による胸郭の可動性低下に伴い,体幹回旋可動性が低下することは既に明らかとなっている。また,草刈らによると,健常成人に意図的な円背姿勢を作った円背条件は無条件と比較し,胸郭拡張差が有意に低下したと報告している。以上より,胸郭の可動性は体幹屈曲可動性とも関連している可能性が考えられる。さらに,多くの研究で体幹屈曲可動性は指床間距離(以下FFD)によって測定されている。
よって,本研究では,FRCの増加によるCOPDモデルを設定し,体幹屈曲可動性の評価として測定されているFFDを用いてFRCが体幹屈曲可動性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象者は呼吸器疾患の既往のない健常成人39名で(男性17名,女性12名),年齢は21.2±0.8歳(平均±標準偏差)とした。
FRCを増加させたCOPDモデルは,シリンダーを用いて正確に安静呼気から+0ml,+1000ml,+2000mlの3条件の空気を吸入させ,FRC増加を健常成人で再現した。FRC条件を対象者間に無作為な順序で実施し,各条件において息を止めた状態でFFDを測定した。
FFDの測定はフレクション-D(T.K.K.5403,竹井機器工業社製)を使用した。このデジタル前屈計をベッドの端に固定し,直立した状態から両手を揃え,手指を伸展した状態でスケールに軽く触れながら体前屈を行った。測定値は,台の上面の高さを0cmとし,両指尖の位置が0cmに達しない場合はマイナス(-)で表記した。なお,単位はセンチメートル(cm)とし,小数点第1位までを採用した。
各FRC条件におけるFFDの変化を分析するため,反復測定一元配置分散分析を行い,主効果の認められた項目に,Bonfferoniの多重比較検定を行った。統計解析にはSPSS statisticバージョン23を使用した。なお,有意水準は5%とした。
【結果】
FFDの測定値は,+0ml条件で2.2±1.4cm,+1000ml条件で1.8±1.4cm,+2000ml条件で0.5±1.4cm(平均±標準誤差)であり,主効果を認めた。また,+0ml条件と比較し,+2000ml条件では有意に低値を示し,+1000ml条件と比較し,+2000ml条件では有意に低値を示した(p<0.05)。
【結論】
本研究はCOPDモデルを設定し,FRCの増加によってFFDが低値を示した。これは,FRCの増加に伴って,胸郭が拡張し,胸郭可動性が低下することで,運動連鎖的作用によって胸椎の屈曲方向の可動性も制限され,矢状面上の体幹可動性が低下したと考えられる。よって,FRCが増加しているCOPD患者においても,体幹屈曲可動性が低下している可能性が示唆された。特に,FRC増加が著明な重症COPD患者において制限されている可能性がある。
厚生労働省の統計によると,2014年の慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)患者の死亡者数は16,184人となり年々増加傾向である。COPD患者はビア樽状の胸郭を呈し,全身の可動性低下が認められる。胸郭と胸椎は解剖学的に連結しており,FRCの増加による胸郭の可動性低下に伴い,体幹回旋可動性が低下することは既に明らかとなっている。また,草刈らによると,健常成人に意図的な円背姿勢を作った円背条件は無条件と比較し,胸郭拡張差が有意に低下したと報告している。以上より,胸郭の可動性は体幹屈曲可動性とも関連している可能性が考えられる。さらに,多くの研究で体幹屈曲可動性は指床間距離(以下FFD)によって測定されている。
よって,本研究では,FRCの増加によるCOPDモデルを設定し,体幹屈曲可動性の評価として測定されているFFDを用いてFRCが体幹屈曲可動性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象者は呼吸器疾患の既往のない健常成人39名で(男性17名,女性12名),年齢は21.2±0.8歳(平均±標準偏差)とした。
FRCを増加させたCOPDモデルは,シリンダーを用いて正確に安静呼気から+0ml,+1000ml,+2000mlの3条件の空気を吸入させ,FRC増加を健常成人で再現した。FRC条件を対象者間に無作為な順序で実施し,各条件において息を止めた状態でFFDを測定した。
FFDの測定はフレクション-D(T.K.K.5403,竹井機器工業社製)を使用した。このデジタル前屈計をベッドの端に固定し,直立した状態から両手を揃え,手指を伸展した状態でスケールに軽く触れながら体前屈を行った。測定値は,台の上面の高さを0cmとし,両指尖の位置が0cmに達しない場合はマイナス(-)で表記した。なお,単位はセンチメートル(cm)とし,小数点第1位までを採用した。
各FRC条件におけるFFDの変化を分析するため,反復測定一元配置分散分析を行い,主効果の認められた項目に,Bonfferoniの多重比較検定を行った。統計解析にはSPSS statisticバージョン23を使用した。なお,有意水準は5%とした。
【結果】
FFDの測定値は,+0ml条件で2.2±1.4cm,+1000ml条件で1.8±1.4cm,+2000ml条件で0.5±1.4cm(平均±標準誤差)であり,主効果を認めた。また,+0ml条件と比較し,+2000ml条件では有意に低値を示し,+1000ml条件と比較し,+2000ml条件では有意に低値を示した(p<0.05)。
【結論】
本研究はCOPDモデルを設定し,FRCの増加によってFFDが低値を示した。これは,FRCの増加に伴って,胸郭が拡張し,胸郭可動性が低下することで,運動連鎖的作用によって胸椎の屈曲方向の可動性も制限され,矢状面上の体幹可動性が低下したと考えられる。よって,FRCが増加しているCOPD患者においても,体幹屈曲可動性が低下している可能性が示唆された。特に,FRC増加が著明な重症COPD患者において制限されている可能性がある。