第52回日本理学療法学術大会

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日本呼吸理学療法学会 » ポスター発表

[P-RS-12] ポスター(呼吸)P12

2017年5月14日(日) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本呼吸理学療法学会

[P-RS-12-1] 徒手胸郭圧迫法による胸郭ストレッチングが安静時の呼吸仕事量に及ぼす影響について

山本 健太1, 間瀬 教史2, 若林 みなみ1, 小林 実希3, 山本 実穂3, 野添 匡史2, 木原 一晃4, 高嶋 幸恵2 (1.一般財団法人甲南会甲南病院リハビリテーション部, 2.甲南女子大学看護リハビリテーション学部理学療法学科, 3.伊丹恒生脳神経外科病院リハビリテーション部, 4.甲南女子大学客員研究員)

キーワード:胸郭ストレッチング, 呼吸仕事量, 徒手胸郭圧迫法

【はじめに,目的】

胸郭の柔軟性改善を目的とした胸郭ストレッチング方法の1つとして,徒手胸郭圧迫法(呼吸リハビリテーションマニュアル第2版)がある。その効果として胸郭の柔軟性すなわち胸郭コンプライアンス(Ccw)の改善以外に,呼吸仕事量(WOB)の軽減も期待できるとされている。しかし,呼吸仕事量の減少を実際に観察した報告はない。そこで今回は徒手胸郭圧迫法による胸郭ストレッチングが安静時の呼吸仕事量に与える即時的効果を検討することとした。


【方法】

対象は健常成人6名(男性4名,女性2名,平均年齢34.2±8.2歳)とした。徒手胸郭圧迫法による胸郭ストレッチングは,被験者を背臥位とし,術者が上部及び下部胸郭に対し徒手的に胸郭を圧迫する手技とし,15分間おこなった。手技の前後に座位での安静時呼吸2分間,および胸郭の圧量曲線の測定を行った。胸郭の圧量曲線は気流阻止法を用いた。肺気量変化は,流量計(チェスト社製)を用いて測定した。安静呼吸の解析対象は測定後半の安定した3~5呼吸とし,一回換気量(TV),呼吸数(RR)を算出した。胸腔内圧(Ppl)は食道バルーン法,口腔内圧(Pmo)はマウスピース内の圧を差圧トランスデューサー(チェスト社製)にて測定し,径肺圧はPmoからPplを引くことにより求めた。得られた圧及び肺気量変化をサンプリング周波数100HzでPCに取り込み,胸郭・肺の圧量曲線と安静時呼吸の圧量ループを描いた。弾性WOB,粘性WOBはModified Campbell Diagramを用いて算出した。


【結果】

胸郭ストレッチング前後での安静時呼吸のTV(前0.48±0.04L,後0.46±0.08L),RR(前17.4±1.7回/分,後15.8±2.7回/分)ともに有意差はなかった。吸気の弾性WOBは胸郭ストレッチ前(1.97±0.65J/min)に比べ胸郭ストレッチング後(1.11±0.61J/min)で有意に低下した(p<0.05)。吸気の粘性WOB(前0.40±0.18J/min,後0.25±0.16J/min),呼気の弾性WOB(前0.02±0.03J/min,後0.07±0.08J/min),呼気の粘性WOB(前0.07±0.08J/min,後0.09±0.13J/min)は胸郭ストレッチング前後で有意な差を認めなかった。


【結論】

本研究の結果から,徒手胸郭圧迫法による胸郭ストレッチングでは,安静時呼吸の吸気の弾性WOBを低下させることが明らかとなった。