[P-RS-12-4] 健常人における頚部筋の異なる賦活法が随意的咳嗽力に与える影響についての比較
声門閉鎖機能に着目して
Keywords:頚部筋賦活, 随意的咳嗽, 声門閉鎖
【はじめに,目的】
多施設による調査では,肺炎入院患者の66.8%が誤嚥性肺炎であり,その発症には随意的咳嗽力の低下が関与することが多いと報告されている。垣内らは随意的咳嗽の圧縮期は声門閉鎖機能の影響を受けると報告している。随意的咳嗽時に声門を閉鎖する有効な方法の検討は,誤嚥性肺炎の発症を低減させる可能性があると推察する。
本研究では声門閉鎖に関与するとされる頚部筋の賦活が,随意的咳嗽力に与える即時効果について調査することを目的とした。
【方法】
対象は呼吸器,循環器,頚椎疾患の既往がない健常成人9名(男性6名,女性3名,平均年齢24.4±2.3歳)とした。対象者をcontrol群,頚部屈曲運動群,頭部屈曲運動群,pushing運動群の4群とし,同一対象者に4群全ての条件を施行した。条件施行順は乱数表によりランダム化した。各群に条件施行前後で最大呼気流量(Peak Cough Flow,以下PCF)を計測した。PCF測定器具には,フジ・レスピロニクス社製アセスピークフローメータに呼気ガス分析用のフェイスマスクを接続したものを使用し,計測した。測定体位は座位とした。測定は,空気漏れのないよう測定器具を顔面にしっかりと密着させ,最大吸気位からの随意的な咳嗽を全力で行うように説明し,咳嗽は自由なタイミングで行った。Control群では介入を行わなかった。頚部屈曲運動群,頭部屈曲運動群では声門閉鎖に関与する頚部筋の賦活を目的に,座位にて運動方向に抵抗を加え,5秒間の等尺性収縮を行った。pushing運動は,上肢に力を入れることにより,反射的に起こる息こらえを利用して,声門閉鎖機能の賦活を図ることを目的として採用した。座位にて大転子部横の座面に対して5秒間のpushingを行った。頚部筋の賦活運動に関しては,訓練法のまとめ(日本摂食嚥下リハ学会,2014)を参考にした。測定手順はPCFの計測,30分間の座位での作業,賦活運動,PCFの計測の順で行った。測定回数は3回とし,その最大値をCPFの値として採用した。各群の実施は1日以上の間隔を空けて行った。測定値の変化率を4群間にて比較検討した。統計学的解析は各群の変化率を多重比較検定(steel-dwass法)により行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
PCFの変化率はcontrol群0.54±4.1%,頚部屈曲運動群10.5±12.6%,頭部屈曲運動群4.3±8.4%,pushing運動群13.6±10.4%であった。Control群とpushing運動群間でのみ有意差(p<0.05)を認めた。
【結論】
本研究結果より,pushing運動を行うことで,随意的咳嗽力が向上する可能性が示唆された。pushing運動では息こらえに伴い頚部筋が収縮する。このことから,pushing運動では,その他の条件と比較して,随意的咳嗽により近い収縮様式で頚部筋の収縮を促すことが可能となり,PCFが向上したと推察する。
多施設による調査では,肺炎入院患者の66.8%が誤嚥性肺炎であり,その発症には随意的咳嗽力の低下が関与することが多いと報告されている。垣内らは随意的咳嗽の圧縮期は声門閉鎖機能の影響を受けると報告している。随意的咳嗽時に声門を閉鎖する有効な方法の検討は,誤嚥性肺炎の発症を低減させる可能性があると推察する。
本研究では声門閉鎖に関与するとされる頚部筋の賦活が,随意的咳嗽力に与える即時効果について調査することを目的とした。
【方法】
対象は呼吸器,循環器,頚椎疾患の既往がない健常成人9名(男性6名,女性3名,平均年齢24.4±2.3歳)とした。対象者をcontrol群,頚部屈曲運動群,頭部屈曲運動群,pushing運動群の4群とし,同一対象者に4群全ての条件を施行した。条件施行順は乱数表によりランダム化した。各群に条件施行前後で最大呼気流量(Peak Cough Flow,以下PCF)を計測した。PCF測定器具には,フジ・レスピロニクス社製アセスピークフローメータに呼気ガス分析用のフェイスマスクを接続したものを使用し,計測した。測定体位は座位とした。測定は,空気漏れのないよう測定器具を顔面にしっかりと密着させ,最大吸気位からの随意的な咳嗽を全力で行うように説明し,咳嗽は自由なタイミングで行った。Control群では介入を行わなかった。頚部屈曲運動群,頭部屈曲運動群では声門閉鎖に関与する頚部筋の賦活を目的に,座位にて運動方向に抵抗を加え,5秒間の等尺性収縮を行った。pushing運動は,上肢に力を入れることにより,反射的に起こる息こらえを利用して,声門閉鎖機能の賦活を図ることを目的として採用した。座位にて大転子部横の座面に対して5秒間のpushingを行った。頚部筋の賦活運動に関しては,訓練法のまとめ(日本摂食嚥下リハ学会,2014)を参考にした。測定手順はPCFの計測,30分間の座位での作業,賦活運動,PCFの計測の順で行った。測定回数は3回とし,その最大値をCPFの値として採用した。各群の実施は1日以上の間隔を空けて行った。測定値の変化率を4群間にて比較検討した。統計学的解析は各群の変化率を多重比較検定(steel-dwass法)により行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
PCFの変化率はcontrol群0.54±4.1%,頚部屈曲運動群10.5±12.6%,頭部屈曲運動群4.3±8.4%,pushing運動群13.6±10.4%であった。Control群とpushing運動群間でのみ有意差(p<0.05)を認めた。
【結論】
本研究結果より,pushing運動を行うことで,随意的咳嗽力が向上する可能性が示唆された。pushing運動では息こらえに伴い頚部筋が収縮する。このことから,pushing運動では,その他の条件と比較して,随意的咳嗽により近い収縮様式で頚部筋の収縮を促すことが可能となり,PCFが向上したと推察する。