[P-RS-12-5] 健常人における体幹運動を伴った呼吸が呼吸機能および呼吸筋力に与える影響について
キーワード:体幹運動, 呼吸機能, 呼吸筋力
【はじめに,目的】
術後呼吸器合併症を予防するためには自己排痰を行うことが重要である。咳嗽時に体幹運動を用いて行うことにより,効果的に自己排痰が可能となる経験をする。しかし,自己排痰能力と呼吸機能に関係があるとの報告はあるが,体幹運動を用い動的に呼吸機能検査を行った報告は少なく,咳嗽に影響を与えるかは不明である。
本研究は,体幹運動を伴った呼吸を行うことにより,呼吸機能および呼吸筋力の変化について検討した。
【方法】
対象者は,呼吸器疾患の既往がない健常人18名(男性11名,女性7名),平均年齢24.8±5.3歳とした。対象者を体幹正中位にて呼吸を行う群(以下,正中位群)と体幹運動を伴った呼吸を行う群(以下,体幹運動群)の2群とし,同一対象者に両条件を施行した。呼吸機能検査および呼吸筋力測定の慣れの影響を除外するためA群(1日目:正中位群,2日目:体幹運動群),B群(1日目:体幹運動群,2日目:正中位群)を乱数表を用い1対1に割り付けた。
呼吸機能検査および呼吸筋力測定はスパイロメータ(フクダ電子社製Spiro Sift SP-370COPD肺preプラス)を用い,%肺活量,%努力肺活量,1秒率,%ピークフロー,%最大呼気圧,%最大吸気圧とした。
呼吸機能検査の条件を以下に示す。両群に共通して,体幹正中位での安静呼吸を3回以上実施した。次に体幹運動群は,最大呼気,努力呼気時に体幹後弯運動を行い,最大吸気時に体幹伸展運動を行った。正中位群は常に前方を注視し,背もたれから背部を離さずに行った。
呼吸筋力測定の条件を以下に示す。体幹運動群の%最大呼気圧は,体幹伸展運動を伴った最大吸気後に体幹後弯運動を伴った最大呼気努力を行い測定した。%最大吸気圧は,体幹後弯運動を伴った最大呼気後に体幹伸展運動を伴った最大吸気努力を行い測定した。正中位群は呼吸機能検査と同様の方法で行った。
統計学的解析は正中位群と体幹運動群の各測定項目の平均値をWilcoxon符号順位和検定を用いて有意水準は5%未満で検定した。
【結果】
1秒率,%最大呼気圧は正中位群と比較し,体幹運動群で有意に高値となった。その他の項目は両群間に有意差を認めなかった。
【結論】
山﨑らは腹筋の能動的な収縮は,肋骨の下制を促進することができ,強制呼気時に素早くより強力に胸郭の体積を減少させると報告している。本研究より,体幹運動群において,体幹後弯運動を伴った呼気は腹筋群の収縮が得られやすくなり,%最大呼気圧が高値を示したと推察する。また,腹筋群の収縮により,胸郭の体積が急激に減少したため1秒率が増加したと推察する。
斎藤らは食道癌術後早期に1秒量,最大呼気圧が低下し,両者に有意な正相関があると報告している。呼吸器合併症が生じやすい術後早期に呼吸機能および呼吸筋力の改善は困難である。しかし,呼吸機能が低下した患者に対して体幹運動を伴った呼吸の施行は1秒率,%最大呼気圧を補う可能性があり,有効な咳嗽法になると推察する。
術後呼吸器合併症を予防するためには自己排痰を行うことが重要である。咳嗽時に体幹運動を用いて行うことにより,効果的に自己排痰が可能となる経験をする。しかし,自己排痰能力と呼吸機能に関係があるとの報告はあるが,体幹運動を用い動的に呼吸機能検査を行った報告は少なく,咳嗽に影響を与えるかは不明である。
本研究は,体幹運動を伴った呼吸を行うことにより,呼吸機能および呼吸筋力の変化について検討した。
【方法】
対象者は,呼吸器疾患の既往がない健常人18名(男性11名,女性7名),平均年齢24.8±5.3歳とした。対象者を体幹正中位にて呼吸を行う群(以下,正中位群)と体幹運動を伴った呼吸を行う群(以下,体幹運動群)の2群とし,同一対象者に両条件を施行した。呼吸機能検査および呼吸筋力測定の慣れの影響を除外するためA群(1日目:正中位群,2日目:体幹運動群),B群(1日目:体幹運動群,2日目:正中位群)を乱数表を用い1対1に割り付けた。
呼吸機能検査および呼吸筋力測定はスパイロメータ(フクダ電子社製Spiro Sift SP-370COPD肺preプラス)を用い,%肺活量,%努力肺活量,1秒率,%ピークフロー,%最大呼気圧,%最大吸気圧とした。
呼吸機能検査の条件を以下に示す。両群に共通して,体幹正中位での安静呼吸を3回以上実施した。次に体幹運動群は,最大呼気,努力呼気時に体幹後弯運動を行い,最大吸気時に体幹伸展運動を行った。正中位群は常に前方を注視し,背もたれから背部を離さずに行った。
呼吸筋力測定の条件を以下に示す。体幹運動群の%最大呼気圧は,体幹伸展運動を伴った最大吸気後に体幹後弯運動を伴った最大呼気努力を行い測定した。%最大吸気圧は,体幹後弯運動を伴った最大呼気後に体幹伸展運動を伴った最大吸気努力を行い測定した。正中位群は呼吸機能検査と同様の方法で行った。
統計学的解析は正中位群と体幹運動群の各測定項目の平均値をWilcoxon符号順位和検定を用いて有意水準は5%未満で検定した。
【結果】
1秒率,%最大呼気圧は正中位群と比較し,体幹運動群で有意に高値となった。その他の項目は両群間に有意差を認めなかった。
【結論】
山﨑らは腹筋の能動的な収縮は,肋骨の下制を促進することができ,強制呼気時に素早くより強力に胸郭の体積を減少させると報告している。本研究より,体幹運動群において,体幹後弯運動を伴った呼気は腹筋群の収縮が得られやすくなり,%最大呼気圧が高値を示したと推察する。また,腹筋群の収縮により,胸郭の体積が急激に減少したため1秒率が増加したと推察する。
斎藤らは食道癌術後早期に1秒量,最大呼気圧が低下し,両者に有意な正相関があると報告している。呼吸器合併症が生じやすい術後早期に呼吸機能および呼吸筋力の改善は困難である。しかし,呼吸機能が低下した患者に対して体幹運動を伴った呼吸の施行は1秒率,%最大呼気圧を補う可能性があり,有効な咳嗽法になると推察する。