第52回日本理学療法学術大会

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日本呼吸理学療法学会 » ポスター発表

[P-RS-13] ポスター(呼吸)P13

2017年5月14日(日) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本呼吸理学療法学会

[P-RS-13-1] ICU入室中人工呼吸器装着下から理学療法を実施し自宅退院可能となった症例
―鎮静状況および血液生化学データからの考察―

桂田 功一1, 保木本 崇弘1, 木下 一雄1, 樋口 謙次1, 竹川 徹1,2, 安保 雅博2, 鹿瀬 陽一3 (1.東京慈恵会医科大学附属柏病院リハビリテーション科, 2.東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座, 3.東京慈恵会医科大学附属柏病院麻酔科)

キーワード:早期離床, 人工呼吸器装着, ICU-AW

【はじめに,目的】

近年,ICU-Acqired Weaknessの概念が広がり,予防の観点からICU管理下であっても全身状態を考慮しつつ可能な限り活動制限を最小にすることが推奨されている。7日以上の人工呼吸器管理となる患者はICU-AWのリスクが高いため,当院ICUにおいても人工呼吸器装着期間中から離床を行い,筋力のみならず筋量の維持を図っている。ICU退室前から低下した筋量は退室後も低下を続け,1ヶ月が経過しても改善しない症例を多く経験するが,今回,ICUから理学療法介入を開始し,人工呼吸器装着期間中から積極的な運動療法を実施し,筋量および筋力が維持され自宅退院が可能であった症例を経験したので報告する。

【方法】

症例は58歳男性で,入院前のADL(職業は建築業)はすべて自立していた。レジオネラ肺炎にて緊急入院しICU管理となった。入院時重症度APACHEII23点であり,抗菌薬の投与および補液にて加療された。酸素マスク5L/minを投与されていたが,第4病日,人工呼吸器(SIMV-PC)を装着された。第5病日,理学療法開始。ウィーニングを図り第14病日に抜管・ICU退室された。第28病日に自宅退院となった。

【結果】

K・Naなど電解質データおよびバイタルサインは正常範囲内であった。CKは入院時2649U/L,第5病日73U/Lまで低下し正常化した。CRPは第2病日29.5mg/dLまで上昇し以降低下,第15病日に0.3 mg/dL正常化した。介入開始時は鎮静スケールRASS-3,第10病日以降はRASS-1で理学療法介入中は応答可能なレベルであった。筋力指標MRCスケールは第5病日0点,第9病日58であった。第9病日にCRPが3.0を下回り,翌日以降は意識レベルも安定していたため座位・起立練習および筋力トレーニングを実施し,第13病日からはベッド周囲の歩行練習を実施した。第14日目に歩行器歩行開始し,第18病日に独歩再獲得された。第20日以降,床上動作や階段昇降も自立した。体組成計InBodyにて測定した骨格筋指数SMIは,第14病日(ICU退室時)に9.6 kg/m2,第28病日(退院時)に10.2kg/m2であった。

【結論】

ICU退室後に筋量データが低下する症例を経験するが本症例は退室後に筋量は向上した。人工呼吸器管理下であっても循環動態が安定し適切な鎮静状況であれば,血液生化学データに注意しながら積極的に活動を促すことで,退室後の筋量維持に寄与する可能性が考えられた。本症例においてはCRP3.0を下回った時点(第9病日)で離床を進めたが,CKは第5病日には正常化していたため,より早期に鎮静状況を調整し離床を推進する,あるいは筋電気刺激療法などから開始するなど他の方法を取り入れることができた可能性が考えられる。開始基準の設定のみならず,患者の状態に応じた負荷量の設定など,今後症例を重ねて検討していきたい。