第52回日本理学療法学術大会

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日本呼吸理学療法学会 » ポスター発表

[P-RS-13] ポスター(呼吸)P13

2017年5月14日(日) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本呼吸理学療法学会

[P-RS-13-2] ICU-acquired weaknessを合併したAcute respiratory distress syndrome患者一症例における運動機能回復とバランス評価

伊東 一章, 菊谷 文子 (秋田赤十字病院リハビリテーション科)

キーワード:ICU-AW, 運動機能, バランス評価

【はじめに】ICU-acquired weakness(ICU-AW)はICU管理された重症患者に生じる骨格筋機能低下であり,その原因が明らかでないものと定義されている。特に多臓器不全や敗血症,Acute respiratory distress syndrome(ARDS)に合併し,人工呼吸器離脱遅延や長期にわたる身体機能障害やADL低下など深刻な影響を及ぼすことが知られている。病態の成因に関しては不明な点も多く,運動機能回復に関する報告はいまだ少ない。また,基本動作や日常生活活動(ADL)等の低下にバランス機能障害が関与している症例も多いと推察されるが,ADL経過とバランス機能回復を詳細に評価したものはない。そこで,ICU-AWを合併したARDS患者の運動機能とバランス機能回復の経過を報告する。


【方法】症例は急性骨髄性白血病の化学療法目的に入院,ADLは自立していた。その後に肺炎を発症,DIC score 7点,PaO2/FIO2(P/F)ratio 65,ARDSのため人工呼吸器管理となった。12病日にP/F 90と低値であり,連日血小板輸血が行われ肺出血のリスク管理が併用して行われた。26病日より呼吸理学療法・離床訓練を開始,61病日で歩行器での連続歩行が100m可能となり,98病日でT字杖歩行自立となり自宅退院となった。運動機能,バランス機能,ADLの経過は,Medical Research Council score(MRC score)[点],10m歩行速度[m/sec],Timed-Up and Go test(TUG)[sec],6分間歩行距離[m],Berg Balance Scale(BBS)[点],日本語版Mini-Balance Evaluation Systems Test(Mini-BESTest)[点],Functional Status Score for the Intensive Care Unit(FSS-ICU)[点],Barthel Index(BI)[点]で評価した。


【結果】理学療法開始時は筋力低下を呈し,ADLは全介助であった(MRC score;38点,FSS-ICU;3点,BI;0点)。48病日では筋力は改善傾向にあったがバランス障害が認められた(MRC score;48点,BBS;13点,Mini-BESTest;3点,FSS-ICU;23点,BI;40点)。75病日ではさらに筋力は改善したが,バランス障害が残存,ADLは軽介助レベルとなった(MRC score;54点,10m歩行速度;0.63 m/sec,TUG;27.5 sec,6分間歩行距離;130 m,BBS;33点,Mini-BESTest;10点,FSS-ICU;32点,BI;85点)。98病日でバランス障害は改善し,病棟内ADL自立,T字杖歩行で自宅退院となった(MRC;56点,10m歩行速度;0.78 m/sec,TUG;14.7 sec,6分間歩行距離;240 m,BBS;50点,Mini-BESTest;17点,FSS-ICU;35点,BI;95点)。筋力回復は比較的早期に認められ,その後のバランス機能改善に伴い,運動機能とADLにも改善が認められた。


【結論】ICU-AWを合併したARDS患者の運動機能回復とバランス評価指標にMRC score,BBS,Mini-BESTestを用いて治療を行った。ICU-AWを合併した患者においてバランス機能評価を行うことは理学療法治療に有用であり,初期はBBSを使用し,より高度なバランス機能評価にはMini-BESTestが適している可能性が示された。