第52回日本理学療法学術大会

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日本呼吸理学療法学会 » ポスター発表

[P-RS-13] ポスター(呼吸)P13

2017年5月14日(日) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本呼吸理学療法学会

[P-RS-13-4] ICU獲得性筋力低下患者に対する回復期リハビリテーションの治療介入効果
能動的運動の促進と多職種連携の必要性に着目して

宮﨑 成美1, 米澤 武人1, 名倉 弘樹2, 本田 祐一郎2, 神津 玲2,3, 羽島 厚裕1 (1.独立行政法人国立病院機構長崎病院リハビリテーション科, 2.長崎大学病院リハビリテーション部, 3.長崎大学大学院医歯薬学総合研究科内部障害リハビリテーション学)

キーワード:ICU獲得性筋力低下(ICU-AW), 回復期リハビリテーション, 多職種連携

【はじめに】ICU獲得性筋力低下(ICU-acquired weakness,ICU-AW)は敗血症などの重症患者に好発し,軸索障害を特徴とするCritical illness polyneuropathyと,近位筋有意の筋力低下を特徴とするCritical illness myopathy,さらに両者を合併したCritical illness neuromyopathyを包括する病態である。これは死亡率の増加,長期間にわたる身体機能障害,ADLおよび健康関連QOLの低下など,患者の短期及び長期予後に深刻な悪影響を及ぼす。したがって,ICU-AWに対する回復期リハビリテーション(リハ)での介入方法の確立は,ADL能力の改善において重要な課題である。しかし,回復期病院におけるICU-AWの臨床報告は皆無であり,これがICU-AWに対する効果的な治療戦略の確立を妨げている一要因になっている。そこで本演題では,急性期病院にてICU-AWを発症した患者に対する回復期リハでの介入方法を提示し,機能回復の経過やADL,QOLの変化について報告する。

【症例】60歳代女性,入院前のADLは自立。現病歴としては,X日に急性期病院へ緊急入院となり,X+1日に敗血症性ショックと診断。X+69日に全身筋力の指標であるMRC sum score(MRC-SS)が24点と基準である48点未満であったことからICU-AWと判定。その後,X+264日にリハでのADL向上を目的に当院転院となり,転入時のMRC-SSは36点であった。起居動作は概ね全介助であり,ADLはBarthel Index(BI)で15点,QOLはSF-36の身体機能(PF)は0,身体の日常役割機能(RP)は37.5であった。

【経過】本症例は当院転院直後より細菌感染に伴う個室隔離となったため,まずは病室で起居動作の獲得を目指したプログラムを実施した。その結果,起き上がりの介助量は軽減し,30分以上の端座位保持が可能となった。その後,病棟看護師と連携し,日中の端座位時間の確保,延長を目的にX+287日より端座位での昼食摂取が開始となった。さらに,X+313日より個室隔離が解除となったことでリハ室での理学療法を開始し,起立練習や車椅子の自走練習を中心に行った。結果,MRC-SSは38点と向上し,起き上がりは自立,BIは35点,SF-36のPFは10.0,RPは68.8と改善を認めた。

【結論】今回,ICU-AWの合併によって全身の筋力低下と遷延をきたし,著しくADL能力が低下した症例を経験した。ICU-AWの急性期リハは,不活動による廃用症候群に加え,全身炎症から惹起された末梢神経障害や筋障害が要因とされ,早期離床や積極的な運動療法が予防において重要とされている。当院での回復期リハでも理学療法介入のみならず病棟看護師との連携強化によって離床時間は延長し,このことが起居動作能力の改善につながり,ADLひいてはQOLの向上につながる可能性が示唆された。すなわち,ICU-AWを呈した患者に対するADL向上に向けた介入は,多職種と連携を図りながら離床時間の延長を図り,能動的な関節運動ならびに筋力増強運動を促すことが重要であると推察された。