[P-SK-01-5] 若年者の握力と四肢周径,部位別筋肉量の関係性について
生体電気インピーダンス法(In Body570)を利して
Keywords:握力, 四肢周径, 生体電気インピーダンス法
【はじめに,目的】
握力は容易に測定できる上肢機能の重要な指標の一つである。先行研究で高齢者の体力測定の結果から,握力と大腿四頭筋の筋力との関連や,スポーツ選手は握力と下肢筋力に相関があるとの報告をしている。四肢周径は骨格筋の肥大や萎縮を簡易に評価でき,筋力との関係性があると述べている。InBody570を用いた身体組成計は骨格筋量や脂肪量などを簡便に計測することが可能であり,測定器の妥当性や信頼性に関する報告は散見される。しかし,握力と四肢周径,骨格筋量との関係性は一定の見解が得られていない。我々は運動習慣のない若年者を対象に3者の関連性を分析し,臨床的意義があるか検討した。
【方法】
対象は運動習慣のない健常成人男性20名(年齢:20.8±1.7歳,身長:169.5±5.5cm,体重:62.9±12.6kg,利き側:右)とした。全対象にInBody570(BIOSPACE社製)を用い,右腕(RA),左腕(LA),右脚(RL),左脚(LL)の筋肉量を測定した。握力はデジタル握力計(竹井機器工業社製)を使用した。肢位は立位で,左右の上肢を体側に下垂させた状態で最大握力を測定。四肢周径はメジャーを使用,仰臥位で計測した。前腕周径は最大膨隆部(FC),上腕周径は肘屈曲位で最大膨隆部(AC),大腿周径は膝蓋骨上縁10cm(TC),下腿は最大膨隆部(CC)を測定した。統計処理は左右別に握力と四肢周径,部位別筋肉量との関連についてピアソンの相関係数を用いて分析した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
左握力(39.7±6.5kg)はLA(2.6±0.4kg),LL(8.2±0.9kg),左FC(25.3±2.4cm),左AC(28.2±3.9cm),左TC(44.6±4.4cm),左CC(35.7±2.8cm)とすべての項目で有意な相関を示さなかった。右に関しては握力(41.4±6.5kg)と右FC(25.6±2.1cm)(r=0.45,P<0.05),握力と右AC(29.0±3.8cm)(r=0.45,P<0.05),握力とRA(2.6±0.5kg)(r=0.47,P<0.05),握力とRL(8.2±0.9kg)(r=0.58,P<0.01)に有意な相関が認められた。握力と右TC(45.1±4.4cm),握力と右CC(35.9±2.9cm)において,有意な相関が見られなかった。
【結論】
右握力は,右FC,右AC,RA,RLで相関を認めた。周径は筋肥大の指標となることが知られており,利き手に関しては握力で上肢の筋量と筋力を予測できる可能性が示された。右TC,右CCとは相関を認めなかった。これは握力が下肢の筋肥大に必ずしも反映されない事が考えられた。さらに先行研究では,筋量よりも筋力の方が相対的に低下するとの報告があり,右握力はRLとの相関を認めたが,右TC,右CCと相関がなかったと考える。左の握力は全項目で相関がなかった。利き手に関する研究で,握力は上肢周径など軟部または機能的測度では利き手優位の傾向が現れやすいと報告しており,そのため相関がなかったと考える。これらの結果から,運動習慣のない若年者は握力が下肢筋力を測る指標になりえない事が示唆された。
握力は容易に測定できる上肢機能の重要な指標の一つである。先行研究で高齢者の体力測定の結果から,握力と大腿四頭筋の筋力との関連や,スポーツ選手は握力と下肢筋力に相関があるとの報告をしている。四肢周径は骨格筋の肥大や萎縮を簡易に評価でき,筋力との関係性があると述べている。InBody570を用いた身体組成計は骨格筋量や脂肪量などを簡便に計測することが可能であり,測定器の妥当性や信頼性に関する報告は散見される。しかし,握力と四肢周径,骨格筋量との関係性は一定の見解が得られていない。我々は運動習慣のない若年者を対象に3者の関連性を分析し,臨床的意義があるか検討した。
【方法】
対象は運動習慣のない健常成人男性20名(年齢:20.8±1.7歳,身長:169.5±5.5cm,体重:62.9±12.6kg,利き側:右)とした。全対象にInBody570(BIOSPACE社製)を用い,右腕(RA),左腕(LA),右脚(RL),左脚(LL)の筋肉量を測定した。握力はデジタル握力計(竹井機器工業社製)を使用した。肢位は立位で,左右の上肢を体側に下垂させた状態で最大握力を測定。四肢周径はメジャーを使用,仰臥位で計測した。前腕周径は最大膨隆部(FC),上腕周径は肘屈曲位で最大膨隆部(AC),大腿周径は膝蓋骨上縁10cm(TC),下腿は最大膨隆部(CC)を測定した。統計処理は左右別に握力と四肢周径,部位別筋肉量との関連についてピアソンの相関係数を用いて分析した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
左握力(39.7±6.5kg)はLA(2.6±0.4kg),LL(8.2±0.9kg),左FC(25.3±2.4cm),左AC(28.2±3.9cm),左TC(44.6±4.4cm),左CC(35.7±2.8cm)とすべての項目で有意な相関を示さなかった。右に関しては握力(41.4±6.5kg)と右FC(25.6±2.1cm)(r=0.45,P<0.05),握力と右AC(29.0±3.8cm)(r=0.45,P<0.05),握力とRA(2.6±0.5kg)(r=0.47,P<0.05),握力とRL(8.2±0.9kg)(r=0.58,P<0.01)に有意な相関が認められた。握力と右TC(45.1±4.4cm),握力と右CC(35.9±2.9cm)において,有意な相関が見られなかった。
【結論】
右握力は,右FC,右AC,RA,RLで相関を認めた。周径は筋肥大の指標となることが知られており,利き手に関しては握力で上肢の筋量と筋力を予測できる可能性が示された。右TC,右CCとは相関を認めなかった。これは握力が下肢の筋肥大に必ずしも反映されない事が考えられた。さらに先行研究では,筋量よりも筋力の方が相対的に低下するとの報告があり,右握力はRLとの相関を認めたが,右TC,右CCと相関がなかったと考える。左の握力は全項目で相関がなかった。利き手に関する研究で,握力は上肢周径など軟部または機能的測度では利き手優位の傾向が現れやすいと報告しており,そのため相関がなかったと考える。これらの結果から,運動習慣のない若年者は握力が下肢筋力を測る指標になりえない事が示唆された。