[P-SK-03-3] 下肢装具に対する理学療法士の関わりについての調査報告
Keywords:下肢装具, 理学療法士, アンケート
【はじめに,目的】
装具療法は,理学療法診療ガイドライン第1版(2011)において推奨グレードA(脳卒中)とされ,理学療法士にとって必要不可欠な治療法である。しかし,昨今理学療法士が下肢装具を十分に活用できていないことが懸念されており,伊藤(2016)は理学療法士が行う装具療法に対して,教育段階からの見直しを提言している。そこで今回,下肢装具に対する理学療法士の関わりについて調査を行い,若干の知見を得たので報告する。
【方法】
平成28年7月に県士会が主催する研修会「脳卒中片麻痺者における下肢装具」に参加した理学療法士47名を対象にアンケート調査を実施した。調査内容は,理学療法士の経験年数と関わる時期(急性期・回復期・生活期),下肢装具の使用・作製・調整に関わる頻度,知識・技術の認識度,リハビリテーション関連職種の中での下肢装具における理学療法士の存在感について,選択回答方式にて回答を求め集計した。
【結果】
回答者は47名(回収率100%),経験年数は1~5年70%,6~10年15%,11年~11%,無回答4%,対象者の時期は急性期23%,回復期38%,生活期34%,その他5%であった。下肢装具の使用頻度は,「ほぼ毎日」が急性期64%に比べ回復期94%,生活期94%と多かった。作製頻度は「3か月に1回以上」が急性期27%,回復期77%,生活期12%に対して,「ほとんど関わらない」が急性期36%,回復期12%,生活期81%であった。調整頻度は,「3か月に1回以上」が急性期36%,回復期70%,生活期31%に対して,「ほとんど関わらない」が急性期64%,回復期18%,生活期44%であった。下肢装具の知識・技術の認識度は,「あまり持っていない」「ほとんど持っていない」を合わせると急性期73%,回復期61%,生活期88%とすべて6割を超えていた。理由として,全対象者では「養成校での授業時間が少ない」19件,「卒後研修する機会がない」18件と多かった。なお,「練習用装具が身近にない」11件のうち8件が生活期であった。下肢装具における理学療法士の存在感は「だいぶ高い」「まあまあ高い」を合わせると急性期99%,回復期100%,生活期88%であった。
【結論】
理学療法士は,対象者の時期に関わらず下肢装具を日常的に利用しており,また関連職種の中での下肢装具に対する存在感は高いと感じていた。一方で,急性期・生活期ともに装具の作製や調整に関わる機会は少なく,知識や技術は不足していると感じていた。今日,必要な人に適切な装具が提供されていない「装具難民」が問題となる中,理学療法士が下肢装具の調整や作製後のフォローアップに関わる意義は高いと思われる。しかし,卒前・卒後教育は十分とはいえず,知識・技術の不足から,これらの問題に対して,十分に関われていない状況が明らかとなった。今回は研修会参加者を対象とした調査結果であり,今後は理学療法士全体を反映する実態調査を行い,装具への取り組みについて改めて見直すことが必要と思われる。
装具療法は,理学療法診療ガイドライン第1版(2011)において推奨グレードA(脳卒中)とされ,理学療法士にとって必要不可欠な治療法である。しかし,昨今理学療法士が下肢装具を十分に活用できていないことが懸念されており,伊藤(2016)は理学療法士が行う装具療法に対して,教育段階からの見直しを提言している。そこで今回,下肢装具に対する理学療法士の関わりについて調査を行い,若干の知見を得たので報告する。
【方法】
平成28年7月に県士会が主催する研修会「脳卒中片麻痺者における下肢装具」に参加した理学療法士47名を対象にアンケート調査を実施した。調査内容は,理学療法士の経験年数と関わる時期(急性期・回復期・生活期),下肢装具の使用・作製・調整に関わる頻度,知識・技術の認識度,リハビリテーション関連職種の中での下肢装具における理学療法士の存在感について,選択回答方式にて回答を求め集計した。
【結果】
回答者は47名(回収率100%),経験年数は1~5年70%,6~10年15%,11年~11%,無回答4%,対象者の時期は急性期23%,回復期38%,生活期34%,その他5%であった。下肢装具の使用頻度は,「ほぼ毎日」が急性期64%に比べ回復期94%,生活期94%と多かった。作製頻度は「3か月に1回以上」が急性期27%,回復期77%,生活期12%に対して,「ほとんど関わらない」が急性期36%,回復期12%,生活期81%であった。調整頻度は,「3か月に1回以上」が急性期36%,回復期70%,生活期31%に対して,「ほとんど関わらない」が急性期64%,回復期18%,生活期44%であった。下肢装具の知識・技術の認識度は,「あまり持っていない」「ほとんど持っていない」を合わせると急性期73%,回復期61%,生活期88%とすべて6割を超えていた。理由として,全対象者では「養成校での授業時間が少ない」19件,「卒後研修する機会がない」18件と多かった。なお,「練習用装具が身近にない」11件のうち8件が生活期であった。下肢装具における理学療法士の存在感は「だいぶ高い」「まあまあ高い」を合わせると急性期99%,回復期100%,生活期88%であった。
【結論】
理学療法士は,対象者の時期に関わらず下肢装具を日常的に利用しており,また関連職種の中での下肢装具に対する存在感は高いと感じていた。一方で,急性期・生活期ともに装具の作製や調整に関わる機会は少なく,知識や技術は不足していると感じていた。今日,必要な人に適切な装具が提供されていない「装具難民」が問題となる中,理学療法士が下肢装具の調整や作製後のフォローアップに関わる意義は高いと思われる。しかし,卒前・卒後教育は十分とはいえず,知識・技術の不足から,これらの問題に対して,十分に関われていない状況が明らかとなった。今回は研修会参加者を対象とした調査結果であり,今後は理学療法士全体を反映する実態調査を行い,装具への取り組みについて改めて見直すことが必要と思われる。