第52回日本理学療法学術大会

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日本支援工学理学療法学会 » ポスター発表

[P-SK-04] ポスター(支援工学)P04

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本支援工学理学療法学会

[P-SK-04-1] 発達期中枢神経障害児者に対する単関節HALを用いた運動療法に関するアンケート調査

松田 雅弘1,2, 田上 未来1,2, 福原 一郎2, 花井 丈夫2, 新田 收3, 根津 敦夫2 (1.植草学園大学保健医療学部, 2.横浜医療福祉センター港南, 3.首都大学東京大学院人間健康科学研究科)

キーワード:ロボットスーツHAL, 脳性麻痺, 効果検証

【はじめに】我々は福祉用HALを用いた運動療法が,発達期中枢神経障害児者の歩行・バランス能力に対して,即時的・長期的効果について報告してきた。今回,発達期中枢神経障害児者の膝関節の動きに対して,単関節HAL(以下,HAL-SJ:single joint type)を用いた運動療法を実施した。その効果について,担当PTにアンケートを実施し,HAL-SJが運動機能に及ぼす影響について検討したので報告する。【方法】発達期中枢神経障害児者に対し,HAL-SJを使用した理学療法士5名(経験年数約10~30年)に使用目的および時間,その効果に関してアンケート調査を実施した。対象となった発達期中枢神経障害児者は13名(平均年齢13.2歳,9-12歳,男性7名,女性6名,痙性四肢麻痺4名,痙性両麻痺7名,痙性片麻痺2名),GMFCSI:2名,II:3名,III:4名,IV:4名であった。アンケート調査時の使用回数は1回目12名,2回目以上7名の計19回のアンケートについて分析を行った。運動療法の効果に関しては5件法を用いて,目的にそった効果について検討した。また,自由記載にて使用方法とその効果について調査した。【結果】HAL-SJを利用した目的は,両側(16回)または一側膝関節(3回)に装着して,随意性の向上(14回)と立位練習(14回),歩行練習(6回),段差昇降練習(3回),その他(自転車)であった。HAL-SJを用いた平均運動時間39.5±12.6分(20-60分)であった。膝関節の随意性の改善は平均2.8±1.2点,歩行の改善は平均3.5±0.9点,立位姿勢制御の改善は平均3.7±1.0点,立ち上がり動作は平均3.8±0.8点,段差昇降の改善は平均4.0±0点となった。目的とする姿勢動作時には,HAL-SJを利用することで立位・歩行時の機能改善,特に膝伸展筋の活動が向上して立位時の支持性の改善がみられた。その他,筋活動を視覚的にPTまたは患者自身が確認でき,フィードバックしながら運動が可能である,軽量のため動作練習を行いやすいなどの自由記載があった。【考察】HAL-SJを使用した運動療法の効果は,装着した膝関節の動きだけではなく,近位関節である股関節制御も高め,立位・歩行機能の改善につながった。HAL-SJ,福祉用HALと異なり,生体電位は大腿の筋のみで,制動する関節は膝関節の1関節でなる。発達期中枢神経障害児者の下肢運動は,分離運動が困難なため,HAL-SJが膝関節の分離運動を促すことで,下肢関節にトータル的な運動制御の改善がなされ,身体運動が円滑になったと考えられる。特に,立位・歩行制御を目的とした運動療法の一部として有効的な手段になると考えた。視覚的なフィードバックはPTにも患者にも有効的で,その情報をもとに運動指導や学習が可能なことも効果を実感した一助になったと考えられる。また,福祉用HALは小児を対象とした場合,身長制限が問題となるが,HAL-SJはその制限に関わらず使用することが可能である。