[P-SK-04-4] 慢性期脊髄症患者に対するBalance Exercise Assist Robotを用いたバランス練習効果の予備的検討
Keywords:ロボット, バランス, 脊髄症
【はじめに,目的】
脊髄症患者は神経根症状や脊髄症状により,歩行障害やバランス障害が起こる場合がある。2013年,立ち乗り型移動パーソナルロボットにゲームを組み合わせたBalance Exercise Assist Robot(以下,BEAR,トヨタ自動車株式会社製)が開発された。BEARを用いた練習(以下,BEAR練習)は,脳卒中を中心とした中枢神経疾患において動的バランス,下肢筋力の改善が報告されている。しかし,他の疾患に対するBEAR練習の有効性はあまり報告されていない。本研究の目的は,軽度のバランス障害を呈した高齢の慢性期脊髄症患者に対するBEAR練習の有効性を検討することである。
【方法】
対象は,1)年齢65歳以上,2)脊髄症を呈して6ヵ月以上,3)歩行が修正自立以上,4)Berg Balance Scale(以下,BBS)46点以上を満たした,慢性期脊髄症患者5例(年齢70±6年,男性4名,術後年数6±4年)とした。練習プロトコルは,BEAR練習を1日3回,計8日間(24回)実施した。1回の練習は,テニスゲーム(前後重心移動課題),スキーゲーム(左右重心移動課題),ロデオゲーム(外乱対処課題)の順で4回ずつ,計12回行い,各ゲーム間での休憩を含め,計40分で実施した。なお,1ゲームの時間は90秒であった。
評価はBBS,Functional Reach Test(以下,FRT),Timed Up and Go Test(以下,TUG),5mタンデム歩行の成功率と速度,下肢筋力をBEAR練習の前後で実施した。下肢筋力は,徒手筋力計ミュータスF-1(アニマ株式会社製)を用いて,股関節屈曲・外転,膝関節屈曲・伸展,足関節背屈・底屈の左右12筋について固定ベルトを用いて測定し,左右差から健側,患側に分類した。評価は同一検者が実施し,各評価項目を2回ずつ測定して,各評価における最良値を評価結果に採用した。
BEAR練習前後の各評価項目の変化について,Wilcoxonの符号付順位和検定を用いて検討した。統計学的解析には,SPSS statics ver.19 for Macを使用し,有意水準は5%未満とした。また,効果量rを算出した。
【結果】
評価結果(前/後,有意確率,効果量)は,FRT(28.5±3.5/31.9±3.4cm,p=0.04,r=-0.91),タンデム歩行の速度(0.26±0.07/0.30±0.07m/s,p=0.04,r=-0.91)は有意差を認めた。一方,BBS(54.0±1.5/55.0±1.1,p=0.41,r=-0.37),TUG(8.4±0.7/8.1±0.6cm,p=0.16,r=-0.63),タンデム歩行の成功率(66.2±11.7/81.3±14.1%,p=0.80,r=-0.78)では有意差を認めなかった。また,健側,患側ともすべての筋で,有意な変化はみられなかった。
【結論】
計8日間,24回のBEAR練習では,FRTとタンデム歩行の速度が改善した。BBS46点以上の軽度バランス障害を呈する高齢の慢性期の脊髄症患者において,BEAR練習は動的バランス能力を改善させる有用な方法であった。
脊髄症患者は神経根症状や脊髄症状により,歩行障害やバランス障害が起こる場合がある。2013年,立ち乗り型移動パーソナルロボットにゲームを組み合わせたBalance Exercise Assist Robot(以下,BEAR,トヨタ自動車株式会社製)が開発された。BEARを用いた練習(以下,BEAR練習)は,脳卒中を中心とした中枢神経疾患において動的バランス,下肢筋力の改善が報告されている。しかし,他の疾患に対するBEAR練習の有効性はあまり報告されていない。本研究の目的は,軽度のバランス障害を呈した高齢の慢性期脊髄症患者に対するBEAR練習の有効性を検討することである。
【方法】
対象は,1)年齢65歳以上,2)脊髄症を呈して6ヵ月以上,3)歩行が修正自立以上,4)Berg Balance Scale(以下,BBS)46点以上を満たした,慢性期脊髄症患者5例(年齢70±6年,男性4名,術後年数6±4年)とした。練習プロトコルは,BEAR練習を1日3回,計8日間(24回)実施した。1回の練習は,テニスゲーム(前後重心移動課題),スキーゲーム(左右重心移動課題),ロデオゲーム(外乱対処課題)の順で4回ずつ,計12回行い,各ゲーム間での休憩を含め,計40分で実施した。なお,1ゲームの時間は90秒であった。
評価はBBS,Functional Reach Test(以下,FRT),Timed Up and Go Test(以下,TUG),5mタンデム歩行の成功率と速度,下肢筋力をBEAR練習の前後で実施した。下肢筋力は,徒手筋力計ミュータスF-1(アニマ株式会社製)を用いて,股関節屈曲・外転,膝関節屈曲・伸展,足関節背屈・底屈の左右12筋について固定ベルトを用いて測定し,左右差から健側,患側に分類した。評価は同一検者が実施し,各評価項目を2回ずつ測定して,各評価における最良値を評価結果に採用した。
BEAR練習前後の各評価項目の変化について,Wilcoxonの符号付順位和検定を用いて検討した。統計学的解析には,SPSS statics ver.19 for Macを使用し,有意水準は5%未満とした。また,効果量rを算出した。
【結果】
評価結果(前/後,有意確率,効果量)は,FRT(28.5±3.5/31.9±3.4cm,p=0.04,r=-0.91),タンデム歩行の速度(0.26±0.07/0.30±0.07m/s,p=0.04,r=-0.91)は有意差を認めた。一方,BBS(54.0±1.5/55.0±1.1,p=0.41,r=-0.37),TUG(8.4±0.7/8.1±0.6cm,p=0.16,r=-0.63),タンデム歩行の成功率(66.2±11.7/81.3±14.1%,p=0.80,r=-0.78)では有意差を認めなかった。また,健側,患側ともすべての筋で,有意な変化はみられなかった。
【結論】
計8日間,24回のBEAR練習では,FRTとタンデム歩行の速度が改善した。BBS46点以上の軽度バランス障害を呈する高齢の慢性期の脊髄症患者において,BEAR練習は動的バランス能力を改善させる有用な方法であった。