[P-SK-05-4] 部分免荷トレッドミルトレーニングと体重免荷歩行器トレーニングの歩行速度と歩行距離の差
機器の使用方法の工夫によりその差が減少したシングルケース
Keywords:部分免荷, 牽引方向, 歩行速度
【はじめに,目的】
脳卒中片麻痺患者の歩行練習量を増加させる方法として,部分免荷式トレッドミルトレーニング(以下,BWSTT)が有効であると報告される。免荷状態の歩行トレーニングを行うその他の方法に,体重免荷式歩行器(以下,BWS歩行器)がある。BWSTTとBWS歩行器による治療比較は,脊髄損傷患者を対象に行われている(Alexeeva,2011)が脳卒中患者での報告はみられない。Alexeevaらの研究では,提供した歩行練習距離は両機器ともに同等と設定されているが,症例によっては困難な場合も考えられる。今回の症例では,導入当初,BWSTTのトレッドミル速度は,BWS歩行器での歩行速度で設定しようとした。しかし,この方法で設定したトレッドミル速度では,本症例は歩行不可能であった。今回,それぞれの機器を用いた場合,歩行速度や歩行距離に違いが得られた症例の経験とその差を減少させるために行った工夫に関する報告を行う。
【方法】
本症例は,径1cmの左被殻出血を呈した60歳代男性である。運動麻痺はBrunnstrom stageで上肢II,手指I,下肢Vと上肢麻痺が優位である。21病日目に,回復期リハビリテーション目的で当院へ転院となった。同日より,自立歩行獲得を目指し歩行練習を開始したが,10m歩行で0.20m/sと低速でしか歩行できなかったため,歩行距離の確保に難渋した。このため,BWS歩行器とBWSTTを導入した。共に訓練期間は4日間とし,手すりは左のみ使用,免荷量は,一般的な設定である30%に設定した。訓練時間は5分間を3セットで,歩行速度は可能な限り速く設定した。“可能な限り”とは,機器上で歩行不能となるまでとした。
【結果】
以下に,BWS歩行器条件,BWSTT条件それぞれの歩行速度(m/s)と歩行練習量(m)の結果を示す。平均歩行速度は0.77±0.04,0.27±0.05,平均練習量は692.33±38.55,241.25±48.34であった。両機器でのトレーニング風景の観察から体幹姿勢の違いが影響していると考え,BWSTTの牽引機器を本症例より後方に設置し後上方へ牽引した状態で,再びトレッドミル速度,歩行距離を確認した。BWSTT後上方牽引条件では,歩行速度が0.56,歩行距離が504となり,BWS歩行器条件と同様の歩行速度と歩行距離が提供可能となった。
【結論】
今回,単一症例ながら,一般的に使用した場合,BWSTTとBWS歩行器の歩行距離や歩行速度に違いがあることを示すことができた。しかし,その差は機器の使用方法として,ハーネスによる牽引方向を変えることで減少させることでできたと考えられた。この結果から,免荷量やトレッドミル速度,手すりの有無に加えて,牽引方向を考慮した設定が重要となる症例がいることを再認識した。
脳卒中片麻痺患者の歩行練習量を増加させる方法として,部分免荷式トレッドミルトレーニング(以下,BWSTT)が有効であると報告される。免荷状態の歩行トレーニングを行うその他の方法に,体重免荷式歩行器(以下,BWS歩行器)がある。BWSTTとBWS歩行器による治療比較は,脊髄損傷患者を対象に行われている(Alexeeva,2011)が脳卒中患者での報告はみられない。Alexeevaらの研究では,提供した歩行練習距離は両機器ともに同等と設定されているが,症例によっては困難な場合も考えられる。今回の症例では,導入当初,BWSTTのトレッドミル速度は,BWS歩行器での歩行速度で設定しようとした。しかし,この方法で設定したトレッドミル速度では,本症例は歩行不可能であった。今回,それぞれの機器を用いた場合,歩行速度や歩行距離に違いが得られた症例の経験とその差を減少させるために行った工夫に関する報告を行う。
【方法】
本症例は,径1cmの左被殻出血を呈した60歳代男性である。運動麻痺はBrunnstrom stageで上肢II,手指I,下肢Vと上肢麻痺が優位である。21病日目に,回復期リハビリテーション目的で当院へ転院となった。同日より,自立歩行獲得を目指し歩行練習を開始したが,10m歩行で0.20m/sと低速でしか歩行できなかったため,歩行距離の確保に難渋した。このため,BWS歩行器とBWSTTを導入した。共に訓練期間は4日間とし,手すりは左のみ使用,免荷量は,一般的な設定である30%に設定した。訓練時間は5分間を3セットで,歩行速度は可能な限り速く設定した。“可能な限り”とは,機器上で歩行不能となるまでとした。
【結果】
以下に,BWS歩行器条件,BWSTT条件それぞれの歩行速度(m/s)と歩行練習量(m)の結果を示す。平均歩行速度は0.77±0.04,0.27±0.05,平均練習量は692.33±38.55,241.25±48.34であった。両機器でのトレーニング風景の観察から体幹姿勢の違いが影響していると考え,BWSTTの牽引機器を本症例より後方に設置し後上方へ牽引した状態で,再びトレッドミル速度,歩行距離を確認した。BWSTT後上方牽引条件では,歩行速度が0.56,歩行距離が504となり,BWS歩行器条件と同様の歩行速度と歩行距離が提供可能となった。
【結論】
今回,単一症例ながら,一般的に使用した場合,BWSTTとBWS歩行器の歩行距離や歩行速度に違いがあることを示すことができた。しかし,その差は機器の使用方法として,ハーネスによる牽引方向を変えることで減少させることでできたと考えられた。この結果から,免荷量やトレッドミル速度,手すりの有無に加えて,牽引方向を考慮した設定が重要となる症例がいることを再認識した。