[P-SK-05-5] 回復期脳卒中患者に対する歩行練習アシスト(GEAR)の適応検討
Keywords:歩行練習アシスト, 回復期, 適応
【はじめに】
当院ではトヨタ自動車が藤田保健衛生大学と共同で開発した歩行練習アシストGait Exercise Assist Robot(GEAR)を導入し,2015年8月より2016年9月末までに18例の試験を終了している。我々はこれまでにGEAR練習が完全片麻痺の歩行改善に有効で機能的弊害が伴わないことを報告した。今回,現在までの症例を追加しGEARの練習効果の再確認や適応について検討を行ったので報告する。
【方法】
回復期脳卒中片麻痺試験終了者18例(監視歩行到達者14例,中途終了4例)を対象とした。対象者は試験開始時に膝折れのリスクのある監視歩行未到達者であり,試験期間中はGEAR練習40分を週5日実施した。
効果検証は,FIM歩行改善率(FIM歩行点数の利得を練習経過週数で除した値)を算出し,監視歩行到達14例から①全14例および②完全麻痺例抽出の6例で,それぞれのGEAR群と一般的な理学療法のみを行った群(対照群)を比較した。その対照群は谷野らの先行研究(2014)を参考にして算出した。その2群間の比較はMann-Whitney U検定を用いた。
適応についての検討は,中止終了含めた18症例のFIM歩行改善率と介入前評価項目で統計処理を行った。介入前評価の項目それぞれは,疾患名と障害側はWilcoxon符号付順位和検定,年齢にはPearsonの積率相関係数,SIAS下肢麻痺・体幹・視空間とFIM理解・記憶はSpearmanの順位相関係数を用いた。それぞれ有意水準は5%未満とした。
【結果】
FIM歩行改善率の比較結果は,対象群との比較で①GEAR14例全例は有意差なく(P=0.14),②GEAR完全麻痺6例は有意差があり(P=0.01),完全麻痺群についてはGEARの優位性が認められた。
適応の検討結果では,疾患名(P=0.03),年齢(r=-0.61,P<0.01),SIAS体幹垂直性(rs=0.66,P<0.01)について有意差を認め,その他の項目に有意差は認めなかった。
【結論】
才藤らは,GEARは重度下肢麻痺のため立脚・遊脚が不十分な状態でも多数歩歩行を安全に成立させ歩行運動の学習を効率化すると述べている。今回も前回に引き続き重度麻痺患者のGEARの有効性を示唆する結果であり,上記設計者らの意図を支持している。また今回の適応検討では,脳梗塞よりは脳出血患者の方が歩行改善率向上は顕著であり,高齢でないことおよび体幹垂直性の保持が影響することが示唆された。疾患は脳梗塞の方がペナンブラの量が少ないこと,高年齢は退行性変化として学習能力低下や全身状態低下を呈しやすいこと,体幹垂直性は両側機能として非麻痺側機能低下を反映することが歩行改善率に影響したと考えられる。歩行改善率の観点でのGEAR適応は,安定した非麻痺側機能や全身状態による運動量の担保と器質的に脳可塑性が担保されていることが重要だと思われる。
当院ではトヨタ自動車が藤田保健衛生大学と共同で開発した歩行練習アシストGait Exercise Assist Robot(GEAR)を導入し,2015年8月より2016年9月末までに18例の試験を終了している。我々はこれまでにGEAR練習が完全片麻痺の歩行改善に有効で機能的弊害が伴わないことを報告した。今回,現在までの症例を追加しGEARの練習効果の再確認や適応について検討を行ったので報告する。
【方法】
回復期脳卒中片麻痺試験終了者18例(監視歩行到達者14例,中途終了4例)を対象とした。対象者は試験開始時に膝折れのリスクのある監視歩行未到達者であり,試験期間中はGEAR練習40分を週5日実施した。
効果検証は,FIM歩行改善率(FIM歩行点数の利得を練習経過週数で除した値)を算出し,監視歩行到達14例から①全14例および②完全麻痺例抽出の6例で,それぞれのGEAR群と一般的な理学療法のみを行った群(対照群)を比較した。その対照群は谷野らの先行研究(2014)を参考にして算出した。その2群間の比較はMann-Whitney U検定を用いた。
適応についての検討は,中止終了含めた18症例のFIM歩行改善率と介入前評価項目で統計処理を行った。介入前評価の項目それぞれは,疾患名と障害側はWilcoxon符号付順位和検定,年齢にはPearsonの積率相関係数,SIAS下肢麻痺・体幹・視空間とFIM理解・記憶はSpearmanの順位相関係数を用いた。それぞれ有意水準は5%未満とした。
【結果】
FIM歩行改善率の比較結果は,対象群との比較で①GEAR14例全例は有意差なく(P=0.14),②GEAR完全麻痺6例は有意差があり(P=0.01),完全麻痺群についてはGEARの優位性が認められた。
適応の検討結果では,疾患名(P=0.03),年齢(r=-0.61,P<0.01),SIAS体幹垂直性(rs=0.66,P<0.01)について有意差を認め,その他の項目に有意差は認めなかった。
【結論】
才藤らは,GEARは重度下肢麻痺のため立脚・遊脚が不十分な状態でも多数歩歩行を安全に成立させ歩行運動の学習を効率化すると述べている。今回も前回に引き続き重度麻痺患者のGEARの有効性を示唆する結果であり,上記設計者らの意図を支持している。また今回の適応検討では,脳梗塞よりは脳出血患者の方が歩行改善率向上は顕著であり,高齢でないことおよび体幹垂直性の保持が影響することが示唆された。疾患は脳梗塞の方がペナンブラの量が少ないこと,高年齢は退行性変化として学習能力低下や全身状態低下を呈しやすいこと,体幹垂直性は両側機能として非麻痺側機能低下を反映することが歩行改善率に影響したと考えられる。歩行改善率の観点でのGEAR適応は,安定した非麻痺側機能や全身状態による運動量の担保と器質的に脳可塑性が担保されていることが重要だと思われる。