第52回日本理学療法学術大会

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日本支援工学理学療法学会 » ポスター発表

[P-SK-07] ポスター(支援工学)P07

2017年5月14日(日) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本支援工学理学療法学会

[P-SK-07-3] 車椅子使用高齢者では背もたれ傾斜中の臀部ずれ力軽減を目的とした背もたれ用シートカバーの効果は減少する

小原 謙一1, 高橋 尚1, 藤田 大介1, 大坂 裕1, 末廣 忠延1, 樋上 紘子2, 小畠 敬太郎2 (1.川崎医療福祉大学医療技術学部リハビリテーション学科, 2.小畠病院)

キーワード:高齢者, 車椅子, 背もたれ

【はじめに,目的】演者らは,背もたれ傾斜中の臀部ずれ力軽減を目的とした背もたれ用摩擦軽減シートカバーを開発し,その効果検証を健常者及び車椅子使用高齢者(以下,高齢者)を対象として実施した。その結果,いずれの対象においてもある程度の臀部ずれ力軽減効果は認められた。しかしながら,本シートカバーの主な使用対象である高齢者に対してより高い軽減効果を得るためにはシートカバーの改良点を検討する必要がある。よって本研究では,健常者と高齢者における本シートカバーの臀部ずれ力軽減効果を比較検討することで,シートカバーの改良点を検討する一助とすることを目的とした。


【方法】某医療機関に入院中で院内の移動に車椅子を使用している高齢者11人(男性7人,女性4人,83.8±9.4歳,要介護度1-5)及び健常男性18人(20.8±1.1歳)を対象とした。電動リクライニング式実験用椅子の座面上に床反力計(40×40cm,サンプリング周波数100 Hz)を置き,その上に単層ウレタンクッションを設置した。測定開始肢位は,実験用椅子上での背もたれに身体背面が接した安楽座位とし,臀部ずれ力を測定した。加えて,測定開始肢位における体幹傾斜角(度)(鉛直軸-肩峰と大転子を結ぶ線のなす角)をレベル角度計にて測定した。各対象者には綿100%の実験用衣類を着用させ,測定中はなるべく動かないように指示した。背もたれの傾斜は,鉛直線より10度後傾位(安楽座位期)から開始し,40度後傾位まで後傾させた(後傾位期)。その後,背もたれを起こしていき,10度後傾位(完了期)まで戻るように操作した。臀部ずれ力は,各対象者の体重で除して正規化した。シートカバーの臀部ずれ力軽減効果の指標として,後傾位期及び完了期の値を安楽座位期の値で除して正規化した臀部ずれ力変化率(%)を算出した。なお,後傾位~完了期にかけて対象者の体動のために,臀部ずれ力の変動は解除されてしまうため,後傾位~完了期の最大値を完了期の臀部ずれ力として採用した。統計学的解析としてShapiro-Wilk検定を用い,正規性の確認を行った。正規性を認めた場合はnon paired t-testを,認めなかった場合はMann-Whitney検定を用いて両群の臀部ずれ力変化率と体幹傾斜角を比較した(p<0.05)。


【結果】[高齢者,健常者]の順に示す。臀部ずれ力変化率[平均値±SD]は,後傾位期[52.3±13.7,77.1±19.1],完了期[168.5±49.9,139.5±15.3]であり,高齢者は健常者と比較して後傾位期で有意に低値を示し,完了期で有意に高値を示した。体幹傾斜角[中央値(四分位範囲)]は[24(21-24),16(16-20)]であり,高齢者が健常者よりも有意に高値を示した。


【結論】本結果から,より大きく体幹が後傾していた高齢者では,完了期における本シートカバーの臀部ずれ力軽減効果は,健常者よりも減少することが示唆された。今後は健常者と比較した高齢者の座位姿勢の特徴を考慮してシートカバーの改良点を検討する必要がある。