The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本小児理学療法学会 » ポスター発表

[P-SN-01] ポスター(小児)P01

Fri. May 12, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本小児理学療法学会

[P-SN-01-4] NICU長期入院後,積極的な立位練習で機能が大きく向上した1例

河中 誉真, 西野 紀子, 海瀬 一典, 福原 陽, 中野 里佳, 佐々木 陽子, 濱田 浩子, 南 昌樹 (大阪発達総合療育センターあさしお園)

Keywords:NICU長期入院, 立位練習, GMFM

【はじめに 目的】

出生から早期に抗重力活動を経験できないことは,粗大運動機能の発達を大きく阻害する。今回,NICUに長期入院後,通園施設に移行して週2から4回の理学療法,作業療法,言語聴覚療法(以下セラピー)を約2年間受け,大きく機能向上した1例について報告する。

【方法】

症例は4歳女児。診断は低酸素性脳症,声帯麻痺。GMFCSレベルV。経鼻チューブ使用。在胎27週,体重954g,心停止12分,Apgar Score 0で出生。生後40日目に人工呼吸器離脱後もほぼ24時間持続陽圧呼吸療法が必要で,NICUに10ヵ月,GCUに1歳5ヵ月まで長期入院していた。1歳2ヵ月時に気管切開を受け,呼吸管理を離れた。1歳5ヵ月から約3ヵ月間当センターに転院し在宅移行支援にて週5回の集中セラピーを受け,在宅に移行した。その後当通園施設へ通っている。

運動評価は,66-item Gross Motor Function Measure(以下GMFM66)とROM-Tを行った。通園開始1歳9ヵ月時のGMFM66スコアは12.1±3.3。GMFCSレベルV2歳のReference Percentilesでは10~15thに位置した。本児は側臥位が多く,胸郭は前後径が長く胸椎が屈曲し,左肘関節-70°の伸展制限がすでにあった。弱視,遠視と診断され臥位で物に手を伸ばすことは少なく,手指で床面を探って遊んでいた。下肢は痙性や関節可動域制限は無く,側臥位で器用に足底を接地させ床面を蹴っていた。

セラピーは,立位で上肢,体幹に比べ運動性の高い下肢から抗重力活動を高める方針で取り組んだ。当初,立位で下肢の支持は乏しく,頭部を前方の机にもたれさせていた。そこで,立位で積極的に踵への荷重を行い,下肢の支持感覚を強くアシストしていった。2歳後半には,下肢,体幹の抗重力活動が高まり,頭部が拳上できるようになった。3歳時には治療場面で胸椎部がわずかに伸展するようになり,胸椎部の伸展活動と合わせたリーチ練習を行うことができた。また,歩行器歩行を促すため座面付き歩行器を傾斜2度の下り坂に設定し練習した。

【結果】

4歳時には床面座位保持が10秒程度,左上肢のリーチが増え左肘の伸展可動域は-10°と改善された。さらに通園施設内を歩行器で移動が可能となった。GMFM66スコアは26±2に向上しGMFCSレベルV4歳のReference Percentilesでは60~65thに位置した。

【結論】

GMFM66スコアが有意に向上し,Reference Percentilesが約2年間で50th変化したことは,GMFCSレベルVの年間変化の平均が±3.6thのため,粗大運動機能が大きく向上したと言える。その要因は,粗大運動機能の阻害因子が低酸素性脳症の影響よりも生後長期の呼吸管理により抗重力活動が発達する機会が得られなかったことが大きかったと考える。そのため,セラピーによる積極的な立位経験により,機能の高かった下肢から抗重力活動が高まり,上部体幹の伸展活動とリーチ活動まで結びついたと考える。また,歩行器歩行が十分行える通園環境が本児の機能向上につながったと考える。