[P-SN-02-2] 通所介護事業所における未成年脳性麻痺者に対する就労支援の試み
―理学療法士が事前実務評価を行った事例を通して―
Keywords:未成年脳性麻痺者, 就労支援, 事前実務評価
【はじめに,目的】
2015年の介護報酬改定では,『活動と参加に焦点を当てたリハビリテーションの推進』が重点項目の一つに挙げられているが,脳性麻痺者においてもその意義は大きい。しかし脳性麻痺者の就労や社会参加については,脳性麻痺リハビリテーションガイドラインにおいて推奨はされているものの報告数は少なく,グレードはC1となっている。今回,当社通所介護事業所(以下,デイサービス)において介護補助として就労を希望された未成年脳性麻痺者に対し,理学療法士(以下,PT)が事前実務評価を実施し,成人前の就労経験が今後の就労支援に及ぼす影響に着目した聞き取り調査を実施したので,考察を加えて報告する。
【方法】
デイサービスに就労希望の軽度アテトーゼ型脳性麻痺を呈する15歳の男子高校生1名に対し,就労前に3日間の職業体験期間を設置し,PTが身体機能・知能等の検査等も含めた実務遂行能力評価を実施した。評価結果より,就労基準を満たし且つ遂行可能な実務①事務作業②利用者との会話③配膳業務④利用者への体操指導を選択した。就労は夏季休暇中の3週間とし,週3日,1日3時間勤務とした。また,就労最終日の1週後に本人・家族からの聞き取り調査を実施した。調査内容は,1.就労して良かった事,2.就労後の心境等の変化とした。
【結果】
実務遂行能力評価は,主に肩甲帯周囲筋と腰背部筋の筋力低下はあるものの粗大筋力4,下肢深部腱反射亢進,MMSE:28/30点,TMT-A:68秒,TMT-B:85秒,FIM:121/126点で日常生活は自立していた。実務においては,①,②は可能,③と④については,精神的緊張から上肢失調症状と表出困難が生じ困難であった。そこでスタッフと共に配膳および体操練習を行い,就労8日目に遂行可能となった。聞き取り調査においては,本人から「出来る事と出来ない事が分かった」。人前で発声する際に「相手が聞き取れないと思うと喉が詰まり声が出しにくい事が分かって良かった」。「また働きたい」という発言を得た。また,家族からは,「これまで家庭内の配膳等の家事において,全体を見渡す,自分で判断する,時間を配分する等が困難であったが,就労後は改善された。」という感想を得た。
【結論】
未成年の職業体験は,早い段階から自己の課題の把握や作業能力に対する気付きが得られ,就労に対する実感やイメージを持つことに繋がるのではないかと考える。また,理学療法士の実務評価は,リスク管理,具体的な問題や課題の把握およびその解決にも役立つ事から,今後周囲の支援者や就労支援機関等に対し,的確な情報提供および連携が可能になると思われた。今回の取り組みは,脳性麻痺者の就労に対する自己効力感を高めると共に,理学療法士が関わる就労支援の新たな可能性となるのではないかと考える。
2015年の介護報酬改定では,『活動と参加に焦点を当てたリハビリテーションの推進』が重点項目の一つに挙げられているが,脳性麻痺者においてもその意義は大きい。しかし脳性麻痺者の就労や社会参加については,脳性麻痺リハビリテーションガイドラインにおいて推奨はされているものの報告数は少なく,グレードはC1となっている。今回,当社通所介護事業所(以下,デイサービス)において介護補助として就労を希望された未成年脳性麻痺者に対し,理学療法士(以下,PT)が事前実務評価を実施し,成人前の就労経験が今後の就労支援に及ぼす影響に着目した聞き取り調査を実施したので,考察を加えて報告する。
【方法】
デイサービスに就労希望の軽度アテトーゼ型脳性麻痺を呈する15歳の男子高校生1名に対し,就労前に3日間の職業体験期間を設置し,PTが身体機能・知能等の検査等も含めた実務遂行能力評価を実施した。評価結果より,就労基準を満たし且つ遂行可能な実務①事務作業②利用者との会話③配膳業務④利用者への体操指導を選択した。就労は夏季休暇中の3週間とし,週3日,1日3時間勤務とした。また,就労最終日の1週後に本人・家族からの聞き取り調査を実施した。調査内容は,1.就労して良かった事,2.就労後の心境等の変化とした。
【結果】
実務遂行能力評価は,主に肩甲帯周囲筋と腰背部筋の筋力低下はあるものの粗大筋力4,下肢深部腱反射亢進,MMSE:28/30点,TMT-A:68秒,TMT-B:85秒,FIM:121/126点で日常生活は自立していた。実務においては,①,②は可能,③と④については,精神的緊張から上肢失調症状と表出困難が生じ困難であった。そこでスタッフと共に配膳および体操練習を行い,就労8日目に遂行可能となった。聞き取り調査においては,本人から「出来る事と出来ない事が分かった」。人前で発声する際に「相手が聞き取れないと思うと喉が詰まり声が出しにくい事が分かって良かった」。「また働きたい」という発言を得た。また,家族からは,「これまで家庭内の配膳等の家事において,全体を見渡す,自分で判断する,時間を配分する等が困難であったが,就労後は改善された。」という感想を得た。
【結論】
未成年の職業体験は,早い段階から自己の課題の把握や作業能力に対する気付きが得られ,就労に対する実感やイメージを持つことに繋がるのではないかと考える。また,理学療法士の実務評価は,リスク管理,具体的な問題や課題の把握およびその解決にも役立つ事から,今後周囲の支援者や就労支援機関等に対し,的確な情報提供および連携が可能になると思われた。今回の取り組みは,脳性麻痺者の就労に対する自己効力感を高めると共に,理学療法士が関わる就労支援の新たな可能性となるのではないかと考える。