第52回日本理学療法学術大会

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日本小児理学療法学会 » ポスター発表

[P-SN-04] ポスター(小児)P04

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本小児理学療法学会

[P-SN-04-1] 療育センターの理学療法士が障害児の母親に与える影響

佐伯 香菜1,2, 隆島 研吾1 (1.神奈川県立保健福祉大学保健福祉学研究科, 2.横須賀市療育相談センター)

キーワード:母親, 療育, 理学療法士

【はじめに,目的】我が国では,昭和17年に高木憲次氏によって『療育』の概念が提示され障害児の通園施設が整備されてきた。今日の療育システムでは児童発達支援センターがその中核を担い,障害児が地域で療育を受けられる環境作りが進められている。療育センターにおける理学療法士(以下,PT)の研究は主に児の運動機能に関する報告が主であり,障害児の母親に対する関わりについての報告は少ない。また,重症心身障害児や発達障害児の母親を対象とした研究が多く,自力で移動が出来る運動レベルの児の母親についての研究はみられない。そこで本研究では,療育センターにおけるPTが障害児の母親の心理変化に与える影響を明らかにすることを目的とした。

【方法】対象は,脳性麻痺の診断を受けた後療育センターに通い,小学校に就学した児のうち,GMFCSレベルIIまたはIIIの状態を呈する児の母親5名とした。調査項目は,基本的情報の聴取と,児の年齢進行に応じた母親の不安や困りごとに関する面接を行った。面接はインタビューガイドに沿った半構造化面接を行い,『療育センターで過ごした6年間』を振り返る中で,母親の心理変化のプロセスを調査した。面接はICレコーダーに録音を行い,データから逐語録を作成し修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて質的に分析を行った。

【結果】分析により,29の「概念」,11の<サブカテゴリ>3の≪カテゴリ≫が抽出された。概念図より障害児の母親はまず「不安ともがき」「恐れ」等の<漠然とした不安>を抱え,母親同士の<ピアの力>やPTの関わりによる<PTの存在>等により安心を得ていた。また成長とともに新たに「現実との直面」や「焦り」などの不安が生じ,これに対しても<ピアの力>や<PTの存在>に加えて,「親子通園という安心感」等の<療育センターでの関わり>が安心につながっていた。卒園に向けては,<新たな環境への不安><今後に向けた不安>などが現れていた。また,常に「きょうだいへの申し訳なさ」や「私への支援の必要性」等の<私へのケア>,「親としての責任」「私がもっと頑張れたら」等の<自責の念>にも苛まれている実態もあった。このような中,<PTの存在>に含まれる「PTは良い聞き役」「気軽に相談できる安心」等から,PTが児の現状を伝えていくことで母親の中で一つずつ整理が出来るようになり,視野を広げる手助けとなる役割が考えられた。その場合,PTは母親の問いかけに丁寧に対応し,否定せずに傾聴しながら現実とつなぎ合わせていくことが重要であった。そして,日常における専門職の声掛けや言葉遣いは,母親の心理変化に大きく影響することが考えられた。

【結論】母親は常に変わりゆく不安と自責の念にあり,母親が不安を受け入れながら,障害をもった子とともに成長していけるようにサポートしていくことが,療育センターにおけるPTに求められていることであると考えられた。