[P-SN-05-4] 報酬を用いた運動学習課題において背景音楽が与える影響の検討
Keywords:運動学習, 音楽, 報酬
【はじめに,目的】
運動学習は中枢神経疾患障害に対する運動機能改善の重要な手段であり,近年,運動学習の動機付けに影響する報酬の重要性が指摘されている。例えば,仮想コインを報酬として用いて運動学習を行わせた群はコントロール群と比較して学習効果が長期間持続することが知られている。これは報酬による快感情が辺縁系を賦活し長期記憶に関与した結果であると考えられる。
一方,快感情を引き出す可能性があるものとして音楽が知られており,感情が曲調に自然と同期する効果があるとされる。しかし報酬を用いた運動学習に音楽が与える影響についての報告はない。
本研究の目的は,音楽を伴って報酬を与えることにより快感情を高めることが運動学習課題の記憶保持に与える影響について検証することとした。
【方法】
対象は健常成人21名(男性11名 女性10名 年齢22.3±1.5歳)とした。被験者を7名ずつ無作為に,音楽を聞かせながら報酬を与える群(音楽群),報酬のみ与える群(報酬群),及び報酬を与えない無報酬群に分けた。
課題動作は,非利き足をスケートボードに乗せ利き足で床を蹴り3.8m先のゴールライン上に止めることを目標とした。全群において初回測定後練習を15回行わせた。練習試行直後に測定を1回行い,この測定日から2週間後と4週間後に再度同様の課題を行わせた。全試行でスケートボードとゴールラインの距離(誤差距離)を被験者に示し,音楽群と報酬群ではこの距離が近いほど多くのコインを与えた。また,音楽群では練習15回において背景音楽を流し,課題後に音楽による感情の変化を確認した。課題において利き足の運動力学的特徴を知るため,AMTI社製床反力計を用いて蹴り出しにおける前方分力のピーク値(床反力Peak値)を測定した。
得られたデータを基に,練習中最もゴールラインに近づいた時の誤差距離と床反力Peak値を0とし,各試行における値をその差の絶対値として校正した。練習試行15回の結果は5回ずつ平均して練習初期,練習中期,練習後期とし,各群の初回試行と練習3相の変化を二元配置分散分析により比較した。次に,練習後の変化を練習直後,2週間後,4週間後に対する二元配置分散分析により検討した。交互作用がある場合には,Bonferroniによる多重比較を使用し,全ての統計学的有意確率は5%未満とした。
【結果】
音楽群において音楽を快刺激と感じたものは7名中6名いた。誤差距離や床反力peak値は練習による有意な減少を示したが群間の差は認めなかった。練習後の変化として誤差距離では群間差は認めなかったが,床反力peak値では群間における有意な交互作用を認め,無報酬群のみ2週間後に有意に増加した。また2週間の時点で音楽群が無報酬群より有意に低値を示した。
【結論】
本研究の結果,運動学習における報酬に伴う学習効果の持続が認められた。また音楽群では誤差が低値を示しており,学習効果に影響を与えうる可能性が示唆された。
運動学習は中枢神経疾患障害に対する運動機能改善の重要な手段であり,近年,運動学習の動機付けに影響する報酬の重要性が指摘されている。例えば,仮想コインを報酬として用いて運動学習を行わせた群はコントロール群と比較して学習効果が長期間持続することが知られている。これは報酬による快感情が辺縁系を賦活し長期記憶に関与した結果であると考えられる。
一方,快感情を引き出す可能性があるものとして音楽が知られており,感情が曲調に自然と同期する効果があるとされる。しかし報酬を用いた運動学習に音楽が与える影響についての報告はない。
本研究の目的は,音楽を伴って報酬を与えることにより快感情を高めることが運動学習課題の記憶保持に与える影響について検証することとした。
【方法】
対象は健常成人21名(男性11名 女性10名 年齢22.3±1.5歳)とした。被験者を7名ずつ無作為に,音楽を聞かせながら報酬を与える群(音楽群),報酬のみ与える群(報酬群),及び報酬を与えない無報酬群に分けた。
課題動作は,非利き足をスケートボードに乗せ利き足で床を蹴り3.8m先のゴールライン上に止めることを目標とした。全群において初回測定後練習を15回行わせた。練習試行直後に測定を1回行い,この測定日から2週間後と4週間後に再度同様の課題を行わせた。全試行でスケートボードとゴールラインの距離(誤差距離)を被験者に示し,音楽群と報酬群ではこの距離が近いほど多くのコインを与えた。また,音楽群では練習15回において背景音楽を流し,課題後に音楽による感情の変化を確認した。課題において利き足の運動力学的特徴を知るため,AMTI社製床反力計を用いて蹴り出しにおける前方分力のピーク値(床反力Peak値)を測定した。
得られたデータを基に,練習中最もゴールラインに近づいた時の誤差距離と床反力Peak値を0とし,各試行における値をその差の絶対値として校正した。練習試行15回の結果は5回ずつ平均して練習初期,練習中期,練習後期とし,各群の初回試行と練習3相の変化を二元配置分散分析により比較した。次に,練習後の変化を練習直後,2週間後,4週間後に対する二元配置分散分析により検討した。交互作用がある場合には,Bonferroniによる多重比較を使用し,全ての統計学的有意確率は5%未満とした。
【結果】
音楽群において音楽を快刺激と感じたものは7名中6名いた。誤差距離や床反力peak値は練習による有意な減少を示したが群間の差は認めなかった。練習後の変化として誤差距離では群間差は認めなかったが,床反力peak値では群間における有意な交互作用を認め,無報酬群のみ2週間後に有意に増加した。また2週間の時点で音楽群が無報酬群より有意に低値を示した。
【結論】
本研究の結果,運動学習における報酬に伴う学習効果の持続が認められた。また音楽群では誤差が低値を示しており,学習効果に影響を与えうる可能性が示唆された。