The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本小児理学療法学会 » ポスター発表

[P-SN-06] ポスター(小児)P06

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本小児理学療法学会

[P-SN-06-2] 向老期症例におけるズボンの上げ下ろし動作の介助量軽減を目指して
幼児期に日本脳炎後遺症を残した重症心身障がい者の一例

菊次 幸平, 井寺 絵里佳, 迫 洋平, 髙嶋 美和 (柳川療育センター)

Keywords:日本脳炎後遺症, 足底板, 粗大筋力

【はじめに,目的】日本脳炎は,発病後,意識障がいやけいれんなど重篤な症状を呈し,後遺症を残す事が多いウイルス性疾患である。発達期における運動機能向上を目的とした理学療法報告は多いが,青年期以降の報告は少ない。今回の目的は向老期症例に対する1年6ヶ月の理学療法計画とその実施について報告することである。【方法】1歳8ヶ月時に日本脳炎後遺症による四肢麻痺と診断された60歳代男性である。1年6ヶ月前の運動能力は手すりを使用した立位は可能だが,骨盤後傾し,右足関節は外反,左足関節は内反変形を強めていた(片手支持での立位は1分49秒)。粗大筋力は,新徒手筋力検査法(第8版)小児の筋力テストを参考に実施し「支持されながら身をかがめ低くコントロールする」項目を,トイレの手すりを把持し,膝下のズボンを引き上げるという日常生活動作の中で観察・評価した。片手支持した立位では他側上肢を動かす際に体幹の動揺を強め重心を低くコントロールすることが難しかった。理学療法評価から両足部の支持性を高める事ができれば,上記の粗大運動項目の必要な筋活動パターンとして記載されている殿筋,大腿四頭筋,足底屈筋の離心性収縮を促す事ができ,ズボンの上げ下ろし動作の獲得に繋がるのではないかと考えた。理学療法頻度は週3回,各3単位実施。最初の2ヶ月は骨盤の前後傾運動と両足底への荷重を目的に,端座位姿勢から前下方へのリーチ練習を行った。しかし両足部の変形から支持面が狭く目的の運動に繋がらなかった。その為,足関節変形に対して足底板を作成し,導入した。これによって前下方リーチ動作ができるようになり,8ヶ月時からは階段昇降練習の中で,段差にボールを置きしゃがみ込んでつかむ課題を追加し,身体重心を低くコントロールする動作を促した。同時にトイレ動作時のズボンの上げ下ろし動作練習も行った。【結果】1年6ヶ月後,片手支持での立位は,足底板を使用し7分14秒へと延長し,トイレ動作時に自ら膝下のズボンを引き上げる動作が監視レベルで可能になった。【結論】目標とする粗大運動の筋活動スペクトルとして,身体全体の重量が重力との関係で離心的コントロール下におかれなければならないことが報告されている。今回,足底板の導入が,前下方へのリーチ動作,階段昇降の中でしゃがみ込んでつかむ課題を可能とし,ズボンを引き上げる動作の獲得に繋がったと考える。また加齢に伴う筋力低下について駒田らは「脚伸展,屈曲筋力ともに,男性では60歳代より有意な低下を示す」と報告している。今回,下肢筋力の増強がADL能力の改善に繋がっていることから,向老期症例に対する二次障がいの管理を目的とした理学療法計画には,粗大筋力テストを一つの指標とすることは重要であると考えられる。今回の結果は幼児期に運動能力障がいを呈した老年期症例の二次障がい予防に対する理学療法計画立案の一助となりうる。