[P-SN-06-3] 在宅で褥瘡治療を望んだ脳性麻痺者に対する理学療法士の役割
Keywords:二次障害, 訪問リハビリテーション, 多職種連携
【目的,はじめに】
頸椎症性頸髄症(以下,頸髄症)の悪化で褥瘡を併発,臥床生活を余儀なくされた脳性麻痺者の訪問リハビリテーションを実施した。褥瘡が悪化しているにもかかわらず外出を強く望む本人の想いを尊重し,在宅生活を継続しながら治癒に至った経過を報告する。
【方法】
症例は40歳代男性,アテトーゼ型脳性麻痺。幼少期から療育を受け,自己統制が継続した課題であった。ADL全介助。2年前にC3/4レベルの頸髄症を発症。文字盤での意思疎通は可能でヘルパーを利用してグループホームで生活していた。主な姿勢は骨盤と体幹が後傾位の車椅子座位(以下,後傾座位)で,平日は生活介護事業所,週末は約4時間の外出を楽しんでいた。
X年3月,頸髄症悪化により,仙骨部に真皮を越える褥瘡発症,週3回の訪問看護で処置を受けたが,除圧対策しないまま本人の希望によりヘルパーと外出を続けた。4か月後,褥瘡が悪化し入院が必要となったが,本人は在宅生活継続を望んだ。そこで,本人合意の上,絶対安静下で週6回の訪問看護が開始された。3日目でDESIGN-RⓇの合計点は11から8に減少し除圧効果を認めたが,外出制限のストレスで自身の手を噛む自傷行為が生じた。早急に外出を再開せざるを得ず,車椅子座位の除圧対策を目的としたリハが開始となった。まず,仙骨部の除圧ができ,下肢の伸筋スパズムが生じにくい前傾座位を検討した。携帯型接触圧力測定器パームQで測定すると,後傾座位の仙骨部の最大接触圧力(以下,圧力)は64.1mmHg,前傾座位は26.9mmHgで除圧の有効性を確認した。すると段階を経ずに前傾座位で3時間の外出が敢行された。褥瘡は悪化しなかったが,事態を収拾すべく多職種会議が開催された。安静によるヘルパー利用増加で自己負担額が増し,早急に元の生活に戻す必要があることを確認した。前傾座位での除圧は定着したので,文字盤や食事で必要とされた後傾座位を見直した。後傾座位は後頸部短縮につながり頸髄症を悪化させ,仙骨部の痛覚脱失,下肢の伸筋スパズムは臀部の擦れを助長するが痛覚脱失で除圧を忘れる悪循環になっていた。発生要因とリスクを本人と確認,座面を工夫して後傾座位を保障しつつ外出頻度を増やした。看護師と褥瘡の状態を確認,ヘルパーによる除圧方法の統一,グループホーム世話人に情報集約した。
【結果】
8月,DESIGN-RⓇの合計点は0,生活介護事業所と外出を再開,半年後も再発していない。
【結論】
本人が望む外出を叶えつつ褥瘡を治療するには,除圧対策と情報共有,そして,本人の自己身体の変化への気付きと理解が必要であった。理学療法士は,客観的評価に基づいた具体的除圧対策を提案し,生活場面での折衝を図った。本人と多職種と協議して,対策を常に調整し,適宜再評価を行ったことで,姿勢と状態を可視化し,褥瘡の治癒に至った。
頸椎症性頸髄症(以下,頸髄症)の悪化で褥瘡を併発,臥床生活を余儀なくされた脳性麻痺者の訪問リハビリテーションを実施した。褥瘡が悪化しているにもかかわらず外出を強く望む本人の想いを尊重し,在宅生活を継続しながら治癒に至った経過を報告する。
【方法】
症例は40歳代男性,アテトーゼ型脳性麻痺。幼少期から療育を受け,自己統制が継続した課題であった。ADL全介助。2年前にC3/4レベルの頸髄症を発症。文字盤での意思疎通は可能でヘルパーを利用してグループホームで生活していた。主な姿勢は骨盤と体幹が後傾位の車椅子座位(以下,後傾座位)で,平日は生活介護事業所,週末は約4時間の外出を楽しんでいた。
X年3月,頸髄症悪化により,仙骨部に真皮を越える褥瘡発症,週3回の訪問看護で処置を受けたが,除圧対策しないまま本人の希望によりヘルパーと外出を続けた。4か月後,褥瘡が悪化し入院が必要となったが,本人は在宅生活継続を望んだ。そこで,本人合意の上,絶対安静下で週6回の訪問看護が開始された。3日目でDESIGN-RⓇの合計点は11から8に減少し除圧効果を認めたが,外出制限のストレスで自身の手を噛む自傷行為が生じた。早急に外出を再開せざるを得ず,車椅子座位の除圧対策を目的としたリハが開始となった。まず,仙骨部の除圧ができ,下肢の伸筋スパズムが生じにくい前傾座位を検討した。携帯型接触圧力測定器パームQで測定すると,後傾座位の仙骨部の最大接触圧力(以下,圧力)は64.1mmHg,前傾座位は26.9mmHgで除圧の有効性を確認した。すると段階を経ずに前傾座位で3時間の外出が敢行された。褥瘡は悪化しなかったが,事態を収拾すべく多職種会議が開催された。安静によるヘルパー利用増加で自己負担額が増し,早急に元の生活に戻す必要があることを確認した。前傾座位での除圧は定着したので,文字盤や食事で必要とされた後傾座位を見直した。後傾座位は後頸部短縮につながり頸髄症を悪化させ,仙骨部の痛覚脱失,下肢の伸筋スパズムは臀部の擦れを助長するが痛覚脱失で除圧を忘れる悪循環になっていた。発生要因とリスクを本人と確認,座面を工夫して後傾座位を保障しつつ外出頻度を増やした。看護師と褥瘡の状態を確認,ヘルパーによる除圧方法の統一,グループホーム世話人に情報集約した。
【結果】
8月,DESIGN-RⓇの合計点は0,生活介護事業所と外出を再開,半年後も再発していない。
【結論】
本人が望む外出を叶えつつ褥瘡を治療するには,除圧対策と情報共有,そして,本人の自己身体の変化への気付きと理解が必要であった。理学療法士は,客観的評価に基づいた具体的除圧対策を提案し,生活場面での折衝を図った。本人と多職種と協議して,対策を常に調整し,適宜再評価を行ったことで,姿勢と状態を可視化し,褥瘡の治癒に至った。