[P-SN-06-4] 自宅での長期臥床経験を持つ脳性麻痺者における座位姿勢への適応
座位姿勢がもたらす視覚情報の変化への適応を示した一症例
Keywords:長期臥床経験, 座位姿勢, 3次元空間への適応
【はじめに,目的】
近年,脳性麻痺者の高齢化と病態像の多様化が問題とされている。多様な病態像に対して,個別に評価・治療するためには生活歴に伴う運動感覚経験の違いについて考慮する必要がある。しかし,これまでに脳性麻痺児・者において生活歴が及ぼす影響については報告がなされていない。本症例は,49年に渡る自宅での長期臥床経験を持ち,座位保持装置を利用して新たに経験する座位姿勢への適応過程で明確な変化を示したため,ここに報告する。
【方法】
症例は,50歳の脳性麻痺男性であり,当施設入所前は,原因詳細は不明であるが自宅で49年にわたる長期間の臥床状態にあった。評価は,臥位姿勢と座位保持装置を利用した座位姿勢(背座角60度)の2条件を設定し,2週間の期間を設けて2度(導入時・適応時)以下の項目を測定するとともに,動作全体を観察し身体の活動を評価した。呼吸循環状態について,SpO2,HRおよび血圧を測定した。また,重症心身障害者の生活機能評価であるLife Inventory to Functional Evaluation(以下LIFE)を利用し,Part2 A/C/E,Part3 A/Bを抽出して運動機能及び目的に対する注意機能の変化を評価した。評価期間の介入については,週に1度の頻度で40分程度,2次元空間から3次元空間への移行を狙いとして前方への視覚誘導を中心として理学療法介入を行った。
【結果】
呼吸循環状態においては,著明な変化は認められず,安全に実施可能であった。座位姿勢での頭頚部の運動について,導入時では座位保持装置上にて常時頸部は伸展位を取り,左右への回旋運動は見られず,注視は上方のみに固定されていたが,適応時では頸部の伸展運動が減少するとともに左右への回旋運動が生じたことで,注視方向が前方及び左右方向へと増加していた。LIFEについては,「背臥位における頭部の運動(Part2 A-18)」及び「目的を持った聴覚経験とその応用Part3 A-34」」においてスコアの改善が見られ,聴覚・視覚情報に対して選択的に注意を向け,追視に伴う頸部の自発運動が新たに認められた。
【結論】
長期臥床経験による運動感覚経験の減少は,発達過程における運動の自由度を減少させる可能性が示唆された一方で,高齢の重症心身障害者であっても,短期間の介入により改善を示す部分がある可能性が示唆され,在宅における座位保持装置を利用した座位姿勢保持の重要性が考えられた。
近年,脳性麻痺者の高齢化と病態像の多様化が問題とされている。多様な病態像に対して,個別に評価・治療するためには生活歴に伴う運動感覚経験の違いについて考慮する必要がある。しかし,これまでに脳性麻痺児・者において生活歴が及ぼす影響については報告がなされていない。本症例は,49年に渡る自宅での長期臥床経験を持ち,座位保持装置を利用して新たに経験する座位姿勢への適応過程で明確な変化を示したため,ここに報告する。
【方法】
症例は,50歳の脳性麻痺男性であり,当施設入所前は,原因詳細は不明であるが自宅で49年にわたる長期間の臥床状態にあった。評価は,臥位姿勢と座位保持装置を利用した座位姿勢(背座角60度)の2条件を設定し,2週間の期間を設けて2度(導入時・適応時)以下の項目を測定するとともに,動作全体を観察し身体の活動を評価した。呼吸循環状態について,SpO2,HRおよび血圧を測定した。また,重症心身障害者の生活機能評価であるLife Inventory to Functional Evaluation(以下LIFE)を利用し,Part2 A/C/E,Part3 A/Bを抽出して運動機能及び目的に対する注意機能の変化を評価した。評価期間の介入については,週に1度の頻度で40分程度,2次元空間から3次元空間への移行を狙いとして前方への視覚誘導を中心として理学療法介入を行った。
【結果】
呼吸循環状態においては,著明な変化は認められず,安全に実施可能であった。座位姿勢での頭頚部の運動について,導入時では座位保持装置上にて常時頸部は伸展位を取り,左右への回旋運動は見られず,注視は上方のみに固定されていたが,適応時では頸部の伸展運動が減少するとともに左右への回旋運動が生じたことで,注視方向が前方及び左右方向へと増加していた。LIFEについては,「背臥位における頭部の運動(Part2 A-18)」及び「目的を持った聴覚経験とその応用Part3 A-34」」においてスコアの改善が見られ,聴覚・視覚情報に対して選択的に注意を向け,追視に伴う頸部の自発運動が新たに認められた。
【結論】
長期臥床経験による運動感覚経験の減少は,発達過程における運動の自由度を減少させる可能性が示唆された一方で,高齢の重症心身障害者であっても,短期間の介入により改善を示す部分がある可能性が示唆され,在宅における座位保持装置を利用した座位姿勢保持の重要性が考えられた。