[P-SN-06-5] トリガー機能付き機械的排痰補助装置は重症心身障がい児(者)への使用上の課題を解決したか
―病棟看護師へのアンケート調査から―
Keywords:重症心身障がい児(者), 機械的排痰補助装置, アンケート調査
【はじめに,目的】
当センターでは,重症心身障がい児(者)(以下,重症者)の肺コンプライアンス維持,気道クリアランスを目的に機械的排痰補助装置(以下,MI-E)を用いた呼吸リハビリテーション(以下,呼吸リハ)を積極的に実施してきた。MI-Eの実施には,不規則な呼吸など重症者特有の課題に対する工夫が必要であり,マスクフィッティング手技や姿勢の選択などを,主として呼吸リハチームの理学療法士が担ってきた。今回,重症者におけるトリガー機能付MI-Eの有用性を,日常のケアを実施している病棟看護師の視点から評価することを目的にアンケート調査を行った。
【方法】
対象は,慢性呼吸障害に対して日常的にCoughAssistⓇ(以下,カフアシスト)を使用している重症者病棟入所中で気管切開をしていない重症者7名にMI-Eを実施している病棟看護師51名。方法は,症例毎に機器使用のアンケート調査を二回実施した(回収率100%)。調査時期はカフアシスト使用時と,トリガー機能があるカフアシストE70(以下,E70)に変更し1ヶ月使用後に実施した。質問内容は①機器の使用に関する3項目(実施に要する時間・効果の印象・安全性)で間隔尺度の選択回答,②実施時の課題については選択肢(機器の設定・姿勢・マスクフィット・下顎保持・呼吸に合わせる・機器の操作・トリガー機能が作動しない・特にない)の複数選択,③カフアシストとE70のどちらが使用しやすいか,とした。質問①~③において症例毎にカフアシストとE70の機種の比較を,①ではt検定(有意水準は5%)を用い,②③では選択した人数の割合を算出し検討した。
【結果】
①機器の使用に関しては,実施に要する時間で3症例,効果の印象で1症例,機種間に有意差を認めたが,安全性では差はなかった。②実施時の課題では,全症例で,「呼吸に合わせる」の割合がE70で減少し,「特にない」の割合はE70で増加した。また,「マスクフィット」「下顎保持」「姿勢」の割合が多く,3症例でE70の「トリガー機能が作動しない」という回答があった。③使用しやすさは,E70が86%だった。
【結論】
E70のトリガー機能の使用によって,不規則な呼吸に同調させる配慮が不要となり,重症者への実施が容易になった。下顎保持などが必要な症例でも,トリガー機能により実施時間・効果の印象の項目が改善された。一方で,E70を導入することで実施は容易になるが,マスクフィット手技の難しさによるリークや上気道閉塞による吸気流速の低下によって吸気の検出が困難なためトリガー機能が作動しない場合があり,症例の身体状況や筋緊張を把握したマスクフィッティング手技,下顎挙上,ポジショニングの工夫を,引き続き理学療法士が介入・提案することが重要であると示唆された。
当センターでは,重症心身障がい児(者)(以下,重症者)の肺コンプライアンス維持,気道クリアランスを目的に機械的排痰補助装置(以下,MI-E)を用いた呼吸リハビリテーション(以下,呼吸リハ)を積極的に実施してきた。MI-Eの実施には,不規則な呼吸など重症者特有の課題に対する工夫が必要であり,マスクフィッティング手技や姿勢の選択などを,主として呼吸リハチームの理学療法士が担ってきた。今回,重症者におけるトリガー機能付MI-Eの有用性を,日常のケアを実施している病棟看護師の視点から評価することを目的にアンケート調査を行った。
【方法】
対象は,慢性呼吸障害に対して日常的にCoughAssistⓇ(以下,カフアシスト)を使用している重症者病棟入所中で気管切開をしていない重症者7名にMI-Eを実施している病棟看護師51名。方法は,症例毎に機器使用のアンケート調査を二回実施した(回収率100%)。調査時期はカフアシスト使用時と,トリガー機能があるカフアシストE70(以下,E70)に変更し1ヶ月使用後に実施した。質問内容は①機器の使用に関する3項目(実施に要する時間・効果の印象・安全性)で間隔尺度の選択回答,②実施時の課題については選択肢(機器の設定・姿勢・マスクフィット・下顎保持・呼吸に合わせる・機器の操作・トリガー機能が作動しない・特にない)の複数選択,③カフアシストとE70のどちらが使用しやすいか,とした。質問①~③において症例毎にカフアシストとE70の機種の比較を,①ではt検定(有意水準は5%)を用い,②③では選択した人数の割合を算出し検討した。
【結果】
①機器の使用に関しては,実施に要する時間で3症例,効果の印象で1症例,機種間に有意差を認めたが,安全性では差はなかった。②実施時の課題では,全症例で,「呼吸に合わせる」の割合がE70で減少し,「特にない」の割合はE70で増加した。また,「マスクフィット」「下顎保持」「姿勢」の割合が多く,3症例でE70の「トリガー機能が作動しない」という回答があった。③使用しやすさは,E70が86%だった。
【結論】
E70のトリガー機能の使用によって,不規則な呼吸に同調させる配慮が不要となり,重症者への実施が容易になった。下顎保持などが必要な症例でも,トリガー機能により実施時間・効果の印象の項目が改善された。一方で,E70を導入することで実施は容易になるが,マスクフィット手技の難しさによるリークや上気道閉塞による吸気流速の低下によって吸気の検出が困難なためトリガー機能が作動しない場合があり,症例の身体状況や筋緊張を把握したマスクフィッティング手技,下顎挙上,ポジショニングの工夫を,引き続き理学療法士が介入・提案することが重要であると示唆された。