The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本小児理学療法学会 » ポスター発表

[P-SN-07] ポスター(小児)P07

Sun. May 14, 2017 11:40 AM - 12:40 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本小児理学療法学会

[P-SN-07-1] 幼児におけるしゃがみ込み動作の規定要因

重島 晃史, 山﨑 裕司, 片山 訓博 (高知リハビリテーション学院理学療法学科)

Keywords:幼児, しゃがみ込み動作, 足関節背屈可動域

【はじめに,目的】

しゃがみ込み動作は,和式トイレや畳での床上動作場面などにおいて必要となる。しゃがみ込み動作の調査は近年,学校の運動器検診において運動器機能不全の兆候を発見するために用いられるが,より年少の幼児を対象とした報告はみられない。幼児期におけるしゃがみ込み動作の難易度や規定要因が明らかとなれば,動作に困難性を示す幼児に対して適切な対処方法をとることが可能となる。本研究では,幼児のしゃがみ込み動作の可否と足関節背屈可動域を調査し,成人のデータと比較検討したので報告する。


【方法】

対象は幼稚園に所属する幼児166名(3歳児25名,4歳児53名,5歳児63名,6歳児25名)および健常成人77名(19±1歳)であった。

しゃがみ込み動作は,まず両上肢を前方に挙上し,両足部を肩幅に開いた立位姿勢をとらせた。次いで足部をその場から動かさず,完全にしゃがみ込むよう指示した。踵が浮かない状態で大腿後面と下腿後面が接触してしゃがみ込めた場合,動作可能と判断した。最大2回実施し,1回でも成功すれば動作可能とした。足関節背屈可動域(以下,背屈)の測定では,東大式角度計を用いた。測定は膝90度屈曲位で左右実施し,1度単位で角度を読んだ。左右の平均角度を採用した。

3歳,4歳,5歳,6歳,成人の5群に分類し,各年齢でしゃがみ込み動作の可能群・不可能群の数および割合,背屈角度を算出した。統計学的解析では,クラスカル・ワーリス検定,マン・ホイットニ検定,効果量rを用いて検討した。


【結果】

しゃがみ込み動作可能群の割合は3歳,4歳,5歳,6歳,成人の順に,72.0%,90.6%,95.2%,100%,63.6%であり,6歳児はしゃがみ込みができる幼児が有意に多かった(p<0.01)。背屈角度は同様の順で43.7±11.8度,41.7±13.1度,34.5±11.1度,34.7±8.9度,15.7±5.5度であり,年齢が上がるほど可動域は小さくなった(p<0.01)。

可能群/不可能群の背屈角度は,3歳45.6±11.4度/38.7±12.1度,4歳42.6±13.0度/32.3±10.5度,5歳35.0±0.8度/25.2±15.5度,6歳34.7±8.9度/不可能群なし,成人18.4±4.4度/10.9±4.1度であり(5歳は3名であったため統計学的解析未実施),有意差を認めたのは成人のみであった(p<0.01,効果量r=0.67)。


【結論】

3~4歳の幼児においてしゃがみ込み動作困難児が多いという報告はない。幼児の背屈角度は加齢によって減少したが,しゃがみ込み動作は年齢が高いほど可能者が多かった。一方,成人ではしゃがみ込み動作の可否には背屈可動域が強く影響していた。以上のことは,幼児期のしゃがみ込み動作の可否は,足関節柔軟性以外の要因によって規定されていることを示唆している。しゃがみ込み動作の獲得には,姿勢の変化に対応するための平衡機能や動作学習の要素が関わっていると推察される。しゃがみ込み動作が困難な幼児には,動作学習を意識した介入の必要性がある。