The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本小児理学療法学会 » ポスター発表

[P-SN-08] ポスター(小児)P08

Sun. May 14, 2017 11:40 AM - 12:40 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本小児理学療法学会

[P-SN-08-2] 小脳腫瘍摘出後に運動失調を呈し独歩困難となった一症例
6ヶ月間の運動療法効果の検討

西牧 祐輔 (医療法人社団錦昌会千葉こどもとおとなの整形外科)

Keywords:小脳腫瘍, 失調症状, 体幹機能

【はじめに,目的】

小脳腫瘍後の失調症状に対する運動療法について,過去の報告は入院期間中の運動療法効果に関する報告は散見されるが,退院後に通所や外来において実施された運動療法の効果を報告したものは渉猟しうる限りでは見当たらない。また,その運動療法の継続効果に関して報告も少なく,どの運動療法をどの期間・どの程度行うと効果的かは不明な点が多い。

今回小脳腫瘍の摘出後の失調症状に対し,下部体幹・骨盤帯の運動機能改善を目的とした運動療法を外来にて実施し6か月間経過を追う機会を得た。その経過及び治療効果について若干の考察を加えて以下に報告する。


【方法】

症例は13歳の男子中学生で,8年前に小脳腫瘍摘出術を実施し,5年前と1年前にも再発を繰り返し,その都度再手術を実施した。いずれも手術後の運動療法は,歩行練習・エルゴメーター・四つ這い移動などの移動能力に着目した運動療法を実施し,退院後のリハビリは実施していなかった。

6ヶ月前より当院にてリハビリ開始となったが,理学所見は躯幹失調試験ステージIIで立位・座位でも動揺が左右にみられ,鼻指鼻試験や踵膝試験では企図振戦・運動失調を認めた。外乱負荷応答は遅延し,失調症状は左側に優位にみられた。

膝歩きや歩行などの移動能力に関して上肢介助が必要であり,自立レベルには達していなかったため,運動療法は①膝立ち位の保持練習②ブリッジ運動③鏡を利用した静的立位保持練習④膝立位でのボール投げなど下部体幹・骨盤帯の機能改善を目的としたものを中心に実施し,移動能力の改善を図った。


【結果】

躯幹失調試験ではステージIIと変化はみられなかったが,主観的な体幹支持能力が向上し,膝歩きおよび歩行時に動揺の軽減が確認された。また,連続歩行時間は初期で10分程度であったものが徐々に改善が見られ,6ヶ月経過時点で外出時1~2時間程度歩行可能となり,移動能力に改善がみられた。


【結論】

今回の経過より,退院後の外来での運動療法は,6ヶ月間の継続でその効果を発揮できるということが可能性として考えられた。河上らは一般的に腹斜筋や腹直筋などの体幹筋は上肢や下肢の運動とほぼ同時に収縮を始めるが,腹横筋は動作よりも30~100ms前に収縮を始め上下肢の運動直前から収縮を開始すると述べている。下部体幹・骨盤帯を中心とした運動療法により体幹深部筋の活性化に,また体幹の支持性が向上することにより四肢の動作に対する体幹の安定化につながり,移動能力の改善に関与したと考えられた。

今後の展望としては,1年後,2年後などさらに経過を追い今回の運動療法が移動能力に関与するか観察していく必要があると考える