[P-SN-08-5] 頭部コントロール能力向上に向けて介入した全前脳胞症の1例
Keywords:頭頚部, 運動障害, 腹臥位
【はじめに,目的】
全前脳胞症(以下,HPE)は,発生初期に前脳の分離不全を生じ,多くは重度知能・運動障害を来し,様々な合併症を伴う。生命予後が不良で稀な疾患であり,理学療法の介入に関する報告は少ない。今回,重度の運動障害を呈したHPE児を担当した。発達の出発点である頭部コントロール能力の向上を目標に介入した結果,13ヶ月後座位時の頭部コントロール能力の向上がみられたので報告する。
【方法】
7歳女児。胎児期にHPEと診断。在胎37週1日,2490g,アプガースコア6/7で出生。生後10ヶ月時より理学療法開始。現在,ADL全介助,児童デイサービス(以下,児童DS)利用。母のHOPEは,「(四肢が)硬くならないようにしてほしい」。粗大運動能力V。未定頸,右向き優位,精査困難だが視覚障害(+)。探索反射・非対称性緊張性頚反射・対称性緊張性頚反射等の原始反射が残存。筋緊張は混在し,特に上肢は低緊張。胸椎・胸郭に軽度右凸変形(+)。背臥位では,正中位指向(-),随意的に頭部挙上可。寝返り(-)。腹臥位(介助on elbows)は重心が軽度右変位し,右向き優位の為,口が右肩に触れ易く,探索反射が生じ,頭部右回旋が増強。遊びは感覚遊び中心で特に無機質な音を好む。食事は座位保持装置座位で頭部を支える介助が必要。座位保持装置座位で頭部コントロール能力の向上を目標とし,週1回の頻度で介入した。介入内容は,原始反射の統合を促す為に腹臥位や座位で頭部伸展・回旋運動を取り入れた。この頭部の運動を促す際には,児が反応を示す音刺激を利用し,音刺激の位置を児の正中位~左へ段階的に変化させた。また,この頭部の運動を促す機会を増やす為に児童DSや学校へ依頼し,連携した。
【結果】
介入4ヶ月後にon elbowsで頭部を右回旋位~正中位に向ける場面が増加。介入5ヶ月後に右側臥位まで寝返り可。介入6・7ヵ月後,腹臥位や座位で10秒程頭部正中位保持可。介入8ヶ月後,座位保持装置座位や腹臥位で頭部左回旋や左回旋位保持可。介入10ヶ月後,胡座で頭部左回旋や左回旋位保持が可。介入13ヶ月後,自宅で食事の際に頭部の介助が不要となった。
【結論】
腹臥位や座位での頭部伸展・回旋運動を繰り返したことにより,原始反射の統合が促進され,肩甲帯周囲筋の筋緊張が分散されたと考えられる。また,筋緊張が分散された状態で肩甲帯を前方突出させるon elbows姿勢を継続的に取り入れたことにより,肩甲骨周囲筋の筋活動が発揮しやすくなり,頭部コントロール能力が向上したと考える。HPEによる重度の運動障害を呈する児においても頭部コントロール能力の向上が期待できると示唆される。
全前脳胞症(以下,HPE)は,発生初期に前脳の分離不全を生じ,多くは重度知能・運動障害を来し,様々な合併症を伴う。生命予後が不良で稀な疾患であり,理学療法の介入に関する報告は少ない。今回,重度の運動障害を呈したHPE児を担当した。発達の出発点である頭部コントロール能力の向上を目標に介入した結果,13ヶ月後座位時の頭部コントロール能力の向上がみられたので報告する。
【方法】
7歳女児。胎児期にHPEと診断。在胎37週1日,2490g,アプガースコア6/7で出生。生後10ヶ月時より理学療法開始。現在,ADL全介助,児童デイサービス(以下,児童DS)利用。母のHOPEは,「(四肢が)硬くならないようにしてほしい」。粗大運動能力V。未定頸,右向き優位,精査困難だが視覚障害(+)。探索反射・非対称性緊張性頚反射・対称性緊張性頚反射等の原始反射が残存。筋緊張は混在し,特に上肢は低緊張。胸椎・胸郭に軽度右凸変形(+)。背臥位では,正中位指向(-),随意的に頭部挙上可。寝返り(-)。腹臥位(介助on elbows)は重心が軽度右変位し,右向き優位の為,口が右肩に触れ易く,探索反射が生じ,頭部右回旋が増強。遊びは感覚遊び中心で特に無機質な音を好む。食事は座位保持装置座位で頭部を支える介助が必要。座位保持装置座位で頭部コントロール能力の向上を目標とし,週1回の頻度で介入した。介入内容は,原始反射の統合を促す為に腹臥位や座位で頭部伸展・回旋運動を取り入れた。この頭部の運動を促す際には,児が反応を示す音刺激を利用し,音刺激の位置を児の正中位~左へ段階的に変化させた。また,この頭部の運動を促す機会を増やす為に児童DSや学校へ依頼し,連携した。
【結果】
介入4ヶ月後にon elbowsで頭部を右回旋位~正中位に向ける場面が増加。介入5ヶ月後に右側臥位まで寝返り可。介入6・7ヵ月後,腹臥位や座位で10秒程頭部正中位保持可。介入8ヶ月後,座位保持装置座位や腹臥位で頭部左回旋や左回旋位保持可。介入10ヶ月後,胡座で頭部左回旋や左回旋位保持が可。介入13ヶ月後,自宅で食事の際に頭部の介助が不要となった。
【結論】
腹臥位や座位での頭部伸展・回旋運動を繰り返したことにより,原始反射の統合が促進され,肩甲帯周囲筋の筋緊張が分散されたと考えられる。また,筋緊張が分散された状態で肩甲帯を前方突出させるon elbows姿勢を継続的に取り入れたことにより,肩甲骨周囲筋の筋活動が発揮しやすくなり,頭部コントロール能力が向上したと考える。HPEによる重度の運動障害を呈する児においても頭部コントロール能力の向上が期待できると示唆される。