[P-SN-09-5] 脳性麻痺児に対する上肢選択的筋解離術とADLの関係
―アンケート調査による検討―
Keywords:脳性麻痺児, 選択的筋解離術, ADL
【はじめに,目的】
脳性麻痺(以下:CP)児の上肢の運動機能改善を目的に選択的筋解離術(Orthopaedic Selective Spasticity-control Surgery:OSSCS)が行われており,上肢の変形や筋緊張,運動機能の改善が報告されている。しかし,ADL機能に着目した報告は少ない。CP児の上肢機能の判別的評価法としてManual Ability Classification System(以下:MACS)がある。本研究は,CP児の上肢に対するOSSCS後のADL機能変化の特徴を明らかにし術後理学療法の一助とする目的で,上肢OSSCS後のADL機能変化に関するアンケート調査を行ったので報告する。
【方法】
アンケートは2002年6月~2014年10の期間に当院にて肩・肘・前腕部のOSSCSを受けたCP患者153名へ送付した。返送して頂いたアンケートの内,手術時年齢が18歳以下,痙直型脳性麻痺,両麻痺もしくは四肢麻痺タイプを取り込み基準とした。アンケートは術前の情報として手術時年齢・上肢の運動機能(Manual Ability Classification System:MACS),術後機能変化の情報としてADL動作の改善の有無を調査した。ADLの改善の有無は「はい」「いいえ」による二件法にて調査し,さらに「はい」と答えた方から自由記述による調査を行った。
統計学的処理は,EZR ver. 1.33を使用し,χ二乗検定を行いMACSとADL動作の改善の有無の比率の検討を行った。なお有意水準は5%とした。さらに,自由記述は,をコード化した後さらに類似のコードの集合体が形成できるかを吟味しカテゴリー化した。
【結果】
アンケートは153名中24名から返送して頂けた。手術時年齢は10.5±3.7歳(平均±標準偏差)であった。MACSはレベルI・II・III・IV・Vの順に0名,5名,8名,6名,5名であった。ADL術後機能変化の項目に改善が得られた人数はMACSレベル順に0名,4名,8名,2名,3名であった。カテゴリー内容は「術側上肢の機能向上」「両手動作の機能向上」「介助量の軽減」「変化無し」となった。
χ二乗検定を行った結果,MACSとADLの改善の有無には関連性は認められなかった(p>0.05)。ADLに関する自由記述内容の質的帰納的分析を行った結果,MACSレベルIIでは「術側上肢の機能向上」・「両手動作の機能向上」に関する内容が多く,レベルが低下するにつれ「介助量の軽減」に関する内容が多くなった。
【結論】
MACSとADLの改善の有無には関連性は認められなかったことから,MACSレベルにより,ADL機能の改善の有無に偏りが出る可能性は少ないことが示唆された。自由記述に注目すると,MACSレベルによって改善するADL機能には差がみられた。レベルIIは「対象物をたいてい取り扱えるが,上手さ・早さの点で少し劣る」とされており,術前から介助の必要がなかったこと,レベルVは機能の改善は艱難であるが可動域・筋緊張の改善により介助量が軽減したことが考えられる。
以上のことから,レベルに応じて理学療法プログラムの内容・ゴール設定を変化させる必要がある。
脳性麻痺(以下:CP)児の上肢の運動機能改善を目的に選択的筋解離術(Orthopaedic Selective Spasticity-control Surgery:OSSCS)が行われており,上肢の変形や筋緊張,運動機能の改善が報告されている。しかし,ADL機能に着目した報告は少ない。CP児の上肢機能の判別的評価法としてManual Ability Classification System(以下:MACS)がある。本研究は,CP児の上肢に対するOSSCS後のADL機能変化の特徴を明らかにし術後理学療法の一助とする目的で,上肢OSSCS後のADL機能変化に関するアンケート調査を行ったので報告する。
【方法】
アンケートは2002年6月~2014年10の期間に当院にて肩・肘・前腕部のOSSCSを受けたCP患者153名へ送付した。返送して頂いたアンケートの内,手術時年齢が18歳以下,痙直型脳性麻痺,両麻痺もしくは四肢麻痺タイプを取り込み基準とした。アンケートは術前の情報として手術時年齢・上肢の運動機能(Manual Ability Classification System:MACS),術後機能変化の情報としてADL動作の改善の有無を調査した。ADLの改善の有無は「はい」「いいえ」による二件法にて調査し,さらに「はい」と答えた方から自由記述による調査を行った。
統計学的処理は,EZR ver. 1.33を使用し,χ二乗検定を行いMACSとADL動作の改善の有無の比率の検討を行った。なお有意水準は5%とした。さらに,自由記述は,をコード化した後さらに類似のコードの集合体が形成できるかを吟味しカテゴリー化した。
【結果】
アンケートは153名中24名から返送して頂けた。手術時年齢は10.5±3.7歳(平均±標準偏差)であった。MACSはレベルI・II・III・IV・Vの順に0名,5名,8名,6名,5名であった。ADL術後機能変化の項目に改善が得られた人数はMACSレベル順に0名,4名,8名,2名,3名であった。カテゴリー内容は「術側上肢の機能向上」「両手動作の機能向上」「介助量の軽減」「変化無し」となった。
χ二乗検定を行った結果,MACSとADLの改善の有無には関連性は認められなかった(p>0.05)。ADLに関する自由記述内容の質的帰納的分析を行った結果,MACSレベルIIでは「術側上肢の機能向上」・「両手動作の機能向上」に関する内容が多く,レベルが低下するにつれ「介助量の軽減」に関する内容が多くなった。
【結論】
MACSとADLの改善の有無には関連性は認められなかったことから,MACSレベルにより,ADL機能の改善の有無に偏りが出る可能性は少ないことが示唆された。自由記述に注目すると,MACSレベルによって改善するADL機能には差がみられた。レベルIIは「対象物をたいてい取り扱えるが,上手さ・早さの点で少し劣る」とされており,術前から介助の必要がなかったこと,レベルVは機能の改善は艱難であるが可動域・筋緊張の改善により介助量が軽減したことが考えられる。
以上のことから,レベルに応じて理学療法プログラムの内容・ゴール設定を変化させる必要がある。