第52回日本理学療法学術大会

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日本スポーツ理学療法学会 » ポスター発表

[P-SP-01] ポスター(スポーツ)P01

2017年5月12日(金) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本スポーツ理学療法学会

[P-SP-01-1] 中学・高校野球選手の側腹筋厚と肩甲骨周囲筋との関係

武田 和之1, 加藤 洋一1, 西口 幹大2, 東 歓太1, 萩尾 光咲1, 前川 真太朗3, 馬島 雅高1, 加藤 芳司4 (1.マジマ整形外科, 2.特定医療法人録三会太田病院, 3.城見整形外科クリニック, 4.トライデントスポーツ医療看護専門学校)

キーワード:野球, 発達段階, 側腹筋

【はじめに,目的】

肩,肘関節障害は中学野球選手で多くみられる。この世代の投球動作は体幹側屈が大きく回旋が小さく上肢依存度が高いとの報告があり,体幹筋群に世代の特性があると推測されるが,一定の見解を得ていない。本研究は,中・高校生の側腹筋の特性と肩甲骨周囲筋との関係を明らかにすることを目的とした。


【方法】

野球選手,中学生24名(J群:年齢13±0.8歳,身長159.8+8.7cm,体重46.2±7.1kg)高校生18名(H群:年齢16±0.8歳,身長172.2±5.8cm,体重65.8±7.3kg)計42名を対象とした。測定は超音波診断装置(日立メディコ)を用いた側腹筋厚(腹横筋厚以下TrA,内腹斜筋厚以下IO,外腹斜筋厚以下EO),ハンドヘルドダイナモメーター(ANIMA)を用いた肩甲骨内転筋,肩甲骨下制内転筋の筋力測定を行った。統計処理は,2群それぞれ側腹筋厚の投球側-非投球側の差異を対応のあるt検定を行い,各群,左右の側腹筋厚と肩甲骨内転筋,肩甲骨下制内転筋の関係をPearsonの相関係数にて解析した。有意水準は5%とし,統計ソフトはSPSS(version 24)を用いた。


【結果】

J群のEO(投球側8.3±1.7mm,非投球側9.2±1.8mm)に有意差を認め,投球側EOと投球側肩甲骨内転筋との間にr=0.56,非投球側EO,投球側IO,投球側TrAと投球側肩甲骨下制内転筋との間にそれぞれr=-0.52,-0.59,-0.43の有意な相関を認めた。H群のTrA(投球側4.4±0.9mm,非投球側4.9±1.0mm)に有意差を認め,投球側TrAと投球側肩甲骨内転筋との間にr=0.49の有意な相関を認めた。


【結論】

側腹筋左右差はJ群ではEO,H群ではTrAに認めた。側腹筋と肩甲骨周囲筋の関係は,J群で投球側EOと投球側肩甲骨内転筋で正の相関,投球側回旋筋(投球側TrA,IO,非投球側EO)と投球側肩甲骨下制内転筋で負の相関を認め,H群は投球側TrAと投球側肩甲骨下制内転筋で正の相関を認めた。側腹筋左右差は先行研究と一致した結果となり,競技特性である投球動作など一側優位の活動により生じたと考える。側腹筋と肩甲骨周囲筋の関係は,下肢からの力伝達を側腹筋が中継役として担い,肩甲骨周囲筋へ至ることを示唆する結果と考える。J群の投球側体幹回旋筋と投球側肩甲骨下制内転筋の関係は,Wind up phase~Early cocking phaseの投球側体幹回旋時に投球側肩甲骨下制内転筋が働いていない可能性が考えられる。先行研究より,成長期野球選手の上肢に頼った投球動作は同phaseに僧帽筋下部線維の筋出力が低下していたと報告があり,それらは早期体幹回旋や肩甲骨force coupleの破綻に繋がると考える。

高校野球選手は下肢からの力を肩甲骨周囲筋へ伝達していると考慮できるのに対し,中学野球選手は未成熟な身体特性に加え,体幹の使い方により障害を誘発させる可能性が考えられる。野球選手のリハビリテーションや予防において,体幹の協調性トレーニングなどを取り入れることも重要と考える。