第52回日本理学療法学術大会

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[P-SP-01] ポスター(スポーツ)P01

2017年5月12日(金) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本スポーツ理学療法学会

[P-SP-01-5] 成長期の投球障害肩における上腕骨骨端線離解が治療経過に及ぼす影響

西村 勇輝1,2, 木村 淳志1,2, 鶴田 崇1,2, 伯川 広明1,2, 大塚 雅史1,2, 緑川 孝二1,2,3 (1.南川整形外科病院リハビリテーション部, 2.南川スポーツ医科学研究所, 3.南川整形外科病院整形外科)

キーワード:上腕骨骨端線離解, 30°拳上筋力, 外旋筋力

【はじめに,目的】

投球動作は全身運動であるため,上・下肢や体幹の柔軟性や筋力の低下は肩へのストレスを増大させ,投球障害肩を発症させることが考えられる。成長期の投球障害肩には上腕骨骨端線離解などがあり,少年野球肩(LLS)と呼ばれ区別されているが,当院の治療方針は統一したものである。当院の治療方針は全身の理学所見の中でも,17項目を重要項目として1項目1点で点数化し,13点未満はコンディショ二ング不良として投球禁止を勧めている。投球禁止期間は原則4週間であり,その期間に患部の安静や全身コンディショニングを行う。再診で13点以上になると,段階的投球増強法にて痛みのない全力投球(フルスロー)を目指す。今回投球障害肩とLLSと診断された者の治療経過を比較したため報告する。

【方法】

平成26年1月~平成27年月12月までに投球障害肩と診断された小学生から中学生の中でLLSを認めた17名(S群),LLSを認めなかった15名(N群)とした。

当院で用いている理学所見17項目中,下肢・体幹項目を除いた肩11項目(筋力5項目:30°拳上筋力,initial abduction test:IAT,外旋筋力,elbow extension test:EET,elbow push test:EPT/柔軟性2項目:horizontal flexion test:HFT,combined abduction test:CAT/疼痛2項目:Neer,hyper external rotation test:HERT/その他2項目:spine-scapula distance:SSD,loose)に着目し,①初診時における各群の陽性率②各群の初診から再診での改善率③投球開始時期④フルスロー獲得時期を比較した。④はスロー開始後,フルスローまで経過が追えたS群17名中14名,N群15名中10名で両群ともに全例がフルスロー獲得したことを条件に比較を行った。

統計処理は,①,②はx2検定を用い,③,④はマン・ホイットニー検定を用いて0.05未満を有意差ありとした。

【結果】

平均年齢はS群12.3±1.6歳,N群13.6±1.2歳であった。

①初診はS群,N群ともに筋力4項目,柔軟性2項目,疼痛1項目で陽性率が80%以上であり両群間に差は認められなかった。しかし,外旋筋力ではS群65%,N群27%でありS群で陽性率が有意に高かった。

②再診はS群,N群ともに有意に改善したが,S群の30°拳上筋力で有意差に改善しなかった。

③スロー開始日数はS群36.2±16.3日,N群34.1±10.1日で有意差がなかった。

④フルスロー獲得日数は84.3±24.4日,N群は75.9±20.3日で有意差がなかった。

【結論】

本研究の結果より,初診はLLSを認めた者の方が外旋筋力が有意に低下していた。これらは反復した投球動作により骨端線離解部に起きた炎症と,外旋運動の捻転ストレスが痛みを生じ,筋力低下に影響したと示唆する。次に,LLSを認めた者は30°拳上筋力の改善率が低下することがわかった。骨端線離解は腱板の筋張力を低下させ,長軸方向に対する筋力回復には時間を要するのではないかと推察する。投球復帰には4週間の投球禁止と全身のコンディションを高めることが必要であると考える。