[P-SP-02-1] 上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の病期と投球時痛の有無および投球時痛を生じる位相の関連性の検討
Keywords:上腕骨小頭離断性骨軟骨炎, 病期, 痛み
【はじめに,目的】
我々は昨年の本学会にて,上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(以下OCD)における投球時痛を生じる位相(Painful Phase,以下PP)の違いが病巣部位に影響していたことを報告した。その際,投球時痛を有する対象が多かった一方で,投球時は痛くないが練習後や帰宅後に痛いAfter Pain(AP)群や,投球時痛は全くないNo Pain(NP)群といった明らかな投球時痛を有さない対象を認めた。OCDは発生初期の自覚症状が少ないと言われており,投球時痛の有無にOCDの病期が関与している可能性が疑われる。また,PPの違いと病期の関連性を検討した報告は見当たらない。そこで本研究では2つの追加調査を行った。調査1ではOCD症例における投球時痛の有無と病期進行の程度の関連性,調査2ではPPの違いと病期進行の程度の関連性を検討した。
【方法】
対象は2010年から2016年に受診した青少年期野球選手のOCD症例のうち,X線検査を実施しかつ問診にてPPを聴取可能であった39名とした。受診時平均年齢は13.7±1.5歳で性別は全例男性であった。岩瀬のX線病期分類はI透亮期外側型0名,II透亮期中央型17名,III分離期前期型10名,IV分離期後期型6名,V遊離期巣内型4名,VI遊離期巣外型2名であった。本研究ではこのI~VIを6段階順序尺度と捉え病期進行の程度を評価(以下 病期評価)した。調査1では投球動作中に痛みがあった者をPあり群,なかった者をPなし群とし2群の病期評価の差を検討した。調査2ではPP別に分かれた5群の病期評価の差を比較検討した。統計処理は調査1ではMann-WhitneyのU検定,調査2ではKruskal-Wallis検定を用いた。いずれも危険率5%未満を有意とした。
【結果】
調査1:内訳はPあり群31名(80%),Pなし群8名(20%)であった。病期評価はPあり群がI:0名,II:11名,III:8名,IV:6名,V:4名,VI:2名(中央値=III),Pなし群がI:0名,II:6名,III:2名,IV~VI:0名(中央値=II)で,Pあり群は有意に病期が進行していた(p<0.05)。調査2:内訳はLate Cocking(LC)群7名(18%),Acceleration(Acc)群15名(39%),Deceleration(Dcl)群9名(23%),AP群4名(10%),NP群4名(10%)であった。各群の病期評価(中央値のみ表示)はLC群:III,Acc群:III,Dcl群:III,AP群:II,NP群:IIで,いずれの群間にも有意差は認めなかった。
【結論】
調査1より,Pあり群はPなし群よりも有意に病期が進行していた。すなわちPなし群はOCD発生の比較的初期段階にあると考えられ,この段階以上に症状を進行させないことが臨床上重要であると考えられた。さらに調査2より,PPの違いは病期進行の程度に関与していなかった。以上より,明らかな投球時痛を有するOCD症例はPPの違いに関わらず病期が進行していることが示唆された。本研究の結果はOCDの早期発見の重要性を示しており,野球障害検診等の活動を通して障害予防の啓発を行う意義や必要性の根拠となり得ると考える。
我々は昨年の本学会にて,上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(以下OCD)における投球時痛を生じる位相(Painful Phase,以下PP)の違いが病巣部位に影響していたことを報告した。その際,投球時痛を有する対象が多かった一方で,投球時は痛くないが練習後や帰宅後に痛いAfter Pain(AP)群や,投球時痛は全くないNo Pain(NP)群といった明らかな投球時痛を有さない対象を認めた。OCDは発生初期の自覚症状が少ないと言われており,投球時痛の有無にOCDの病期が関与している可能性が疑われる。また,PPの違いと病期の関連性を検討した報告は見当たらない。そこで本研究では2つの追加調査を行った。調査1ではOCD症例における投球時痛の有無と病期進行の程度の関連性,調査2ではPPの違いと病期進行の程度の関連性を検討した。
【方法】
対象は2010年から2016年に受診した青少年期野球選手のOCD症例のうち,X線検査を実施しかつ問診にてPPを聴取可能であった39名とした。受診時平均年齢は13.7±1.5歳で性別は全例男性であった。岩瀬のX線病期分類はI透亮期外側型0名,II透亮期中央型17名,III分離期前期型10名,IV分離期後期型6名,V遊離期巣内型4名,VI遊離期巣外型2名であった。本研究ではこのI~VIを6段階順序尺度と捉え病期進行の程度を評価(以下 病期評価)した。調査1では投球動作中に痛みがあった者をPあり群,なかった者をPなし群とし2群の病期評価の差を検討した。調査2ではPP別に分かれた5群の病期評価の差を比較検討した。統計処理は調査1ではMann-WhitneyのU検定,調査2ではKruskal-Wallis検定を用いた。いずれも危険率5%未満を有意とした。
【結果】
調査1:内訳はPあり群31名(80%),Pなし群8名(20%)であった。病期評価はPあり群がI:0名,II:11名,III:8名,IV:6名,V:4名,VI:2名(中央値=III),Pなし群がI:0名,II:6名,III:2名,IV~VI:0名(中央値=II)で,Pあり群は有意に病期が進行していた(p<0.05)。調査2:内訳はLate Cocking(LC)群7名(18%),Acceleration(Acc)群15名(39%),Deceleration(Dcl)群9名(23%),AP群4名(10%),NP群4名(10%)であった。各群の病期評価(中央値のみ表示)はLC群:III,Acc群:III,Dcl群:III,AP群:II,NP群:IIで,いずれの群間にも有意差は認めなかった。
【結論】
調査1より,Pあり群はPなし群よりも有意に病期が進行していた。すなわちPなし群はOCD発生の比較的初期段階にあると考えられ,この段階以上に症状を進行させないことが臨床上重要であると考えられた。さらに調査2より,PPの違いは病期進行の程度に関与していなかった。以上より,明らかな投球時痛を有するOCD症例はPPの違いに関わらず病期が進行していることが示唆された。本研究の結果はOCDの早期発見の重要性を示しており,野球障害検診等の活動を通して障害予防の啓発を行う意義や必要性の根拠となり得ると考える。