[P-SP-02-3] 肘関節痛を有する少年野球選手の投球動作の特徴
Keywords:野球, 投球動作, 3次元解析
【はじめに,目的】
野球選手における肘関節の投球障害は小学生に多く認められることが報告されている。小学生の投球障害肘の原因の一つに不良な投球動作との関連が考えられている。不良な投球動作としてcocking phaseにおける肩関節の過度な水平外転を示すhyper angulation,acceleration phaseにおける体幹の回旋不良や踏み込み足の股関節内旋可動域の低下が示唆されている。また,野球選手はlate cocking phaseからacceleration phaseにかけて生じる肩関節最大外旋位(MER)に肘関節の疼痛を訴えることが多いため,投球動作の中でもこの期間に着目して観察した報告は多い。しかし,少年野球選手に対して肘関節の疼痛の有無により投球動作の特徴を比較した報告は少ない。本研究は少年野球選手を対象に3次元動作解析を行い,肘関節の疼痛を有する少年野球選手の投球動作の特徴を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は少年野球チームに所属する小学4年生で野球歴が同じである男子2名(以下A,B)とした。調査項目は背景因子として年齢,身長,体重,野球歴,投球側の調査を行い,画像所見として超音波診断撮影装置による上腕骨小頭部の不整像の有無と理学的所見として肘関節の圧痛,外反ストレスによる疼痛の確認を行った。投球動作の分析はハイスピードカメラを4台用い,主要関節の16箇所に反射マーカーを貼付した。選手は5回の投球試技を行った。動作解析は反射マーカーが最も認識可能であった1試行を採用し,Frame DiasIV(DKH社製)を使用して行った。動画は踏み込み足の着地(FC)からボールリリース(BR)までを100%に正規化した。次に,肩関節の水平外転角度と体幹の左回旋角度,股関節内旋角度を算出し,FC時,MER時およびBR時の角度に関して比較を行った。
【結果】
被験者の平均年齢は9.5±0.5才,全例右投げ右打ちであった。被験者Aは外反ストレスによる疼痛を認め,被験者Bは検査による所見を認めなかった。投球動作時の肩関節水平外転角度は,FC時において被験者Aが38.2度,被験者Bが-17.8度であり,被験者Aにhyper angulationが確認された。また,FC時の体幹左回旋角度に関して,Aは-61.2度であり,Bが-35.6度でありAはBに比してFC時の体幹が軸足側へ回旋していた。また。BR時の股関節内旋角度に関して,Aは11.6度で,Bは16.2度であり,AはBに比してBR時の股関節内旋角度が小さかった。
【結論】
肘関節痛を有する少年野球選手の投球動作の特徴として,hyper angulation,FCからMERにかけて体幹の軸足側への回旋の増大,そしてBR時の股関節内旋の減少が確認された。被験者Aは被験者Bに比して肩を後方へ引く意識が強く肩関節の水平外転と同時に体幹の回旋が生じたと考えられた。また,BR時に股関節内旋が減少していたことから下肢関節のコントロール不良が考えられた。身体の未熟な少年野球選手を観察する際には,全身に着目し不良な投球動作に対して注意する必要が考えられた。
野球選手における肘関節の投球障害は小学生に多く認められることが報告されている。小学生の投球障害肘の原因の一つに不良な投球動作との関連が考えられている。不良な投球動作としてcocking phaseにおける肩関節の過度な水平外転を示すhyper angulation,acceleration phaseにおける体幹の回旋不良や踏み込み足の股関節内旋可動域の低下が示唆されている。また,野球選手はlate cocking phaseからacceleration phaseにかけて生じる肩関節最大外旋位(MER)に肘関節の疼痛を訴えることが多いため,投球動作の中でもこの期間に着目して観察した報告は多い。しかし,少年野球選手に対して肘関節の疼痛の有無により投球動作の特徴を比較した報告は少ない。本研究は少年野球選手を対象に3次元動作解析を行い,肘関節の疼痛を有する少年野球選手の投球動作の特徴を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は少年野球チームに所属する小学4年生で野球歴が同じである男子2名(以下A,B)とした。調査項目は背景因子として年齢,身長,体重,野球歴,投球側の調査を行い,画像所見として超音波診断撮影装置による上腕骨小頭部の不整像の有無と理学的所見として肘関節の圧痛,外反ストレスによる疼痛の確認を行った。投球動作の分析はハイスピードカメラを4台用い,主要関節の16箇所に反射マーカーを貼付した。選手は5回の投球試技を行った。動作解析は反射マーカーが最も認識可能であった1試行を採用し,Frame DiasIV(DKH社製)を使用して行った。動画は踏み込み足の着地(FC)からボールリリース(BR)までを100%に正規化した。次に,肩関節の水平外転角度と体幹の左回旋角度,股関節内旋角度を算出し,FC時,MER時およびBR時の角度に関して比較を行った。
【結果】
被験者の平均年齢は9.5±0.5才,全例右投げ右打ちであった。被験者Aは外反ストレスによる疼痛を認め,被験者Bは検査による所見を認めなかった。投球動作時の肩関節水平外転角度は,FC時において被験者Aが38.2度,被験者Bが-17.8度であり,被験者Aにhyper angulationが確認された。また,FC時の体幹左回旋角度に関して,Aは-61.2度であり,Bが-35.6度でありAはBに比してFC時の体幹が軸足側へ回旋していた。また。BR時の股関節内旋角度に関して,Aは11.6度で,Bは16.2度であり,AはBに比してBR時の股関節内旋角度が小さかった。
【結論】
肘関節痛を有する少年野球選手の投球動作の特徴として,hyper angulation,FCからMERにかけて体幹の軸足側への回旋の増大,そしてBR時の股関節内旋の減少が確認された。被験者Aは被験者Bに比して肩を後方へ引く意識が強く肩関節の水平外転と同時に体幹の回旋が生じたと考えられた。また,BR時に股関節内旋が減少していたことから下肢関節のコントロール不良が考えられた。身体の未熟な少年野球選手を観察する際には,全身に着目し不良な投球動作に対して注意する必要が考えられた。