[P-SP-03-4] 加速度計による競泳選手の胸郭回旋運動評価の試み
キーワード:競泳ストローク動作, 胸郭回旋運動, 加速度
【はじめに,目的】
競泳競技における自由形の上肢ストローク動作では,ローリングと呼ばれる胸郭回旋運動がおこる。ローリングが不十分な場合には,肩関節に過度な水平外転方向の力が加わり,肩関節障がいの発生リスクが増大する。
本研究では,この胸郭回旋運動を加速度計を用いて評価することを試みた。肩関節の柔軟性が獲得されている者は,ローリングが滑らかで,胸郭の左右方向の加速度の振幅が小さいと考えた。逆に,肩関節の柔軟性が乏しいと,ローリングの軸回旋と左右方向への偏位が大きくなり,結果として胸郭の左右方向の加速度の振幅が大きくなると考えた。
本研究の目的は,加速度をパワースペクトル解析とRoot Mean Square(RMS)で解析することで,肩関節の柔軟性と加速度の変動の関係を知ることである。
【方法】
対象は,障がい既往のない大学競泳選手8名とした(年齢21.1±1.9歳,身長175.5±4.6cm,体重65.9±6.0kg)。立位かつ体幹前傾位にて骨盤を固定し,陸上空間で模倣した10秒間の自由形ストローク動作を行わせた。その際の胸郭回旋加速度を三軸加速度計MVP-RF8(MicroStone社)にて計測した。加速度計は第9胸椎棘突起上に装着し,サンプリング周波数200Hzで記録した。解析区間は,左右方向の加速度の波形から無作為に選択した1024個(5.12秒)の連続データとした。左右方向の加速度の最大値を抽出し,加えて解析区間において,パワースペクトル解析(動作の滑らかさの指標)とRMS(動揺性の指標)を行った。柔軟性の指標として,肩回旋幅をテープメジャーにて0.5cm単位で測定した。肩回旋幅は,両肘を伸ばした状態で棒を握り,肘を曲げずに身体の前方から後方へと旋回することができた際の両母指内側の距離とした。
左右方向の加速度の最大値,滑らかさの指標および動揺性の指標と肩回旋幅の関係の検定にPearsonの相関係数を用いた。なお,危険率5%未満を有意とした。
【結果】
左右方向の加速度の最大値は6.58±1.89m/s2であった。パワースペクトル解析から得られた滑らかさの指標は0.91±0.05,RMSから得られた動揺性の指標は3.22±1.22であった。肩回旋幅は63.0±21.1cmであった。加速度の左右方向の最大値と肩回旋幅の相関係数は0.79であり,有意な相関関係が得られた(p<0.05)。滑らかさの指標と肩回旋幅の相関係数はr=-0.45であり,中等度の相関関係が認められたが有意ではなかった(p>0.05)。動揺性の指標と肩回旋幅の相関係数はr=0.65であり,有意な相関関係が得られた(p<0.05)。
【結論】
本研究は陸上での測定であったが,肩関節の柔軟性の低下が,胸郭回旋動作の滑らかさの低下や動揺性の増大につながることが確認でき,水中での動作をある程度反映するデータが得られたのではないかと考える。今後は,肩関節の柔軟性が低下した者へ介入することで加速度がどのように変化するかを検証し,トレーニング指導等に生かしていく。
競泳競技における自由形の上肢ストローク動作では,ローリングと呼ばれる胸郭回旋運動がおこる。ローリングが不十分な場合には,肩関節に過度な水平外転方向の力が加わり,肩関節障がいの発生リスクが増大する。
本研究では,この胸郭回旋運動を加速度計を用いて評価することを試みた。肩関節の柔軟性が獲得されている者は,ローリングが滑らかで,胸郭の左右方向の加速度の振幅が小さいと考えた。逆に,肩関節の柔軟性が乏しいと,ローリングの軸回旋と左右方向への偏位が大きくなり,結果として胸郭の左右方向の加速度の振幅が大きくなると考えた。
本研究の目的は,加速度をパワースペクトル解析とRoot Mean Square(RMS)で解析することで,肩関節の柔軟性と加速度の変動の関係を知ることである。
【方法】
対象は,障がい既往のない大学競泳選手8名とした(年齢21.1±1.9歳,身長175.5±4.6cm,体重65.9±6.0kg)。立位かつ体幹前傾位にて骨盤を固定し,陸上空間で模倣した10秒間の自由形ストローク動作を行わせた。その際の胸郭回旋加速度を三軸加速度計MVP-RF8(MicroStone社)にて計測した。加速度計は第9胸椎棘突起上に装着し,サンプリング周波数200Hzで記録した。解析区間は,左右方向の加速度の波形から無作為に選択した1024個(5.12秒)の連続データとした。左右方向の加速度の最大値を抽出し,加えて解析区間において,パワースペクトル解析(動作の滑らかさの指標)とRMS(動揺性の指標)を行った。柔軟性の指標として,肩回旋幅をテープメジャーにて0.5cm単位で測定した。肩回旋幅は,両肘を伸ばした状態で棒を握り,肘を曲げずに身体の前方から後方へと旋回することができた際の両母指内側の距離とした。
左右方向の加速度の最大値,滑らかさの指標および動揺性の指標と肩回旋幅の関係の検定にPearsonの相関係数を用いた。なお,危険率5%未満を有意とした。
【結果】
左右方向の加速度の最大値は6.58±1.89m/s2であった。パワースペクトル解析から得られた滑らかさの指標は0.91±0.05,RMSから得られた動揺性の指標は3.22±1.22であった。肩回旋幅は63.0±21.1cmであった。加速度の左右方向の最大値と肩回旋幅の相関係数は0.79であり,有意な相関関係が得られた(p<0.05)。滑らかさの指標と肩回旋幅の相関係数はr=-0.45であり,中等度の相関関係が認められたが有意ではなかった(p>0.05)。動揺性の指標と肩回旋幅の相関係数はr=0.65であり,有意な相関関係が得られた(p<0.05)。
【結論】
本研究は陸上での測定であったが,肩関節の柔軟性の低下が,胸郭回旋動作の滑らかさの低下や動揺性の増大につながることが確認でき,水中での動作をある程度反映するデータが得られたのではないかと考える。今後は,肩関節の柔軟性が低下した者へ介入することで加速度がどのように変化するかを検証し,トレーニング指導等に生かしていく。