[P-SP-05-1] 片脚着地動作における円滑さと下肢3関節の運動学的特徴について
―Jerk Indexを用いた検証―
Keywords:片脚着地動作, Jerk Index, 動作解析
【はじめに,目的】
我々は,第51回大会において片脚着地動作の円滑さと下肢3関節運動についてJerk Index(JI)を用い,安全かつ効率的な着地動作について言及し,片脚着地時に膝関節のみで衝撃緩衝するのではなく股関節の関与が重要であると報告した。しかし,JI高値群,JI低値群の動作特性について言及するには至らなかった。本研究は,片脚着地動作におけるJI低値群の運動学的特徴を明確にすることを目的とした。
【方法】
対象は,健常男性12名24肢とした。計測機器は,VICON MXシステム,床反力計,使用ソフトはVICON NEXUS1.8.5を用いた。マーカは,15体節35ヵ所に貼付した。運動課題は,30cm台から自由落下後2秒間静止する片脚着地動作とした。JIは,COG位置座標の鉛直成分を3回時間微分したJerkの2乗和を運動時間,運動距離で補正し算出した。対象者は算出したJI値をもとに,第1四分位(JI:0.74)以下をJI低値群(6名),それ以外をJI非低値群(18名)の2群に分類した。計測範囲は,片脚着地動作における初期接地(Initial contact:IC)から身体重心最下点(Center of Gravity lowest point:COG-LP)とし,計測範囲内でのJI,各計測点の下肢3関節角度,計測範囲中の下肢3関節角度変位量,鉛直床反力(Vertical Ground Reaction Force:VGRF)ピーク値とした。統計解析は,得られたデータについてKolmogorov-Smirnov検定にて,正規性を確認したうえで,JI低値群とJI非低値群間の差について,Student's t-test及びMann-Whitney U testを用いて検証した。有意水準は5%とした。
【結果】
ICにおける膝関節内反角度は,JI低値群:2.5±3.0度,JI非低値群:7.6±4.4度で有意差を認めた(p<0.05)。計測範囲内の膝関節屈曲角度変位量は,JI低値群中央値43.6度(38.3~45.7度),JI非低値群中央値48.6度(44.7~55.6度)で有意差を認めた(p<0.05)。その他,計測項目では両群間に有意差を認めなかった。
【結論】
着地動作時の衝撃緩衝は,主に矢状面における下肢3関節運動が重要と考える。非低値群は,IC時の膝関節内反角度が大きく,膝関節中心から床反力作用線までの距離が延長することが考えられ,IC時以降は前額面における負荷増大が考えられる。前額面における膝関節運動は,衝撃緩衝を行うだけの可動域を有していない。結果的に計測範囲内の膝関節屈曲角度を増大することで衝撃緩衝を行ったと考えられる。このことから,前額面における膝関節運動の過度な増大は,衝撃緩衝及び円滑な着地動作の妨げになる。そのため,IC時の下肢3関節角度にも着目する必要がある。本研究より,JIが低値を示す要因として着地後の下肢3関節運動だけでなく,IC時の下肢3関節角度が影響することが示唆された。このことから,矢状面だけでなく前額面での膝関節運動に着目し動作指導することで,結果的にJIが低値を示し円滑な着地動作に繋がると考えられる。
我々は,第51回大会において片脚着地動作の円滑さと下肢3関節運動についてJerk Index(JI)を用い,安全かつ効率的な着地動作について言及し,片脚着地時に膝関節のみで衝撃緩衝するのではなく股関節の関与が重要であると報告した。しかし,JI高値群,JI低値群の動作特性について言及するには至らなかった。本研究は,片脚着地動作におけるJI低値群の運動学的特徴を明確にすることを目的とした。
【方法】
対象は,健常男性12名24肢とした。計測機器は,VICON MXシステム,床反力計,使用ソフトはVICON NEXUS1.8.5を用いた。マーカは,15体節35ヵ所に貼付した。運動課題は,30cm台から自由落下後2秒間静止する片脚着地動作とした。JIは,COG位置座標の鉛直成分を3回時間微分したJerkの2乗和を運動時間,運動距離で補正し算出した。対象者は算出したJI値をもとに,第1四分位(JI:0.74)以下をJI低値群(6名),それ以外をJI非低値群(18名)の2群に分類した。計測範囲は,片脚着地動作における初期接地(Initial contact:IC)から身体重心最下点(Center of Gravity lowest point:COG-LP)とし,計測範囲内でのJI,各計測点の下肢3関節角度,計測範囲中の下肢3関節角度変位量,鉛直床反力(Vertical Ground Reaction Force:VGRF)ピーク値とした。統計解析は,得られたデータについてKolmogorov-Smirnov検定にて,正規性を確認したうえで,JI低値群とJI非低値群間の差について,Student's t-test及びMann-Whitney U testを用いて検証した。有意水準は5%とした。
【結果】
ICにおける膝関節内反角度は,JI低値群:2.5±3.0度,JI非低値群:7.6±4.4度で有意差を認めた(p<0.05)。計測範囲内の膝関節屈曲角度変位量は,JI低値群中央値43.6度(38.3~45.7度),JI非低値群中央値48.6度(44.7~55.6度)で有意差を認めた(p<0.05)。その他,計測項目では両群間に有意差を認めなかった。
【結論】
着地動作時の衝撃緩衝は,主に矢状面における下肢3関節運動が重要と考える。非低値群は,IC時の膝関節内反角度が大きく,膝関節中心から床反力作用線までの距離が延長することが考えられ,IC時以降は前額面における負荷増大が考えられる。前額面における膝関節運動は,衝撃緩衝を行うだけの可動域を有していない。結果的に計測範囲内の膝関節屈曲角度を増大することで衝撃緩衝を行ったと考えられる。このことから,前額面における膝関節運動の過度な増大は,衝撃緩衝及び円滑な着地動作の妨げになる。そのため,IC時の下肢3関節角度にも着目する必要がある。本研究より,JIが低値を示す要因として着地後の下肢3関節運動だけでなく,IC時の下肢3関節角度が影響することが示唆された。このことから,矢状面だけでなく前額面での膝関節運動に着目し動作指導することで,結果的にJIが低値を示し円滑な着地動作に繋がると考えられる。