[P-SP-09-1] 寒冷刺激が運動後の筋力・筋硬度の回復に及ぼす影響
Keywords:寒冷, 棘下筋, 遠心性収縮
【はじめに,目的】スポーツの現場では,試合後や練習後にアイシング(寒冷刺激)が用いられることが多い。先行研究により,寒冷刺激には運動後に生じる疼痛の軽減や炎症反応の抑制の効果があることが示されている。一方で,スポーツパフォーマンスに大きく影響する筋の柔軟性(筋硬度)や筋力に対して,寒冷刺激がどのような効果を与えるかは明らかとなっていない。そこで本研究の目的は,運動後の寒冷刺激が,筋硬度や筋力の経時的変化に及ぼす影響を明らかにすることである。
【方法】対象は,健常若年男性12名(23.2±1.0歳)とした。取込基準は,非利き側上肢の整形外科的疾患および上肢のトレーニング習慣がない者とした。対象者は,寒冷群(6名)と対照群(6名)に無作為に割り付けた。全対象者に対して,多用途筋機能評価運動装置(Biodex System 4,Biodex Medical Systems社製)を用いて,肩甲骨面挙上位45度で非利き側肩関節外旋筋の遠心性収縮25回×9setsの運動課題を与えた。その後,寒冷群に対して,氷水を入れた氷嚢を,棘下筋の筋腹を覆うように肩関節後面に適応し,15分間の寒冷刺激を与えた。対照群は15分間安静とした。運動課題前(pre),運動後,寒冷(安静)直後,寒冷(安静)10分後,2日後,7日後の計6回測定を行った。主要評価項目として,棘下筋の筋硬度・肩関節外旋最大トルク,副次評価項目として疼痛を計測した。ただし,最大トルクと疼痛は,運動前後と2日後,7日後の4回のみ測定した。筋硬度の指標として,超音波診断装置(Aixplorer,Supersonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能で測定される弾性率(高値であるほど硬い)を用いた。外旋最大トルクは,上記の多用途筋機能評価運動装置を用い,肩関節外転90°・内外旋中間位での等尺性収縮のトルクを測定した。疼痛の指標には,外旋最大トルク発揮時の収縮時痛(VAS)を用いた。統計解析は,時期と群の二要因において分割プロットデザインによる二元配置分散分析,事後検定に多重比較法(Bonferroni検定)を用いた。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】二元配置分散分析の結果,弾性率は群と時期の間に交互作用を認め,時期の主効果は認めなかった。多重比較法の結果,寒冷群は,対照群と比べ7日後のみ弾性率の変化量が有意に高値を示し,筋硬度は増加した。
一方,最大トルク・疼痛には交互作用がなく時期に主効果を認め,両群とも同様の傾向を示した。preと7日後に対して,運動後と2日後に最大トルクは有意に低下した。preと7日後に対して,2日後に疼痛は有意に高値を示した。
【結論】運動後に行う15分間の寒冷刺激は,7日後の筋硬度の回復を阻害した。また,筋力や疼痛には影響を及ぼさなかった。
【方法】対象は,健常若年男性12名(23.2±1.0歳)とした。取込基準は,非利き側上肢の整形外科的疾患および上肢のトレーニング習慣がない者とした。対象者は,寒冷群(6名)と対照群(6名)に無作為に割り付けた。全対象者に対して,多用途筋機能評価運動装置(Biodex System 4,Biodex Medical Systems社製)を用いて,肩甲骨面挙上位45度で非利き側肩関節外旋筋の遠心性収縮25回×9setsの運動課題を与えた。その後,寒冷群に対して,氷水を入れた氷嚢を,棘下筋の筋腹を覆うように肩関節後面に適応し,15分間の寒冷刺激を与えた。対照群は15分間安静とした。運動課題前(pre),運動後,寒冷(安静)直後,寒冷(安静)10分後,2日後,7日後の計6回測定を行った。主要評価項目として,棘下筋の筋硬度・肩関節外旋最大トルク,副次評価項目として疼痛を計測した。ただし,最大トルクと疼痛は,運動前後と2日後,7日後の4回のみ測定した。筋硬度の指標として,超音波診断装置(Aixplorer,Supersonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能で測定される弾性率(高値であるほど硬い)を用いた。外旋最大トルクは,上記の多用途筋機能評価運動装置を用い,肩関節外転90°・内外旋中間位での等尺性収縮のトルクを測定した。疼痛の指標には,外旋最大トルク発揮時の収縮時痛(VAS)を用いた。統計解析は,時期と群の二要因において分割プロットデザインによる二元配置分散分析,事後検定に多重比較法(Bonferroni検定)を用いた。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】二元配置分散分析の結果,弾性率は群と時期の間に交互作用を認め,時期の主効果は認めなかった。多重比較法の結果,寒冷群は,対照群と比べ7日後のみ弾性率の変化量が有意に高値を示し,筋硬度は増加した。
一方,最大トルク・疼痛には交互作用がなく時期に主効果を認め,両群とも同様の傾向を示した。preと7日後に対して,運動後と2日後に最大トルクは有意に低下した。preと7日後に対して,2日後に疼痛は有意に高値を示した。
【結論】運動後に行う15分間の寒冷刺激は,7日後の筋硬度の回復を阻害した。また,筋力や疼痛には影響を及ぼさなかった。