[P-SP-13-2] 大学女子硬式野球選手のスポーツ傷害と健康の実態調査
Keywords:大学女子野球, スポーツ傷害, 健康調査
【はじめに,目的】
近年,女子硬式野球の競技人口が増加しており,今後さらなる増加が予想される。しかしながら,男子硬式野球に比べると規模は小さく,女子硬式野球の傷害を含めた先行研究は少ない。女性を対象とした調査では,女性アスリートの三主徴といわれる,摂食障害,無月経,骨粗鬆症や,これらと関連する貧血など特有の問題を考慮する必要があると考える。本研究の目的は,大学女子硬式野球でのスポーツ傷害と健康に関するアンケート調査を行い,傷害予防の一助とすることである。
【方法】
女子硬式野球部がある全7大学のうち,協力の得られた5大学142名を対象に,インターネットによるアンケート調査を実施した。調査項目はポジション,スポーツ傷害の有無,スポーツ傷害の部位,診断名,肩および肘関節の疼痛の有無と疼痛継続期間などとした。スポーツ傷害は練習内容を制限した場合,1日以上練習を休んだ場合,医療機関を受診した場合と定義した。健康状況に関して,食事の際に栄養を考慮しているか,貧血症状の有無,月経不順の有無などについて調査した。
統計学的検定は,貧血症状のあり群,なし群の群間比較を行った。月経不順の比較にMann-Whitney検定,傷害の有無,栄養を考慮しているかについてカイ2乗検定を用いた。危険率5%未満を有意とした。
【結果】
142名中47名から回答が得られ,有効回答率は33.1%であった。47名中傷害のあった者は24名47件(外傷29件,障がい18件)で,受傷率は51.1%だった。受傷部位は大腿11件,肩関節7件,足関節5件の順で多く,大腿は全件肉離れだった。全体としては,上肢に比べ下肢の傷害が多く,下肢傷害を呈した選手の85.2%が内野手か外野手だった。野球に関連した肩および肘関節の疼痛を経験した選手は47名中32名(68.1%)であり,現在も疼痛がある選手は22名(46.8%)だった。
貧血症状がある選手は14名(29.8%)で,月経周期は時々不順が20名(42.6%),不順が6名(12.8%)だった。貧血症状の有無と傷害発生の有無,月経周期に有意な差はみられなかった。貧血症状がある選手のうち,栄養を考慮して食事している選手は4名,考慮していない選手が10名で,栄養を考慮していない人が貧血症状になりやすい傾向を示した(p=0.06)。
【結論】
大学女子硬式野球選手の51.1%が何らかの傷害を発症しており,障がいよりも外傷の発生率が高かった。特に内野手と外野手の下肢傷害が多くみられた。女子硬式野球選手の68.1%が肩関節か肘関節に疼痛を経験していた。現在も女子選手の約半数が疼痛を感じながらプレーをしていることから,疼痛が慢性化している実態が示された。健康状態では,29.8%の選手で貧血症状があった。貧血にはさまざまな要因があるが,本研究では貧血症状がある選手は栄養への配慮が不足する傾向が示された。
近年,女子硬式野球の競技人口が増加しており,今後さらなる増加が予想される。しかしながら,男子硬式野球に比べると規模は小さく,女子硬式野球の傷害を含めた先行研究は少ない。女性を対象とした調査では,女性アスリートの三主徴といわれる,摂食障害,無月経,骨粗鬆症や,これらと関連する貧血など特有の問題を考慮する必要があると考える。本研究の目的は,大学女子硬式野球でのスポーツ傷害と健康に関するアンケート調査を行い,傷害予防の一助とすることである。
【方法】
女子硬式野球部がある全7大学のうち,協力の得られた5大学142名を対象に,インターネットによるアンケート調査を実施した。調査項目はポジション,スポーツ傷害の有無,スポーツ傷害の部位,診断名,肩および肘関節の疼痛の有無と疼痛継続期間などとした。スポーツ傷害は練習内容を制限した場合,1日以上練習を休んだ場合,医療機関を受診した場合と定義した。健康状況に関して,食事の際に栄養を考慮しているか,貧血症状の有無,月経不順の有無などについて調査した。
統計学的検定は,貧血症状のあり群,なし群の群間比較を行った。月経不順の比較にMann-Whitney検定,傷害の有無,栄養を考慮しているかについてカイ2乗検定を用いた。危険率5%未満を有意とした。
【結果】
142名中47名から回答が得られ,有効回答率は33.1%であった。47名中傷害のあった者は24名47件(外傷29件,障がい18件)で,受傷率は51.1%だった。受傷部位は大腿11件,肩関節7件,足関節5件の順で多く,大腿は全件肉離れだった。全体としては,上肢に比べ下肢の傷害が多く,下肢傷害を呈した選手の85.2%が内野手か外野手だった。野球に関連した肩および肘関節の疼痛を経験した選手は47名中32名(68.1%)であり,現在も疼痛がある選手は22名(46.8%)だった。
貧血症状がある選手は14名(29.8%)で,月経周期は時々不順が20名(42.6%),不順が6名(12.8%)だった。貧血症状の有無と傷害発生の有無,月経周期に有意な差はみられなかった。貧血症状がある選手のうち,栄養を考慮して食事している選手は4名,考慮していない選手が10名で,栄養を考慮していない人が貧血症状になりやすい傾向を示した(p=0.06)。
【結論】
大学女子硬式野球選手の51.1%が何らかの傷害を発症しており,障がいよりも外傷の発生率が高かった。特に内野手と外野手の下肢傷害が多くみられた。女子硬式野球選手の68.1%が肩関節か肘関節に疼痛を経験していた。現在も女子選手の約半数が疼痛を感じながらプレーをしていることから,疼痛が慢性化している実態が示された。健康状態では,29.8%の選手で貧血症状があった。貧血にはさまざまな要因があるが,本研究では貧血症状がある選手は栄養への配慮が不足する傾向が示された。