[P-TK-01-4] 通所リハビリテーションを利用する維持期の脳卒中片麻痺患者に対する移動手段・理学療法介入頻度とQOLの関連について
Keywords:通所リハビリテーション, 脳卒中片麻痺, QOL
【はじめに,目的】
quality of life(QOL)とは,身体機能,心の健康,社会生活機能の構成要素からなると考えられている。わが国では脳卒中患者が極めて多いが,その後遺症を持った患者のQOLを測るツールは少なかった。脳卒中特異的QOLスケール(Stroke-Specific QOL Scale)はWilliamsらにより開発されたHRQOLの疾患特異的尺度である。問川らは,軽度~中等度の脳梗塞患者に応用した場合,包括的尺度よりも鋭敏にHRQOLの変化を捉えることができる,と報告している。また,脳卒中後のQOLについてStroke Impairment Assessment Set(SIAS)との関係について相関が認められると報告している。しかし,維持期の脳卒中片麻痺患者の歩行手段・理学療法介入頻度とQOLとの関係についての報告は極めて少ない。
本研究では移動手段の相違および理学療法の介入頻度とQOLとの関係を明らかにし,理学療法の介入についての一助とすることを目的とした。
【方法】
対象はA県内の通所リハビリテーションを利用する脳卒中片麻痺患者33名とした。移動手段・理学療法介入頻度およびQOLに関してアンケート用紙を用いて,面接方式による聞き取り調査を行った。内容は移動手段を5段階評価(1=歩行~5=車椅子)で,介入頻度は1ヵ月の平均通所リハビリテーション利用回数とした。QOLは12項目からなるSS-QOLを採用し,5段階評価(1=不可能~5=問題なし)とした。これらの結果を数値化した。統計処理は移動手段とQOL(身体面,精神面,全体),介入頻度とQOL(身体面,精神面,全体)との関連についてスピアマンの順位相関分析を用いて検討した。さらに,説明変数を移動手段・介入頻度,目的変数をQOLとした重回帰分析(ステップワイズ法)にて両者の因果関係を検討した。統計ソフトはSPSSstatistics23を使用し,有意確率は5%未満とした。
【結果】
アンケート回答者は33名(男性17名,女性16名)で,年齢76.1±9.3歳であった。移動手段状況は,歩行が最も多く,歩行と車椅子の併用が同頻度が最も少なかった。1ヶ月介入頻度は,9.9±3.7回であった。QOLは身体面3.69±0.53,精神面3.03±0.86,全体3.36±0.61であった。
移動手段と身体面のQOLとの間(ρ=0.67)に有意な正の相関がみられたが,その他はみられなかった(p<0.05)。また身体面のQOLでは移動手段(β=0.23),全体のQOLでは移動手段(β=0.14)のみ標準回帰係数に有意差がみられた。
【結論】
今回の結果より,移動手段で歩行の頻度が高くなるほどQOLが高くなることが明らかとなった。特に,移動手段が歩行に近づくほど身体面のQOLが高くなりやすいと示唆された。QOLを高めるためには,維持期の脳卒中片麻痺患者に対しても移動手段を上げるような理学療法の介入が必要であると考えられる。しかし,移動手段と精神面のQOLに相関はみられなかったため,今後,精神面のQOL向上に影響する因子を検討していく必要がある。
quality of life(QOL)とは,身体機能,心の健康,社会生活機能の構成要素からなると考えられている。わが国では脳卒中患者が極めて多いが,その後遺症を持った患者のQOLを測るツールは少なかった。脳卒中特異的QOLスケール(Stroke-Specific QOL Scale)はWilliamsらにより開発されたHRQOLの疾患特異的尺度である。問川らは,軽度~中等度の脳梗塞患者に応用した場合,包括的尺度よりも鋭敏にHRQOLの変化を捉えることができる,と報告している。また,脳卒中後のQOLについてStroke Impairment Assessment Set(SIAS)との関係について相関が認められると報告している。しかし,維持期の脳卒中片麻痺患者の歩行手段・理学療法介入頻度とQOLとの関係についての報告は極めて少ない。
本研究では移動手段の相違および理学療法の介入頻度とQOLとの関係を明らかにし,理学療法の介入についての一助とすることを目的とした。
【方法】
対象はA県内の通所リハビリテーションを利用する脳卒中片麻痺患者33名とした。移動手段・理学療法介入頻度およびQOLに関してアンケート用紙を用いて,面接方式による聞き取り調査を行った。内容は移動手段を5段階評価(1=歩行~5=車椅子)で,介入頻度は1ヵ月の平均通所リハビリテーション利用回数とした。QOLは12項目からなるSS-QOLを採用し,5段階評価(1=不可能~5=問題なし)とした。これらの結果を数値化した。統計処理は移動手段とQOL(身体面,精神面,全体),介入頻度とQOL(身体面,精神面,全体)との関連についてスピアマンの順位相関分析を用いて検討した。さらに,説明変数を移動手段・介入頻度,目的変数をQOLとした重回帰分析(ステップワイズ法)にて両者の因果関係を検討した。統計ソフトはSPSSstatistics23を使用し,有意確率は5%未満とした。
【結果】
アンケート回答者は33名(男性17名,女性16名)で,年齢76.1±9.3歳であった。移動手段状況は,歩行が最も多く,歩行と車椅子の併用が同頻度が最も少なかった。1ヶ月介入頻度は,9.9±3.7回であった。QOLは身体面3.69±0.53,精神面3.03±0.86,全体3.36±0.61であった。
移動手段と身体面のQOLとの間(ρ=0.67)に有意な正の相関がみられたが,その他はみられなかった(p<0.05)。また身体面のQOLでは移動手段(β=0.23),全体のQOLでは移動手段(β=0.14)のみ標準回帰係数に有意差がみられた。
【結論】
今回の結果より,移動手段で歩行の頻度が高くなるほどQOLが高くなることが明らかとなった。特に,移動手段が歩行に近づくほど身体面のQOLが高くなりやすいと示唆された。QOLを高めるためには,維持期の脳卒中片麻痺患者に対しても移動手段を上げるような理学療法の介入が必要であると考えられる。しかし,移動手段と精神面のQOLに相関はみられなかったため,今後,精神面のQOL向上に影響する因子を検討していく必要がある。