[P-TK-02-3] 在宅介護をしている介護者の介護負担感と生活活動の関連性について
Keywords:訪問リハビリテーション, 在宅介護, 生活活動
【はじめに,目的】
近年,要介護者の増加により家族の介護負担が問題となっている。この負担について鷲尾らは介護者の社会的要因や心身状態に関連と報告している。山崎らは訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)の介入で介護負担が改善した報告をしている。在宅生活の継続には介護者の心身の健康が必要であるが介護負担と関連性が明らかでない。そのため介護者の身体・精神的負担における生活活動の関係を明らかにし,訪問リハの関わり方の一知見にすることを目的とした。
【方法】
平成28年8月から10月における当院訪問リハ利用の介護者を対象とした。評価として利用者と介護者の基本情報,介護期間,IADL(以下,老研式活動能力指標),他者との関わり(以下,LSNS-6)および生活範囲(以下,LSA)を介護負担感(以下,J-ZBI)の強弱で分類し比較した。統計的処理は,平均値比較はt検定,構成比比較にはχ2検定を用い,その有意水準は危険率5%以下とした。
【結果】
同意が得られた介護者49名を対象者とし,利用者特性において男性で63.3%,脳血管疾患で59.2%および要介護度3が26.5%で最も多かった。また,介護者特性として介護期間は36.2±33.8ヶ月で女性で71.4%と妻が51.0%で最も多かった。そして,J-ZBIは29.5±16.7,LSNS-6は13.7±5.4,LSAは83.5±22.8および老研式活動指標は11.6±1.9であった。このJ-ZBIの平均以上と以下で比較しLSAのみに平均以下で有意な減少を認めた(p<0.05)。
【結論】
荒井らは介護困難者のJ-ZBIは約30点と報告し,本調査も同様の結果から何らかの介護負担を抱えていると推測される。この負担において先行研究では介護期間と関連を認めず,要介護度に影響せずおよび介護者は身体より精神の方が介護負担増大と報告している。よって本調査も同様な傾向のため精神的負担の方が介護困難の要因となることが示唆された。この精神的負担においてLSNS-6では12点未満が社会的孤立を示すが本調査では認めなかった。また,老研式活動指標は同年代より高いことからIADLも保たれていた。しかし,LSAにおいて上岡らは介護負担感と有意に関連と報告し,本調査でも介護負担における生活範囲で有意差を認めた。現在,訪問リハでは自助・共助への促しが求められており,J-ZBIで有意に改善したのは社会参加への促し効果であったと推測される。この要因として訪問リハ利用中の介護者の特性として「人を家に上げる」という習慣から社交性が高まったと考える。この社交性は家で人を迎えるよりも外出し社会と関わることの方がより精神的負担の軽減が高まると予測される。以上のことから訪問リハによる利用者のADL改善,自宅の環境調整および介護者へ介護指導などの介入は,介護者の社会参加を促すことで精神的健康の維持に貢献し,利用者と介護者ともに無理のない在宅生活の大きな役割を担っているのではないかと考える。
近年,要介護者の増加により家族の介護負担が問題となっている。この負担について鷲尾らは介護者の社会的要因や心身状態に関連と報告している。山崎らは訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)の介入で介護負担が改善した報告をしている。在宅生活の継続には介護者の心身の健康が必要であるが介護負担と関連性が明らかでない。そのため介護者の身体・精神的負担における生活活動の関係を明らかにし,訪問リハの関わり方の一知見にすることを目的とした。
【方法】
平成28年8月から10月における当院訪問リハ利用の介護者を対象とした。評価として利用者と介護者の基本情報,介護期間,IADL(以下,老研式活動能力指標),他者との関わり(以下,LSNS-6)および生活範囲(以下,LSA)を介護負担感(以下,J-ZBI)の強弱で分類し比較した。統計的処理は,平均値比較はt検定,構成比比較にはχ2検定を用い,その有意水準は危険率5%以下とした。
【結果】
同意が得られた介護者49名を対象者とし,利用者特性において男性で63.3%,脳血管疾患で59.2%および要介護度3が26.5%で最も多かった。また,介護者特性として介護期間は36.2±33.8ヶ月で女性で71.4%と妻が51.0%で最も多かった。そして,J-ZBIは29.5±16.7,LSNS-6は13.7±5.4,LSAは83.5±22.8および老研式活動指標は11.6±1.9であった。このJ-ZBIの平均以上と以下で比較しLSAのみに平均以下で有意な減少を認めた(p<0.05)。
【結論】
荒井らは介護困難者のJ-ZBIは約30点と報告し,本調査も同様の結果から何らかの介護負担を抱えていると推測される。この負担において先行研究では介護期間と関連を認めず,要介護度に影響せずおよび介護者は身体より精神の方が介護負担増大と報告している。よって本調査も同様な傾向のため精神的負担の方が介護困難の要因となることが示唆された。この精神的負担においてLSNS-6では12点未満が社会的孤立を示すが本調査では認めなかった。また,老研式活動指標は同年代より高いことからIADLも保たれていた。しかし,LSAにおいて上岡らは介護負担感と有意に関連と報告し,本調査でも介護負担における生活範囲で有意差を認めた。現在,訪問リハでは自助・共助への促しが求められており,J-ZBIで有意に改善したのは社会参加への促し効果であったと推測される。この要因として訪問リハ利用中の介護者の特性として「人を家に上げる」という習慣から社交性が高まったと考える。この社交性は家で人を迎えるよりも外出し社会と関わることの方がより精神的負担の軽減が高まると予測される。以上のことから訪問リハによる利用者のADL改善,自宅の環境調整および介護者へ介護指導などの介入は,介護者の社会参加を促すことで精神的健康の維持に貢献し,利用者と介護者ともに無理のない在宅生活の大きな役割を担っているのではないかと考える。