The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本地域理学療法学会 » ポスター発表

[P-TK-03] ポスター(地域)P03

Fri. May 12, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本地域理学療法学会

[P-TK-03-5] 慢性期片麻痺に対する訪問リハビリテーションの効果
~シングルケーススタディによる検証~

熊谷 昇悟, 金野 円佳, 浅野 友佳子 (文屋内科消化器科医院訪問リハビリテーションらいらっく)

Keywords:訪問リハビリテーション, 慢性期, 目標志向的アプローチ

【はじめに,目的】

平成27年度の介護報酬改定により,居宅サービスにおいては生活機能の維持向上を目指すことが重要とされている。我々は第67回北海道理学療法士学術大会において,慢性期片麻痺利用者に対し振動刺激を用いることによりデイサービスと週2回(理学療法士:以下PT1回,作業療法士:以下OT1回)の訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)の併用により筋緊張の軽減が認められ,歩容の変化に至ったことを報告した。今回,同一利用者に対し目標志向的アプローチを週3回(PT2回,OT1回)の訪問リハのみで行った結果,慢性期片麻痺利用者の生活機能の向上が認められたため報告する。

【方法】

対象は右被殻再出血により,X年に自宅退院。その後X+7年に当院訪問リハを利用した60歳代,左片麻痺女性。主目標は「転倒せず買い物に行き調理をしっかりしていきたい」であった。初期評価時,Brunnstrom stage上肢5,手指4,下肢4。歩行はT-caneを使用し3動作揃え型歩行(0.10m/s)。連続歩行距離は100m。歩行に対しての満足度はNumeric Rating Scale(以下NRS)0。Barthel index(以下BI)は95,Frenchay Activities Index(以下FAI)は30,Life-space Assessment(以下LSA)は29であった。研究デザインはのシングルケースデザインを用い,ベースライン期をデイサービスと訪問リハ利用時(A期:47週)とし,介入期を訪問リハのみ利用時(B期:21週)とした。なお,A期ではデイサービスと訪問リハで身体機能に対するアプローチを中心に行い,B期では主目標に対して生活行為向上マネジメント(以下MTDLP)を用いて主目標を細分化しアプローチを行った。それぞれの最終週に評価項目として身体機能面では歩行速度,歩行に対する満足度ではNRSを用いた。生活機能ではBI,FAI,老研式活動能力指標,LSAを用いて評価を行った。

【結果】

ベースライン期,介入期の順で示す。歩行速度は0.16m/s,0.22m/s。連続歩行距離は400m,400m。NRSは8,9。BIは100,100。FAIは37,39。老研式活動能力指標は12,13。LSAは42,48であった。主目標は「新幹線に乗って東京に行きたい」に変化した。

【結論】

今回,目標志向的アプローチを行うことで週3回の訪問リハのみで生活機能および満足度の向上が認められた。A期ではデイサービスへの参加や家事,畑仕事など「できる活動」が主体の生活であった。今回,目標志向的アプローチをMTDLPを用いて行うことで利用者・PT・OTが各生活機能レベルや活動・参加状況を把握することが可能となり,「できる活動」から「やりたい活動」へと変化し,近所の人と話すために毎日区内(400m)を歩くなど生活の場での活動頻度の増加,参加の拡大が認められたことで生活機能の向上が認められた。かつ,生活機能の向上が歩行速度の向上やMASの改善など身体機能面や歩行に対する満足度等の精神機能面にも般化していくことで限られた回数の訪問リハにおいても生活機能の向上が可能である可能性が示唆された。