[P-TK-04-3] 地域在住高齢者を対象とした生活範囲と運動機能の違いとその関連性について
Keywords:生活範囲, 運動機能, 地域在住高齢者
【はじめに,目的】
超高齢化社会において要介護状態を予防することは必修であり,活動的な状態にある高齢者の生活機能,精神・身体・社会の各相における活動性を維持・向上させることが重要である。このような活動性の評価として,運動機能及び動作能力指標と,心理社会的評価項目から成るElderly Status Assessment Set(E-SAS)がある。本研究では,地域在住高齢者を対象とし,E-SASを用いて運動機能や地域における生活環境の変化とその関連性を調査することを目的とする。
【方法】
対象は,地域在住高齢者で4か月間理学療法士が治療介入した外来患者22名(81.6±1.4歳,男性2名,女性20名),通所利用者42名(83.8±1.2歳,男性14名,女性28名)入所者14名(85.7±1.7歳,男性6名,女性8名)とした。運動機能や地域の生活環境に関する評価はE-SASを用い,生活のひろがり(LSA),ころばない自信,入浴動作,TUG,休まず歩ける距離,人とのつながりの6つの評価項目を治療介入前後で実施した。統計解析方法は,1)各測定項目における各群間の比較にはBonferoni法による多重比較検定を用い,2)各対象群のそれぞれの経過を比較検定するためにpaired t testを用いて解析した。3)E-SASの各項目の関連性についてはSpearmanの相関係数を求め,有意水準は5%未満とした。
【結果】
1)外来患者,通所利用者および入所者間の比較では,E-SASの初回評価では,TUG以外の5項目において有意差がみられ,入所者が有意に低値であった(p<0.01,p<0.001)が,TUGでは有意差が認められなかった。2)各対象者の治療介入前後の比較では,外来患者では各項目で有意差は認められなかったが,通所利用者ではころばない自信(p<0.05)に,入所者では人とのつながり(p<0.01)において有意差を認めた。3)LSAと各5項目の関連性については,ころばない自信(外来r=0.74,通所r=0.52,入所r=0.82)入浴動作(外来r=0.62,入所r=0.76),TUG(外来r=-0.65),休まず歩ける距離(外来r=0.62),人とのつながり(通所r=0.48,入所r=0.65)で相関関係がみられた。
【結論】
介護予防においては,身体機能の向上を図ることで日常生活での活動性が維持されると認識されている。しかし,今回の結果から,地域在住高齢者において運動機能能力が生活機能や生活環境に大きな影響を及ぼしているのではないことが判明した。高齢者の健康増進と在宅生活を維持していくためには,運動機能面のアプローチだけでなく,高齢者が生活している環境や活動範囲,社会参加などのさまざまな要因を考慮しながら介護予防や健康増進に対する取り組みを行う必要性が示唆された。
超高齢化社会において要介護状態を予防することは必修であり,活動的な状態にある高齢者の生活機能,精神・身体・社会の各相における活動性を維持・向上させることが重要である。このような活動性の評価として,運動機能及び動作能力指標と,心理社会的評価項目から成るElderly Status Assessment Set(E-SAS)がある。本研究では,地域在住高齢者を対象とし,E-SASを用いて運動機能や地域における生活環境の変化とその関連性を調査することを目的とする。
【方法】
対象は,地域在住高齢者で4か月間理学療法士が治療介入した外来患者22名(81.6±1.4歳,男性2名,女性20名),通所利用者42名(83.8±1.2歳,男性14名,女性28名)入所者14名(85.7±1.7歳,男性6名,女性8名)とした。運動機能や地域の生活環境に関する評価はE-SASを用い,生活のひろがり(LSA),ころばない自信,入浴動作,TUG,休まず歩ける距離,人とのつながりの6つの評価項目を治療介入前後で実施した。統計解析方法は,1)各測定項目における各群間の比較にはBonferoni法による多重比較検定を用い,2)各対象群のそれぞれの経過を比較検定するためにpaired t testを用いて解析した。3)E-SASの各項目の関連性についてはSpearmanの相関係数を求め,有意水準は5%未満とした。
【結果】
1)外来患者,通所利用者および入所者間の比較では,E-SASの初回評価では,TUG以外の5項目において有意差がみられ,入所者が有意に低値であった(p<0.01,p<0.001)が,TUGでは有意差が認められなかった。2)各対象者の治療介入前後の比較では,外来患者では各項目で有意差は認められなかったが,通所利用者ではころばない自信(p<0.05)に,入所者では人とのつながり(p<0.01)において有意差を認めた。3)LSAと各5項目の関連性については,ころばない自信(外来r=0.74,通所r=0.52,入所r=0.82)入浴動作(外来r=0.62,入所r=0.76),TUG(外来r=-0.65),休まず歩ける距離(外来r=0.62),人とのつながり(通所r=0.48,入所r=0.65)で相関関係がみられた。
【結論】
介護予防においては,身体機能の向上を図ることで日常生活での活動性が維持されると認識されている。しかし,今回の結果から,地域在住高齢者において運動機能能力が生活機能や生活環境に大きな影響を及ぼしているのではないことが判明した。高齢者の健康増進と在宅生活を維持していくためには,運動機能面のアプローチだけでなく,高齢者が生活している環境や活動範囲,社会参加などのさまざまな要因を考慮しながら介護予防や健康増進に対する取り組みを行う必要性が示唆された。