第52回日本理学療法学術大会

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日本地域理学療法学会 » ポスター発表

[P-TK-05] ポスター(地域)P05

2017年5月12日(金) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本地域理学療法学会

[P-TK-05-1] 靴下多重着用を好む対象者への生活指導の検討

池田 亜利紗1, 土岐 洋平1, 垣内 健佑1, 工藤 友治1, 大場 靖子1, 太田 夢未1, 早川 翔一1, 山口 和希1, 明比 健太1, 中野 遥貴1, 丹後 春菜1, 庄司 理沙子1, 細谷 志帆2, 佐藤 洋一郎2, 春名 弘一2 (1.IMS(イムス)グループイムス札幌内科リハビリテーション病院, 2.北海道科学大学保健医療学部理学療法学科)

キーワード:靴下多重着用, 生活指導, Timed Up and Goテスト

【はじめに,目的】

積雪寒冷地に住む高齢者には,習慣的に靴下を重ねて履くこと(以下,多重着用)を好む方が一定数存在する。転倒は歩き始めや方向転換時に多いと言われている一方で,靴下多重着用条件が,歩き始めや方向転換時にどのような運動制御の変化をもたらすかについては知見がない。本研究では,多重着用条件が,歩き始め,方向転換などの急激に加速度が変化する場面における運動制御の変化を検討し,生活指導の一助を得ることを目的とした。




【方法】

対象は健常者35名(平均年齢25.4±2.8歳)とし,Timed Up and Goテスト(以下,TUG)を裸足,靴下,多重着用の3条件で行い,ランダムに各5回試行した。床面の素材はフローリングとした。区間の割付けは,往路の直線を1m毎にA~C(Aは立ち上がり含む),方向転換をD,復路の直線を1m毎にE~G(Gは着座含む)の7区間とした。パラメータは,各区間での時間および歩数とし,算出には側面から撮影したデジタルビデオカメラを使用した。統計分析はSPSSver.20を用いて繰り返しのある一元配置分散分析を適用し,有意水準は5%未満とした。また,試行回数による,滑る区間および滑る人数の割合を調査する目的で,1から5回の試行において,それぞれの滑った人数を区間ごとにカウントした。滑った区間の特定には,デジタルビデオカメラの動画を用い,判定条件は2名の理学療法士の両名が同一判断をすることとした。




【結果】

統計学的差異を認めた項目を下記に示す。裸足,靴下,多重着用の順にTUG総歩数:11.7±1.9歩,12.3±2.0歩,12.8±1.9歩。D区間歩数:2.5±0.7歩,2.8±0.7歩,3.2±0.8歩。試行回数による,滑る区間および滑る人数の割合は,裸足条件D区間は全試行で0%。靴下条件D区間で1回目:9%,2回目:6%,3回目:6%,4回目:6%,5回目:0%。多重着用条件D区間では,1回目:37%,2回目:31%,3回目:34%,4回目:31%,5回目:34%であった。




【結論】

本研究で設定した区間の意味づけは,歩き始めをA区間,方向転換をD区間,減速をG区間としている。靴下と多重着用条件の比較では,多重着用で方向転換時に歩幅を短くするという運動制御の変化を示した。一方で,試行回数による,滑る区間および滑る人数の割合は,多重着用条件の方向転換時において1から5回とも30%以上であった。本研究の結果から,多重着用条件では方向転換時に歩幅を短くするという運動制御変化が出現するが,健常者のように歩行速度の速い対象者では滑ってしまう可能性を示唆した。靴下多重着用を好む対象者に対する生活指導としては,急いで歩いた際の特に方向転換時に歩幅を短くするという運動制御を促し,かつ,滑らないかを確認した上で,滑る場合には環境因子も含めて介入する必要があると考える。